1987年10月18日生まれ、アメリカのカリフォルニア州出身。子役として舞台で活動。テレビドラマ『ハイスクール・ミュージカル』で人気を博し、映画版『ハイスクール・ミュージアム/ザ・ムービー』(08)にも出演。その他の出演作は『セブンティーン・アゲイン』(09年)、『ペーパーボーイ 真夏の引力』(12年)、『ダーティ・グランパ』(16年)など。
19世紀半ばのアメリカでショービジネスの原点を築いた、伝説的な興行師、P.T.バーナム。差別や偏見の目で見られていた当時のエンターテイナーたちを輝かせるショーをヒットさせた彼の苦難の道のりをドラマティックに描いた感動のミュージカル『グレイテスト・ショーマン』が、2月16日より公開される。
妻への愛を胸に苦難を乗り越える主人公バーナムをヒュー・ジャックマンが、その片腕をザック・エフロンが演じたほか、ミシェル・ウィリアムズ、レベッカ・ファーガソン、ゼンデイヤなど豪華キャストも話題のひとつ。主題歌「This is ME」がアカデミー賞にノミネートもされているファンタスティック・エンターテインメントについて、ザック・エフロンに話を聞いた。
エフロン:ロスの大渋滞しているフリーウェイ101号線で車を運転していた時だった。車はまったく動かなくて、かなり普通の日だった。ジムに行って、ミーティングをいくつかこなし、家に帰ろうとしていた時に電話が鳴ったんだ。
マイケル・グレイシーからの電話で、嬉しかったよ。彼とは長年の付き合いで、本当にすてきな人、クールで面白い人だから。彼とはもう何年も色々な話をしているんだ。何もない時でも(笑)、ただ一緒に過ごすためにね。彼と話しをするのはとても楽しい。それで、フリーウェイで電話を受けた時には、いつものランチへの招待かと思った。でも、驚いたことに、彼はこう言った。「君に考えてほしいミュージカルがあって、私が監督するんだ」。僕は叫んだよ。「出るよ、出演する! いつ会う?」彼は笑い始めたから、僕は、「誰が出演する? 誰についての話だ?」と質問し、彼は、「P.T.バーナムの話で、ヒュー・ジャックマンが出演する」と答えた。僕は聞こえるほどの叫び声をあげていた。渋滞は相変わらずで車は動いていなかったから、フリーウェイの真ん中で車を降りて、「やったー!」と叫んだ。それから、車に戻った。僕は最初から、ワクワクしていたよ。
エフロン:マイケルと詳しい話をして、役についていろいろ話し合った後で、これは僕が今まで聞いたことがないようなものだし、信じられないくらい良い話のような気がした。マイケルはこのすばらしい話を説明し、僕の役のフィリップについて教えてくれた。彼はこの映画が画期的なもので、今日の観客の共感を呼ぶメッセージもあると言った。それは、間違いなく僕の最も得意とするものだった。並外れた話だった。
エフロン:特別だったよ。僕は前からミュージカルをまたやりたいと思っていたけど、ヒュー・ジャックマンにマイケル・グレイシー、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ミシェル・ウィリアムズが出演するような映画が手に入るとは夢にも思わなかった。そして、多くの壁を打ち破ったP.T.バーナムのすばらしい物語を伝えることにワクワクした。彼は世界に、既成概念にとらわれずに物事を考えることを教えてくれた。彼は一種のコミュニティのような愛と自由を思い描いた人だった。そこには何も悪いことがなく、憎悪が存在しない。彼は愛を祝福し、人の経歴や社会的な地位に関係なくさまざまなタイプの人々を受け入れた。この映画のテーマや目的に、僕はつながりを感じた。これはP.T.バーナムの伝記映画ではない。これは、彼が成し遂げたもの、彼が持っていたメッセージ、そして彼を特別な存在にしたものを僕たちなりに解釈した作品だ。
エフロン:フィリップは(空中ブランコ乗りで、P.T.バーナム一座のスターである)アンと恋に落ちるが、2人の関係は多くのバリケードを破壊することになる。2人の関係は、偏見や恐れがあるせいで禁じられた恋だが、映画のメッセージの一部には、そういう障害を恐れてはいけないし、障害を取り壊すかどうかを決めるのはその人自身なんだという主張がある。
エフロン:誰でも何らかの形でフィリップには共感できると思う。成功の定義は人により違うけれど、人生でチェックすべきボックス全部に印を入れたあとで、彼はまだ空虚さを強く感じている。結局、幸せになるには、精神的な充足がなくてはならないことを僕は学んでいる。人とのつながりを持たなければならないんだ。誰かの役に立ち、恋をしなければならないということだ。フィリップは、バーナムに会うまで自分が捕らわれていた世界についてそのように悟った。その世界では明らかに彼は幸せではない。P.T.バーナムはそこの幕をすべて引きはがし、フィリップに未知の世界を、彼が恐れているものを探求する機会を与えた。人は誰でもそういった恐れに捕らわれるものだと思う。新たな領域に足を踏み出すことや、危険なことを試すのは怖いからだ。フィリップは初め、バーナムからサーカスで一緒に働こうと言われて、断る。なぜなら、彼には金をかけ、キャリアをかけて作った安全を保障するものがあったからだ。でも、彼は偏見のない心を持っていて、もっと多くを求める気持ちがあり、バーナムのアイディアに対して好奇心を感じたから、そこはエキサイティングだ。それで、彼は危険を冒す。バーナムは結局、フィリップを助けることになる。
エフロン:共演シーンはとても自然だった。正直に言うと、この映画の多くのシーンが、まだリハーサル中だと思っていた時に撮影されたものなんだ。「あのシーンはもうスケジュールにないな」と思って、「なんでだろう? いつ撮影したのか?」と思っていた。彼らの答えは、「ああ、リハーサル中にもカメラを回していたんだ。」そして、結局、僕が知らないうちに撮ったそういうテイクが本編に使われることになったんだ。
ヒューは、僕にとっての良い基準になってくれる。彼のことは撮影中も撮影外でも、多くの意味で尊敬している。彼は、作品全体を自分の保護下に置いている。誰よりも早くセットにやって来るし、一番最後まで残り、常に働き続け、その何から何までを愛している。
エフロン:