劇場版『猫忍』大野拓朗インタビュー

猫の金時が何度も奇跡を! 人気若手が猫愛語る

#大野拓朗

金時との出会いで大の猫好きに!

大ヒット『猫侍』シリーズのスタッフが再結集して新たに創り上げた、笑いと癒やしの忍者活劇『猫忍』。2017年1月から放送され、人気を博したドラマシリーズの劇場版が5月20日より公開される。

猫を生き別れた父の変化(へんげ)した姿と思い込み、「父上」と名づけて共に旅する、イケメンなのにこじらせ忍者・陽炎太が巻き込まれる珍騒動。アクションもスケール・アップした映画版で、父上を守ろうと孤軍奮闘する陽炎太に笑わされ、エールを送りたくなる。熱演している大野拓朗は、舞台、映画、ドラマ、CM、バラエティーと幅広いフィールドで活躍。今後も大注目の若手実力派俳優だ。そして、相棒の「父上」を演じるのは、ぽっちゃり体型で貫禄十分な大型新スター猫、金時。映画初主演という大野に、猫の金時との共演を中心に、本作への思いを語ってもらった。

──まず最初に、この役のお話を受けた時の気持を教えてください。

金時に愛おしそうに語りかける大野拓朗

大野:もう、めちゃくちゃ嬉しかったです! というのも僕は、『猫侍』シリーズの大ファンだったんです。大好きな作品が、今度は忍者になって帰ってくる。それもまさか、僕が主役で!?って、ものすごく嬉しくて光栄なことだと思いました。とにかく僕、動物全般が好きなんです。今まで犬が一番でしたが、今回猫と触れ合えるのも嬉しいな、と思いました。

──じつは犬派だったのですね。犬を飼われていたのですか?

大野:はい。中1の頃から実家で犬を飼っています。でも今は犬派、猫派両方です(笑)。僕自身、猫を飼ったことがなくて、祖母の家にいた猫に少し触れたことがあるくらいでした。周りの友だちもそうですが、猫と接する機会があまりなかったんです……。今、動物を飼いたいと思っているのですが、犬は一人ぼっちにさせるのが可哀想で、猫好きの人と話をしていたら、「猫なら一人暮らしでも融通きくよ」と言われて、猫もいいなと思いました。それで猫について調べたり、勉強していたんですね。そんな矢先にこの『猫忍』のお話をいただいて、金時と出会ったんです。もう猫が大好きになって、今は本気で猫を飼おうと考えています。

忍者の動きに四苦八苦! 変な所が筋肉痛に…
大野拓朗

──金時と最初に対面した時は、どんな感じでした?

大野:とってもおとなしく、抱っこさせてくれました。人なつっこくて、甘えん坊で、抱っこも好きな子なんですね。でもたまに、猫はやっぱりツンデレなんだなって思う時もありましたけど(笑)。撮影が終わった今でも、こういう取材などで一緒になる時は、僕の方に寄りそってきて、ソファーの上で僕の膝に手と頭を乗っけて寝ちゃったりするんですね。そうやって甘えてくれる時は、とにかくかわいいし、愛おしくて。それはやっぱり1ヵ月半、ずっと撮影で一緒に過ごしてきたからだと思います。

──すごく仲良しなんですね。最初から「どうやって猫とコミュニケーションを取ろうか?」というように構えることなく、接したのですか?

大野:そうですね。ただ最初は猫の喜ぶ触り方とか、そういうことは知らなかったので、動物プロダクションのトレーナーの方からいろいろと教えていただきました。

──初主演作にして忍者役、アクションシーンも満載です。撮影に入る前に体力トレーニングなどの役作りはいかがでした?

大野:体作りやトレーニングは常日頃から続けているんです。もともとスポーツが好きなので、ジムに通って筋トレしたり、キックボクシングやバスケをしたり、体を鍛えることは、普段からやっていました。でも、今回のような忍者アクションというのは初めてだったので、撮影が始まる前にスタントチームの方の所に通って、何度も忍者アクションの練習をさせていただいてから、現場に臨みました。1人で夜、家の近くを忍者走りの格好でランニングしたりすることもありました(笑)。

──準備は万全ですね。演じてみて、いかがでしたか?
金時

大野:そうですね。でも、やっぱり難しかったです! 忍者の走り方一つとっても、前傾姿勢で体を上下に動かさないで、膝もちょっと曲げた状態のまま、手を動かさないで山道を走るんです。手を振らないとなかなかスピードが出ませんし、変な所が筋肉痛になったりして、いろいろ苦労はありました。

──撮影現場の雰囲気はどうでしたか? 猫がいる現場って、ほっこりした感じでした?

