1952年1月7日生まれ、香港出身。京劇から演技の世界に入り、スタントマンとなる。主な作品は『燃えよドラゴン』シリーズ、『五福星』(83年)、『鬼喰う鬼』90年、『カンフーシェフ』(09年)など。
1961年の映画デビューから56年。香港映画界で俳優、武術指導、監督、プロデューサーとして様々な重要作品やヒット作に関わってきた香港映画界のレジェンド、サモ・ハン。彼が『死角都市・香港』(95年)から22年ぶりに監督・主演した話題作『おじいちゃんはデブゴン』が今週末から公開される。
本作は、隠居生活を送る認知症気味の老人(サモ・ハン)が、中国マフィアとロシアン・マフィアの抗争に巻き込まれた隣人の幼い娘を助けるために無敵の必殺拳を炸裂させてマファイアたちを退治する、香港版『グラン・トリノ』ともいうべき愛と感動のアクション・ドラマ。マフィアたちを次々と倒していくクライマックスのハードなアクションはもちろん、完全な老け役で挑むサモ・ハンの繊細な芝居も見どころ、泣かせどころだ。
来月、6月10日にはアクション監督をつとめた『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』も公開される彼に、映画の見どころなどを語ってもらった。
サモ・ハン::製作会社の社長から脚本を読んでほしいと言われ、読んだところもの凄く面白かったので監督の依頼を快諾したんだ。それで、高度な演技力が要求されるこの主役を誰にしようかと考えたときに「自分でやるしかない!」と思ったんだ(笑)。脚本も私にあわせて書き直したんだ。最初の脚本にはアクションはまったくなかったんだが、後半にアクションを入れた。とてもいい映画になったと思っているよ。
サモ・ハン:確かに監督は20年ぶりだけれど、アクション監督や武術指導者としてはずっと現場で仕事をしていたからね。俳優としても多くの作品に出演していたからブランクはまったく感じなかったよ。ただ、アクション・シーンだけを見るだけでいいアクション監督と違い、監督はやることや決めなければならないことが山ほどあって忙しいんだ。でも、楽しいし、やりがいがある。私は演出家としては演技やアクションに関してかなり細かく指示する方なんだ。これを撮ってみて、また監督がやりたくなったので、もうすでにいくつか次の企画を進めているよ。内容はまだ言えないけど、コメディで今年の夏には撮り始めたい。きっと日本のファンも気に入ってくれる映画になるよ(笑)。
サモ・ハン:主人公は人民解放軍で要人警護を長年担当してきた人物という設定なので、ボディガードとしての戦い方を一番に考えた。プロのボディガードはただ敵を倒すだけでなく、敵が二度と立ち向かってこれないようにしなければならない。だから相手の骨を折り、砕くことが重要なんだ。主人公は過去のいろいろな記憶を忘れてしまうけれど、この戦い方だけはしっかり体に染み付いていて、無意識に敵を倒していくんだ。
サモ・ハン:アクション監督としてやりがいのある大作といえるね。製作費が多いのがいい(笑)。まずは監督と話し合って、監督が決めたキャラクター設定をつかむことから始めたんだ。アクションに関してはすべてを任せてもらった。それぞれの登場人物のキャラクターに合っていて、同時に見たこともないようなアクションを目指したんだ。
サモ・ハン:我慢強く、細部にも気配りが出来るまじめな仕事ぶりのいい監督だね。彼はとにかくアクション映画が大好きなんだ。一緒に仕事が出来て楽しかったよ。
サモ・ハン:CGに関しては、私はCGの担当者にこれをこうして欲しいというだけで、技術的には何もわからないよ。ただ、アクションに関していえば、昔も今もまったく変わらない。今も昔と同じく大変だし、時間がかかる。ワイヤー・ワークなんか昔とまったく同じ方法で、すべて人力でやっている。格闘シーンも俳優本人が本当にやらなければ迫力が出ないので撮影までの苦労は昔と変わらない。撮影が長引けば長引くほど、費用は昔より莫大かかるので、逆に今の方が大変かもしれない。『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』は予算のある作品だからそうではないが、予算のない作品では、昔なら半年かけて撮っていた内容を今は1週間で撮れとか言われることも少なくないんだ。いいアクションを作るにはとにかく時間がかかるんだ
サモ・ハン:アクション監督や武術指導という仕事は、依頼されたストーリーや設定、キャラクターに合わせてアクションを考えていく仕事なので、特にこういうものがやりたいというのはないんだよ。依頼された中で、今までとは違う何か新しい動きやスタントを考えて作っていくしかないんだ。監督としては、やはりコメディがやりたいし、俳優としては、これからはアクションにこだわらずに、年相応の役をじっくり演じたいと思っているよ。いい企画があれば、アクションのないドラマや、ラブ・ストーリーだってやりたいね(笑)。
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