1997年2月10日生まれ、アメリカのジョージア州出身。子役モデルとして活動を始め、映画とTVドラマに多数出演。映画『(500)日のサマー』(10年)を経て、『キック・アス』(10年)のヒットガール役で大ブレイク。スウェーデン発のホラーをリメイクした『モールス』(11年)や、『ヒューゴの不思議な発明』、『ダーク・シャドウ』(共に12年)、リメイク版『キャリー』(13年)や『キック・アス』の続編『ジャスティス・フォーエバー』(14年)等、次々と話題作に出演。
仕事も恋も順調そのもの。周囲の誰もが輝く未来を信じて疑わないような美しく聡明な若き女性が、原因不明の病によって絶望の淵へと追いやられる──。精神のコントロールが効かなくなり人間性を崩壊させていく彼女と、周囲の人々の闘いを描いた感動作『彼女が目覚めるその日まで』が、先週末から公開された。
長らく原因不明とされ最近になって病名がつけられた「抗NMDA受容体脳炎」にかかった新聞記者の実話を基にした本作で、壮絶な闘病の様子を熱演したのはクロエ・グレース・モレッツ。若手演技派筆頭株の彼女に、本作について語ってもらった。
モレッツ:かなり急だったわ。決まったのは、撮影に入る3週間前くらいかしら。このプロジェクトに興味を持っていた時期もあったんだけど、出演できるとは思わなかったの。企画が持ち上がったとき、私は若すぎたから。でもその後、話が本格的に動き始めたとき、私は18歳で、この役がこなせる年齢になっていた。シャーリーズとは『ダーク・プレイス』で共演したばかりで、製作サイドが電話をくれたの。ジェラルド・バレット監督とはスカイプで話をしたわ。台本はもう読んでいたし、私たちはすぐに意気投合したわね。話も弾んで、キャラクターをどう描くかについて、同じ考えを持つことができた。彼には大きな自信があったの。会話の最初から、どういう方向に進みたいのか、はっきりしていたわ。撮影現場でもずっとそうだったわよ。彼も私も毎日一緒に必死で取り組んだ。大きな共同作業っていう感じね。
モレッツ:出演が決まってから、3日で読んだわ。それから2週間後に撮影に入ったの。こういう役をやるときは、時間がありすぎると少し怖じ気付いちゃうの。取り組む必要のあることの大きさに不安になるのよ。時間がない分、「わかったわ、体当たりでやってみようじゃないの」って思えたの。じっくり考える時間がなかったから。
モレッツ:そうだと思うわ。おかしなことだけど。
モレッツ:まず、(原作者の)スザンナとFaceTimeで2時間話をしたの。これはとても役に立ったわ。癖や話し方や、日常生活について知りたかったから。彼女がどんな人なのかをね。病気になる前と後の彼女をどう演じ分ければいいのか手がかりが必要だった。病院での様子や入院前に歯車が狂い始める様子、初期の症状や実際に覚えているのはどれくらいで、記憶から抜け落ちているのはどれくらいか、そうした情報を全て集めたかったの。私たちは細かいところまであらゆることを話し合ったわ。スザンナとの会話だけで、ノートの12ページ分が埋まったわね。その後、監督とは毎日話したし、抗NMDA受容体脳炎についてもインターネットで調べたわ。いろんな種類のてんかん発作や混濁状態に陥っている人たちのビデオも見た。それからこの病気の進行を時系列で追った映像を見て、スザンナがどんなふうに悪化していったのかを確認したわ。
モレッツ:怒りが湧き出てくることは一切なかったと言っていたことよ。自己嫌悪も自己憐憫もなかったと。実際、自分のことを神様のように感じたそうよ。どんなふうに幻覚が起こって、人の年齢がわからなくなるのか、そういう話もしてくれたわ。人をじっと見つめていると、その人が50歳分、老けて見えたりするの。それから「私はスーパーマンよ。私は神よ」みたいな感じになったりね。入院しているときでさえ、自分を疑うことはなかったそうよ。「どうしよう、一生ここにいなくちゃいけないわ」なんて思うことはなかったって。すべては陰謀で、自分はみんなから攻撃されているんだと感じていたそうなの。
モレッツ:おかしな話だけど、正直言って、自分が何をしているかは把握できてないの。それがこの映画なの。シーンに入る前に、これほど何もわからないという経験はないわね。これほどそのシーンに対する準備をしないで臨んだことはないわ。
モレッツ:最初のテイクの前には、そのシーンでスザンナがどうするかがわからないからよ。最初のテイクがいちばんリアルでいちばん生々しいの。あの狂気の状態に全力でぶつかるわけだから、ただ直感的にやるしかないの。そしてそれは、混乱や恐れや閉所恐怖症、その他そこにあるあらゆる感情に自分を投げ入れることによってしか達することができない境地なの。本当にそのシーンが終わるまで、自分が何をやっているのかわからないの。「どうしてこういう演技をしたのかわからないわ」みたいな感じ。こんなことは初めてよ。
俳優が演技するということは自分自身に嘘をつくことだけど、それは演じる人物の真実を演じているわけよね。私はスザンナ役でそれができたわ。彼女は自分が語る言葉を信じているからね。でも、彼女が狂うとき、私は自分の言葉を信じない誰かになったふりをしているの。奇妙よね。とても混乱するし、本当に何が何だかわからない状態に置かれてしまうの。
モレッツ:楽しんだわ。だって最高にクレイジーな体験だし、誰も「少し抑え気味にしてもらえるかな?」なんて言わないんですもの。監督は、「やってみよう。そこから答えが見つかるから」っていうスタンス。とても解放的で最高の気分よ。俳優冥利に尽きるわ。
例えば、アクターズ・スタジオの巨大なワークショップみたいな感じね。ニューヨーク・ポストのオフィスで私が大声を張り上げるシーンがあるの。「もうこんなことはできないわ!」って。それから狂乱状態で泣き叫ぶわけ。それから笑うの。そして「ああ、人生に何が必要かわかったわ」って言って、テーブルの上に飛び乗るの。クレイジーよ。どう演じるかなんて全然わからなかったわ。2番目のテイクで、頭の中で「さあ、テーブルの上に飛び乗るわよ」って思いながら、テーブルに飛び乗ったら、片足がテーブルを突き抜けちゃったりね。
モレッツ:おかしくて、テイクの直後に笑い始めたわ。こんな私は初めて見たわね。映画の中で自分を見るときはいつも、私自身が見えるの。誰かのおかしなセリフに対して私自身も実際におかしいと感じたとき、そこに自分の存在を感じられるのよ。でもこの作品では、誰を見ているのかわからないわ。私の存在は見えないのよ。スザンナだけどスザンナでさえないの。見ているのはスザンナの狂気なのよね。
モレッツ:私と似ているところがたくさんあるわ。彼女は野心家で、自分が何を求めているのか、ちゃんとわかっている女性よ。インターンだった15歳の頃からニューヨーク・ポストで仕事をしていて、17歳のときに彼女の最初の記事が掲載されたわ。映画の冒頭は、新しいボーイフレンドと付き合い始めたばかりの頃ね。そして、キャリアをスタートさせて、職場での地位を固め始めていた。抗NMDA受容体脳炎にかかる前のスザンナは、私のようだわ。
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