『東京ヴァンパイアホテル』夏帆インタビュー

夏帆を興奮させた、今まで経験したことのないこととは?

#夏帆

「これは絶対に面白くなるな」と興奮した

ここ数年は、“動画配信サービス戦国時代”ともいえるほど、各社が独自のコンテンツでしのぎを削っている。そんななか、鬼才・園子温監督が完全オリジナル脚本をひっさげてAmazonプライム・ビデオに参戦し注目を集めている。地球と人類の滅亡を図る吸血族と人類との戦いを描き、異色のドラマとなった『東京ヴァンパイアホテル』。映画顔負けの出来上がりは、反響を巻き起こすことは間違いなさそうだ。

個性豊かなキャストが集結し作品を盛り立てているが、そのなかで主演を務めたのは、話題作への出演が続いている夏帆。そこで、本作の現場での様子や女優として着実にキャリアを積んでいる現在の心境について語ってもらった。

夏帆

──まず、主演に決まった時のお気持ちは?

夏帆:以前、園さんとはドラマ『みんな!エスパーだよ!』でご一緒させていただいたんですけど、まさかまた呼んで頂けるとは思ってなかったので、びっくりしましたね。しかも、園さんのオリジナル脚本で、ヴァンパイアもののドラマを作るという話だったので、「これは絶対に面白くなるな」と興奮して、ぜひとお受けしました。

──最初に脚本を読んだときの感想は?

夏帆:実は、今回は脚本が完成してから撮影が始まったのではなくて、撮影をしながら、園さんが書いていったという形だったので、インする前に脚本がすべてあったわけではないんです。それでも、いままで見たことのない作品になりそうな感じはありましたね。

過酷でとにかく大変だったけど、作品を見て報われた気持ちに
『東京ヴァンパイアホテル』
(C)2017NIKKATSU

──出来上がった作品をご覧になっていかがでしたか?

夏帆:自分の作品はあまり客観的に見ることができないんですけど、形になったということで、まずはすごくうれしかったのと、本当に苛酷な現場だったので、とても面白い作品になっていて、報われた気持ちになりました。

──毎日が混乱状態だったということですが、実際の現場はどのような様子でしたか?

夏帆:いろんな準備が出来ずに撮影がスタートしてしまったので、この先どんな風に話が展開していくかもわからなくて、監督もスタッフもキャストもとにかく大変。そんななかでの撮影だったので、みんながギリギリの状態でした。

──そのなかでも、特に驚いた出来事はありましたか?

夏帆:毎日驚いていましたよ(笑)。10代からこの仕事をしていて、いろんな現場を見てきたつもりでしたけど、こんな現場は経験したことなかったですし、正直、本当に大変でした。特に今回は、私自身あまり経験したことがないアクションもあって、撮影が始まってからアクション練習をスタートしたんですけど、先が読めなくてすごく大変でしたね。

──園監督の現場が他と違うのは、どんなところですか?
『東京ヴァンパイアホテル』
(C)2017NIKKATSU

夏帆:まず、テストをしないんですよ。普段の作品だと、リハーサルして、ある程度流れを作って、カメラを据えて、何回かテストを重ねてから本番という流れなんですけど、園さんの現場はある程度動きをつけたら、カメラを回して本番という感じなんです。でも、そういうライブ感というのは、園さんの現場ならではだと思います。

──初の本格アクションにも挑戦されましたが、特別なトレーニングもしましたか?

夏帆:撮影と並行して練習するという感じでしたね。事前に練習をしたかったんですけど、時間がなかったので、撮影の合間にアクション練習をするという形でやっていきました。しかも今回は、アクションシーンをほとんどワンカットで撮ってるんですよ。だから、ごまかしが利かないので、そういう意味でもアクションシーンはとにかく大変でしたね。

夏帆

──今回感じたアクションの難しさや楽しさがあれば教えてください。

夏帆:楽しいとかはまったくなくて、辛くてしょうがなかったですね(笑)。というのも、とにかく形にしなきゃいけないということと、自分が怪我しても撮影は止まってしまいますし、相手を怪我させてしまうのが一番怖かったですね。ただ、アクション監督の坂口拓さんが面白いのは、形ではなく、リアルさを求めて気持ちを大切にしたアクションをつくるところ。そういう意味で、転んだり失敗したりした部分も含めて劇中に使ってもらっているので、いままで見たことのないアクションシーンになっているんじゃないかなと思います。

──特殊な役だったと思いますが、どのようにして役作りをしましたか?

