1998年7月11日生まれ、東京都出身。ダンス&ボーカルグループE-girlsのパフォーマーとして活動しながら、2012年放送のドラマ「私立バカレア高校」で女優デビュー。その後も『仰げば尊し』(16年)、『チア☆ダン』(18年)、『東京ラブストーリー』(20年)などのドラマ、『ソロモンの偽証』(15年)、『ガールズ・ステップ』(15年)、『四月は君の嘘』(16年)、『心が叫びたがってるんだ。』(17年)の映画などコンスタントに映像作品に出演しキャリアを積んでいる。
クラウドファンディングで公開が決定した、父と娘の温かなドラマ『スプリング、ハズ、カム』。人気落語家の柳家喬太郎がシングルファーザー役で映画初主演を飾り、大学入学のために広島から上京し、春から一人暮らしを始める娘・璃子をE-girlsのメンバーで、女優としての活躍も目覚ましい石井杏奈が好演している。親子の物語を演じた石井に、映画についてはもちろん、10代前半で芸能界デビューしたころの家族の反応、彼女自身の一人暮らしの部屋についても聞いた。
石井:オファーをいただいて、台本を読んだとき、すごくほのぼのとした気持ちになりましたし、家族愛にウルウルきたので、映像化されたらどうなるだろうと楽しみでいっぱいでした。私が演じた璃子にはすごく共感できる部分がありました。でもちょっといい子過ぎるなとも思いましたね。ただ璃子の過去を振り返ると、お母さんが亡くなっていて、自分がお母さんのようにお父さんを支えなきゃと思っているんだなと考えると、璃子のようになるのも仕方ないのかなって。だからいい子だという点も納得しました。でも私としては、まずは周りのことが第一な璃子を、自分のことをもっと考えて欲しいなと思いました。
石井:撮影が、私自身が一人暮らしを始めた1年後くらいだったんです。ひとりになったとき、家族のことが気になるのは同じだなって。でも自分のやりたいこともあるし、と葛藤する璃子の気持ちがよく分かりました。一人暮らしを始める前は、友達といるほうが楽しいし、早く家を出たいなと思っていましたが、いざ離れてみると、一気に不安とか寂しさが押し寄せてきて、一人暮らしってやっぱり寂しいんだなって気づきましたね。
石井:そうですね。『ソロモンの偽証』のときも、半年間くらいオーディションがありましたが、その時は学園もので、みんなの力が合わさってすごく大きな力になる感じでした。今回はお父さんとふたりだけで大きな力にしなくてはいけないので難しい部分もありましたね。でも、リハーサル期間を通して距離が縮まっていく感じがしました。
石井:初めまして、で緊張しましたが、すごく安心感のある方で、すぐに打ち解けました。私は人見知りなのでどう話していいか分からなかったりもしたんですけど、隣にいるけど話さなくてもいいような、お父さんのようなところがありました。
石井:はい。緊張をほぐすために、キャッチボールをしながらお互いのいいところも悪いところも言い合ったりしました。あとジェンガをしたり。それからエチュードという、設定だけ決めて即興芝居をしたりもしました。それをやるとすごく役に入り込めるんです。お母さんがいないという設定はそのままで、璃子がちょっと不良っぽい性格で、お父さんは再婚しようと思っているという設定でエチュードをしたことがあったんです。そのとき、頭に血が上って、「親子の縁を切る!」って言っちゃったんです。そしたら喬太郎さんがすごく怒って。自分は言ってはいけないことを口にしてしまったんだって涙がぶわって出てきて。そのとき家族なんだと感じました。
石井:難しかったですね。でも方言指導の方がセリフを言ってくださったテープを聞きながら覚えました。それにつねに現場にもいらしてくださって、随時直してくださったので、だんだん慣れていきました。
石井:私は東京出身ですが、祖師ヶ谷大蔵をちゃんと歩いたことがなかったので、今回、喬太郎さんとお散歩とかをしながら、こういう町なんだと初めて知ることができました。璃子が入る成城学園にも見学に行きました。この町で璃子の新しい生活が始まるんだと思うとすごくワクワクしました。ふたりで商店街を歩いているシーンをよく覚えています。そのとき、完全にアドリブでしゃべっていたのですが、すごく温かな気持ちになれたのを覚えています。
石井:はい。あります。あ、来た!って(笑)。でもそれはまだ自己満足だと思います。監督のおっしゃることに、期待以上に応えられるようになれればと思います。でも来た!と思えたときはやっぱり達成感でいっぱいになりますね。
石井:両親は、きっといろいろ思ったと思うんですけど、私にはそうした気持ちを見せてきませんでした。学業に専念したほうがいいとか、やめたほうがいいとか、芸能界に入る自分に対して、反する意見は、もしあったとしても言わなかったし、そぶりも見せませんでした。杏奈がやりたいようにやったらいいし、もし別の道に進みたくなったら、それも応援する。家族は味方だからねって言ってくれました。だから自分も迷うことなく進めたし、家族のためにも頑張ろうと思えましたね。
石井:自分の芯ができたのかなと思います。今までは親に言われたり、事務所の人に言われたらやるみたいな感じでしたが、今はお仕事でもいい意味で選択肢を与えていただいて、そこから自分でやりたいことを答えられるようになってきました。以前は、どちらでもやりたいですと言っていたのが、変わってきたかなって。
石井:夢はたくさんあるんですけど、今は女優としてのお仕事を優先するべきとか、E-girlsのお仕事を優先するべきなのかとか、その都度、事務所と相談して決められる環境にあるので、すごく有難いと思っています。これからも両立しつつ、相乗効果で女優としてもE-girlsとしても上がっていきたいです。
石井:わたし、いろいろと物を作るのが好きなんです。DIYとか。だから両親と一緒に作った本棚とかを置いてます。ドリームキャッチャーも作って飾ってます。自分が作ったもので溢れるおうちにしたいです。それから部屋には写真立てがすごく多いです。回すと写真が見える観覧車みたいな写真立てとか。カメラも好きなので、家族の写真や現場の写真とか、たくさん飾ってます。
石井:お父さんとふたりで町を歩いたりといった、何気ない日常を描いていますが、すごく温かい気持ちになれる作品で、私も温かな気持ちになれましたし、両親と話したくなりました。それから今の自分の状況を客観視できたり、家族の愛に気づいたり、当たり前の日常に目が向けられるんじゃないかなと思います。
(text&photo:望月ふみ)
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