大野:いえ、「猫ちゃんかわいい!」っていう雰囲気は全くなかったです(笑)。『猫侍』シリーズのスタッフさんたちが猫慣れしているというのもあるんですが。映画畑の“ザ・映画人”という感じの職人さんの集まりだったので、監督をはじめ、カメラ、照明、録音……皆さん全員が映像にこだわっていました。一つのカットに時間を費やして、照明を直すのにも20分〜30分かけて一生懸命、熱い思いで作り上げてきたんです。現場に猫がいるのが当たり前の雰囲気といいますか……。そういう部分がありましたね。

劇場版『猫忍』
(C)2017「猫忍」製作委員会

──撮影の期間は? 映画版とドラマ版は、別々に撮ったのですか?

大野:去年の10月から、ドラマと映画を合わせて1ヵ月半で撮り終えました。最初にドラマ版11話分、ドラマの撮影が終盤にさしかかった頃に、映画版の撮影が始まりました。なるべくドラマと映画を分けて撮りましたね。

──1ヵ月半でドラマと映画を全部撮り切るのは、キツかったでしょう?

大野:そうですね。僕は他の作品の撮影も重なっていたので、ハードでした(笑)。息抜きする間もなく、怒涛の1ヵ月半が過ぎていった感じです。

台本を読み込んでいるような金時の演技に感動!
大野拓朗

──金時との共演について、渡辺監督から何かアドバイスはありましたか?

大野:特に何も言われませんでした。ただ、ダメ出しはありました。僕が金時を愛しすぎて、かわいがりすぎて、“父上”と演じるはずが、もう赤ちゃん言葉みたいな話し方になってしまって(笑)。「いや、それは父上じゃなくて、金時に対する君だから。“父上”にそんなしゃべり方しないで!」みたいなNGは、何度か出してしまいましたね。

──アクションはかっこよくて、緊張感があります。一方、金時とのシーンはゆるっと脱力感でバランスが絶妙ですが、そこは意識しましたか?

大野:僕はもう何も考えずに、その日その日のワンシーンを全力で演じるのが精いっぱいでした。過酷な現場だったというのもありますが、大変な時もずっと金時と2人で支えあって、一緒に乗り越えてきたと思っています。

──金時との共演で、いちばん印象に残っているエピソードを教えてください。

大野:居酒屋で陽炎太が侍2人に「居酒屋に猫なんか連れてきてんじゃねえよ」と、からまれるシーンがあるんです。このシーンの撮影で父上を守ろうとして、抱き上げる芝居をした時のことでした。からまれた瞬間、金時は僕の方を向いて、自分から”とんとんとん”って近寄って来て、手を伸ばして「助けて! 抱っこ、抱っこ」と言わんばかりの表情で僕の目をじっと見つめてくれたんですよ。これはもう、金時かわいい、かわいすぎる!と思って、たまらなくて。本当にもう、ニヤニヤしちゃうのをこらえて芝居していました。金時のこのしぐさは編集でカットされてしまいましたが、「裏ではこんなことがあったんだな」と、ぜひ想像しながら観ていただきたいですね。

──金時は本作でデビューと聞いています。すごい演技派ですね。

大野:そうなんです。金時にとって今回が初仕事なんですけど、まるで「台本を読み込んでるんじゃないか」って思うくらい、シナリオに合った演技をするんです。鳴くシーンも、ちゃんと台詞の合間に鳴いてくれて。絶妙のタイミングでいい芝居をすることがすごく多くて、もう、本当に感動しました。たくさん奇跡を起こす子だと思います。

──金時と、あうんの呼吸で、観ていて本当に会話をしているようでした。何度もテイクを重ねたシーンも、あったのではないでしょうか。

大野:いえ、金時は全然、ほとんどNGがないんです。NGがいっぱいあったら、たぶん1ヵ月半という期間では、全部撮れなかったと思います。金時が父上を演じたからこそ、1ヵ月半で最後まで撮りきれたのでしょう。金時が何回も奇跡を起こしてくれたから、逆に僕の方がプレッシャーかかって、緊張してしまいました。「ここは絶対NG出せない」とか。「ここは上手くやらなきゃ」と思って、もうドキドキでした。

劇場版『猫忍』
(C)2017「猫忍」製作委員会

──金時を首に巻いてスクワットしたり、なでなでしたり、ほっこりシーンが満載ですが、一番好きなシーンは?