夏帆:とても複雑な役で謎も多いですし、毎日本が変わっていくなかでの撮影だったので、私も役を捉えることがすごく難しかったですね。ただ、お芝居は相手あってのことなので、とにかく現場で起きたことを大事にしようと思って演じていました。

漠然と仕事していた10代、20代になって大きく変わった
夏帆

──個性の強いキャストが集まっていますが、まず満島真之介さんとの共演はいかがでしたか? 

夏帆:満島さんとは敵対している関係性だったので、唯一ガッツリ絡んだなと思うのは、アクションシーンでした。満島さんは身体能力が高くて、私がミスしてもすべて受け止めてちゃんと形にしてくださったので、安心して挑めました。

──では、冨手麻妙さんをはじめ、安達祐実さんや神楽坂恵さんといった女優陣の印象は?

夏帆:冨手さんは不安な気持ちを共有できる存在だったので、本当に助けてもらいました。園さんの現場にも慣れていますし、年下ですけどすごくしっかりしているので、よく相談していましたね。あとは、柔軟性がある素敵なお芝居をされるので、毎日刺激を受けながら撮影していました。
 安達さんとは以前からずっと共演してみたくて、同じシーンは少なかったんですけど、ご一緒できてとてもうれしかったです。あのクセのあるキャラクターをどうしてこんなに魅力的にできるんだろうっていうくらい、安達さんが演じたことによって、あの役が何倍にも膨らんで、素敵なキャラクターになったので、改めてすごい役者さんだなと思いました。
 神楽坂さんはドラマでもご一緒させて頂いたんですけど、今回は全然違う役柄で、衣装もすごいんですよ。脚本を読んだときにこの役を神楽坂さんが演じると聞いて、どんな風になるんだろうと想像がつかなかったんですけど、すごく魅力的に演じてらっしゃるなと思いました。

『東京ヴァンパイアホテル』
(C)2017NIKKATSU

──ルーマニアでもロケをされましたが、印象に残っていることは?

夏帆:大変しか言ってないんですけど、本当に大変でした(笑)。というのも、クランクインがルーマニアだったのですが、準備が整わないままルーマニアに行ってしまったので、手探りのまま撮影を進めていったという感じでした。ルーマニアのシーンがどんな風になっているのか、心配だったんですけど、完成した作品を観たら、ルーマニアで撮ったことで説得力が生まれて、深みのある作品になったんじゃないかなと思います。

──これまでいろんな役や現場も経験されたと思いますが、25歳になったいま、10代の頃と比べて仕事への考え方は変わりましたか?

夏帆:10代の頃は漠然としていて、「将来もこの仕事を続けていく」という意識もないまま仕事をしていたので、そういう意味では全然違いますね。

──それまでの清純派なイメージとは違う『ピンクとグレー』など、最近は新境地を開拓した感じも受けますが、何かきっかけはありましたか?

夏帆:そういう風に聞かれることが多いんですけど、何か明確なきっかけがあったわけではなくて、自然とそうなっていったという感じです。それに、10代のイメージのままずっと仕事をしていくって限界があると思いますし、いろんな役をやった方が楽しいですよね。幅広く挑戦したいというのは昔からずっと思っていたことなんですけど、これまではそういう機会がなかっただけなんです。
 20代に入ったことで、いろいろなことが開けて、タイミングが合って、そういう作品と巡り合えた、という感じですかね。だから、特別大きく変えようと思っていたわけでもないし、イメージを変えたくて役を選んでいるということもないです。でも、前より仕事が楽しくなった気がしていますね。

(text&photo:志村昌美)

夏帆
夏帆
かほ

1991年6月30日生まれ、東京都出身。2003年にCMでデビューを果たしたのち、11代目の「リハウスガール」に抜擢され注目を集める。その後、ドラマや映画に次々と出演。2007年には映画初主演となる『天然コケッコー』で、日本アカデミー賞新人俳優賞や報知映画賞など、数々の賞に輝き、高く評価される。主な映画出演作としては、『うた魂(たま)♪』(08年)や『きな子〜見習い警察犬の物語〜』(10年)、『箱入り息子の恋』(13年)、『海街diary』(15年)、『ピンクとグレー』(16年)、『22年目の告白−私が殺人犯です−』(17年)など。また、2012年からは舞台にも挑戦しており、活躍の場をさらに広げている。