『禅と骨』ウエンツ瑛士インタビュー

調子に乗ってた20代を経て、充実の今を混じり気ない自分で勝負!

#ウエンツ瑛士

「顔変わんねーかな」って願望があります

1918年にアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた日系アメリカ人禅僧ヘンリ・ミトワの生涯を追ったドキュメンタリー映画『禅と骨』。

本作のドラマパートでミトワを演じたのが、俳優、歌手、バラエティの司会、コメンテイターと幅広い活躍をみせるウエンツ瑛士だ。自身も父がドイツ系アメリカ人、母が日本人とミトワと共通する点が多いウエンツに作品を見て感じたことや、現在の立ち位置について聞いた。

──実在するミトワさんという日系アメリカ人を演じましたが、役作りなどはされたのでしょうか?

ウエンツ瑛士

ウエンツ:(メガホンをとった)中村(高寛)監督からは「ミトワさんを演じる必要はないから」と言われていたんです。台本に書かれている人物をしっかり演じようという気持ちでした。ただ個人的に興味を持ってミトワさんを見たときは、言葉では記せないようなパワーのある方だなって思いました。

──ミトワさんと似ていると感じる部分はありましたか?

ウエンツ:顔が似ているから大丈夫だよって中村監督には言われましたね(笑)。境遇的には、いまとまったく時代が違うので、比較はできませんが、周りからどんな目でみられるかというのは、ミトワさんたちがいたからこそ、いまがあるのかなという思いはあります。いまは血が混じっている方もたくさんいるし、それだけで虐められたりすることも減ってきていると思うんです。

ウエンツ瑛士

──顔が似ているという話が出ましたが、ミトワさんは長い日本での生活によって、顔もだんだんと日本人のおじいちゃんのようになってきましたね。

ウエンツ:仕事でもプライベートでも、楽しいことを見つけたり、人の役に立っていると感じたりすると顔って変わる気がしますね。俺の場合「顔変わんねーかな」って願望がありますね(笑)。

──ウエンツさんも若いころと比べると顔が変わったように感じませんか?

ウエンツ:そうですか? 自分では自覚はないです。この前、山崎賢人くんに会ったのですが、彼はここ最近、すごく顔が変わって格好良くなった役者さんだと思ったので、本人に「なんかあったの?」って聞いたんです。そうしたら「特に変わったことはない」って言われたのですが、男の変化って責任を背負ったりすることで変わってくると思うんです。だから俺も「ウエンツ変わったな」って言われたいですね。

──その意味では、俳優やコメンテイターなどお仕事が充実されている印象を受けますので、そのあたりで顔つきも変わったと言われるのではないですか?

ウエンツ:全然言われないですね(笑)。ただありがたいことに仕事は充実しています。でもそうなると怖いという気持ちが出てきたりするんです。

──怖いとは?
ウエンツ瑛士

ウエンツ:未来を考え過ぎちゃうというか……このまま続くのかなとか、いままで考えていないようなことまで考えちゃうんです。かといって仕事がないときはないで悩むので、結局はいつまでたっても一緒だなとは思います。面倒くさい性格ですね(笑)。

──悩みは尽きない?

ウエンツ:そうですね。20代前半、調子に乗っていた時期のこと考えるとゾッとしますけれど、充実していてもなんか悩みを探してきますからね。結局は誠実にやっていくことしかないんでしょうね。

──充実という言葉がありましたが、演じるときやバラエティなどチャンネルの違う仕事では、見せる顔も違いますか?

ウエンツ:バラエティはやっぱり違う部分があります。適切な表現かどうかわかりませんが、バラエティは負けた方が勝ちという部分があるのかなと。他の仕事は勝ちに行くので、勝ち方に違いがあるのかなと感じています。

──俳優業はどういう立ち位置ですか?

ウエンツ:自分の経験とか、記憶を呼び起こすイメージですね。今回の役柄は母親との関係性が非常に色濃いので、母親は自分のことをどういうふうに育ててきたんだろうとか、どこのタイミングでしっかり成長したと感じたんだろうとか、いろいろ思いを巡らせながら演じた部分はあります。

母には、結婚して孫の顔を見たいのか聞いてみたい
『禅と骨』
2017年9月2日より全国順次公開
(C)大丈夫・人人FILMS

──お母さまに聞いてみたいことはありますか?

ウエンツ:結婚して孫の顔を見たいのかは聞きたいです。今年32歳の年になるのですが、母親はなにも言わないんです。はっきりと聞いてくれた方が楽なんですけれどね。

──ミトワさんは、作品のなかで「嫁さんよりおふくろ」と語っていましたが、その気持ちはわかりますか?

ウエンツ:まだ結婚していないので、まだその気持ちはわからないですね。まあ年を重ねると血のつながりというのが色濃く出てくるのかなという想像はできるのですが……。

ウエンツ瑛士

──家族を持つイメージは湧いていますか?

ウエンツ:まだ誰かのためになにかをしたいという気持ちにはなれていないのが現状かな。いまは一人の方が楽だし、人を巻き込む覚悟がないのかもしれません。

──人を巻き込めないというのは真面目な考えですね。

ウエンツ:俺の場合、ちっちゃい台風なので誰も巻き込まれないんですよ(笑)。

──いま人を巻き込んでまでやりたいことはありますか?

ウエンツ:いっぱいあるのですが、時間がなくてね……と言いつつ、やりたいことを考えているのは、いつもソファーに寝そべっているときだったりするんですけれどね。時間あんじゃねーかって突っ込まれそうです(笑)。でも一番思うことは、現在の自分は新しいものへ踏み込みたい気持ちが旺盛だということですね。その時々によって気持ちは変わるので、変化が億劫になることもあるのですが、いまは知らないことに飛び込みたいという気持ちが強いです。

ウエンツ瑛士

──話を聞いていると、本当に心が充実しているように感じますね。

ウエンツ:人を惹きつける魅力ってなんだろうと考えたとき、いまの自分にとって最も格好いいことって、心の扉を開いている人なんですよね。自分自身も若いころは多少の嘘を混ぜながら過ごしていたんです。そうしなければ立っていられない時期もあったので。でもいまは、そういうのは通用しないと思い始めたんです。だから混じり気なしの自分で勝負する時期なのかなと思っています。

(text&photo:磯部正和)
(ヘアメイク:Aico)
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ウエンツ瑛士
ウエンツ瑛士
うえんつ・えいじ

1985年10月8日生まれ、東京都出身。4歳から芸能活動をはじめ、1995年にNHK子ども番組「天才てれびくん」のてれび戦士として人気を博すと、テレビドラマなどで活躍する一方、2016年に解散した小池徹平とのユニット「WaT」で歌手活動を行う。その後は俳優活動のかたわら、バラエティや情報番組のコメンテイターなどでレギュラーとして活躍するなど、マルチな才能を発揮している。