大野:なでなでシーンでしょうか。気持ちよさそうにしてくださっていたから。くださっていたって、父上に対する言い方をしてしまった……(笑)。それはもう、気持ちよさそうにしてくれて。スクワットのシーンは金時に合わせて、見せ方をいろいろ変えてみたんですよ。最初は背中に乗せて腕立て伏せにしようかとか、考えていたんですね。背中に乗せたら、さすがにどこかに行ってしまうかな? じゃあ首に巻けるかな? ということになって、やってみたらできたので、「よし、スクワットにしよう!」と決めたんです。その場で作った芝居なんです。

──撮影の合間の金時との過ごし方は、いかがでしたか?

大野:カメラが回ってない間もずっと、金時とベタベタしていました。金時は赤ちゃんみたいで、よく寝る子なんです。待ち時間にはずっと僕の腕の中で寝ていることも多かったですね。かわいくて、あったかかったです。

──演じている陽炎太は内気でシャイな、こじらせ忍者ですね。ご自身とは正反対の性格のように見えますが。

大野:僕、仕事とオフの時は全然違って、じつはかなり人見知りなんです。オフになると陽炎太みたいに初対面の人の前では上手くしゃべれなくて…。本当は仲良くなりたい、心を開きたいっていう思いはあるのですが……。ですから陽炎太の気持ちはすごくよくわかりますし、自分自身に近い部分があるのかな、と思います。

大野拓朗

──意外でした。では、人間の父上役、船越英一郎さんとの共演はいかがでした?

大野:船越さんとは、僕がデビュー間もない頃、ドラマでやはり親子役で共演させていただきました。その後、何度かお会いする機会がありましたが、仕事でご一緒するのは3〜4年ぶりで。「拓朗、お前、成長したなあ。」って初日に言っていただけて、ものすごく嬉しかったです。

──他にも、柄本明さん、麿赤兒さんなど、ベテランの方が出演されていますね。

大野:そうなんです。今回ご一緒させていただいて、ものすごく幸せでした。ワクワクしましたし、楽しかったです。何といいましょうか。間の使い方とか、独特の空気感や、個性が素晴らしくて。大先輩の方々とのお芝居を体験できて、本当にいろいろと勉強させていただきました。僕もいずれ、そういう個性を出せる役者になりたいと思います。

──最後に、この映画の見どころを教えて下さい。

大野:まず、金時のかわいさです! ものすごくかわいいですし、金時のいろんな表情が詰まっているんですね。猫好きの方はもちろん、そうでない方も、きっと金時を見るだけで顔がほころんでしまうと思います。あと豪華な登場人物の大先輩方、共演者の皆さんがものすごく個性的で、悪役なのにどこか憎めない部分があるので、それが温かさとか、この作品の優しさに繋がっていると思います。忍者アクションは、かっこいいですが、たくさん笑って、かわいい金時の虜になって、日々の疲れを癒やしてください。笑いと癒やし要素が一杯詰まった忍者活劇です。気軽にご覧になって、明日への活力にしていただけたらとても嬉しく思います!

(text:丸山けいこ/photo:中村好伸)

大野拓朗
大野拓朗
おおの・たくろう

1988年11月14日生まれ。東京都出身。2010年、立教大学在学中に「キャンパスター☆H50」でグランプリを受賞。同年、映画『インシテミル〜7日間のデス・ゲーム〜』で俳優デビュー。2011年『美咲ナンバーワン!!』で連続ドラマに初出演、近年は『三匹のおっさん』シリーズ(14年、15年、17年)、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(16年)、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』(15年)等話題作に出演し注目を集める。映画出演作は、『サバイバルファミリー』(17年)『高台家の人々』『セーラー服と機関銃』(共に16年)等。舞台でも活躍し、人気ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(17年)のロミオ役で好評を得た。