『ラストコップ THE MOVIE』唐沢寿明インタビュー

熱血昭和デカ、下校中の小中学生たちに追いかけられる!

#唐沢寿明

ドイツ人が見たら驚くんじゃないかな

ドラマの新しい可能性を広げた『THE LAST COP/ラストコップ』。2015年にHulu配信のオリジナルドラマが大ヒットとなり、地上波での連続ドラマとしても人気となったがその勢いは衰えることなく、ついに映画『ラストコップ THE MOVIE』として三度目の登場となった。ドラマでは最終回をほぼ全編にわたって生放送で放映し、しかも結末を視聴者投票で決めるという斬新さも話題となったが、映画版でもさまざまな試みでファンたちを満足させてくれる。

そんなアクションとギャグ満載の世界観を盛り上げているのは、何といっても個性豊か過ぎるキャラクターたち。そのなかでも、誰もが虜になってしまうのが、30年の昏睡状態から現代に目覚めた熱血昭和デカの京極浩介であり、人気実力派俳優の唐沢寿明がはまり役で演じている。そこで今回は、撮影現場の様子や窪田正孝と組む凸凹コンビの見どころなどについて、語ってもらった。

──映画化が決まったときのお気持ちは?

唐沢寿明

唐沢:正直言って、「ほんとに映画でやるのかな?」と思ったよ(笑)。でも、連続ドラマの最初のシーズンを改めて見てみたら、初めは結構真面目に作ってたんだよね。途中からちょっとずつおかしくなってきて、原作のドイツのドラマ(『DER LETZTE BULLE』)はほとんどないに等しいくらい全然違う作品になってるんだけど、これはこれでいいのかなと思うよ。ただ、向こうの人が見たら驚くんじゃないかな(笑)。

──映画版の撮影はいかがでしたか?

唐沢:長かったけど、ようやく終わったなって感じだよ。撮影の最後の方には、小学生とか中学生の下校時間と重なったことがあって、このスタジャンを見た大勢の子どもたちに追いかけられることもあったけど(笑)。

映画では、珍しくちょっと泣ける感じも!
『ラストコップ THE MOVIE』
(C)2017映画「ラストコップ」製作委員会

──アドリブが多いのも見どころですが、現場の雰囲気は?

唐沢:俳優のなかにはそういうアドリブがダメな人もいるんだけど、この作品に関しては柔軟な出演者が多くて、そういうこともなかったし、自分たちで楽しんでやってるから、今回はそこがよかったなと思いますよ。やっぱり出演者が楽しんでいないとだめだからさ。
 とはいえ、一応ストーリーがあるから、台本には沿わないといけないんだけど、いまはそれぞれのキャラクターが立ってきていて、みんなが少しずつふくらましている感じかな。脚本に書いてあるセリフ通りにきっちりと喋るとちょっと固くなるときもあるからね。なかでも、竹内(涼真)はものすごい自由だし上手いから、俺とか窪田も食われるくらい面白かったよ。

──京極はハチャメチャで面白いキャラクターですが、唐沢さんから見た魅力は?

唐沢寿明

唐沢:とにかく自由にやっている感じがいいんじゃないかな。というのも、この作品ってなんの事件を解決したのか何一つ覚えてない人が多いと思うんだけど、演じてる俺も窪田も最後のアクションシーンをやってる頃には、よくわからなくなることがあるくらいだからね(笑)。だから、逆にあんまり作り込まない方がいい役だなと感じてるよ。

──映画版での見どころは?

唐沢:不死身の京極もさすがにパワーが落ちてくるんだけど、それをみんな周りの人たちがどうやって助けていくかというところだね。なかなかいい話で、珍しくちょっと泣ける感じも出てるし、連ドラにはなかったような展開もあると思うよ。

──毎回アクションもすごいですが、体づくりなどもされましたか?

唐沢:俺の場合は、16歳からからスタントマンみたいなことをやっているから、特に体づくりはしなくても、本当はもっと色んなこともやれちゃうくらい。20〜30メートルくらいなら、ワイヤーがあればどこまでも飛んでいけちゃうしね(笑)。

チャレンジしたいことがまだまだある
『ラストコップ THE MOVIE』
(C)2017映画「ラストコップ」製作委員会

──コンビを組んでいる窪田さんの印象は?

唐沢:彼は普段はすごく人見知りで、あんまり人と話せないタイプなんだけど、ドラマになるとはっちゃけてて、そういうはっきりしたところがいいなと思うところ。俺みたいにどこいっても同じって感じじゃないからさ(笑)。

──いまやおふたりの息もぴったりだと思いますが、相棒としての相性はどうですか?

唐沢:俺があんまり台本通りにやらないから、最初は窪田の方が結構戸惑ってたんじゃないかな。でも、彼もそういう風にだんだん自由にやるようになって、「基本の部分は絶対に壊さないけど、ここまではいいんだ」という感じになってからは、面白くなってきたし、それは他の現場でも活きてくることだと思っているよ。

『ラストコップ THE MOVIE』
(C)2017映画「ラストコップ」製作委員会

 ただ、「演出家や脚本を無視して好き勝手やれ」ということではなくて、コメディでもシリアスなときでもアドリブというのはいい側面があって、そういうことが役に命を吹き込んで、本当の意味で役を膨らませることもあるから。

──これまで、コメディからシリアスまで幅広いジャンルにご出演されていますが、作品選びで意識していることは?

唐沢:自分の事務所のスタッフに「もし俺がこの役をやったら見たいと思う?」とか聞いたりして、見たいというなら、じゃあやってみようと決まることが多いね。

──今後やりたい役はありますか?

唐沢:いままで結構色んなことをやってきたけど、チャレンジしたいことはまだまだあるから、いずれ結果として出せるときがくるんじゃないかな。

(text:志村昌美/photo:中村好伸)
(スタイリスト:勝見宜人〈Koa Hole inc, 〉/ヘアメイク:池田慎二〈mod’s hair〉)

唐沢寿明
唐沢寿明
からさわ・としあき

1963年6月3日生まれ、東京都出身。87年に舞台「ボーイズレビュー・ステイゴールド」でデビュー。その後、NHK大河ドラマ『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』(02年) や『白い巨塔』(03年、04年)、蜷川幸雄演出の「マクベス」(01年、02年)など、ドラマや舞台で活躍し、話題作には欠かせない存在となる。また、映画においても、森田芳光監督の『おいしい結婚』(91年)でスクリーンデビュー後、『ラヂオの時間』(97年)や『CASSHERN』(04年)、『20世紀少年』シリーズ(08年、09年)などに出演し、幅広い層からの人気を得ている。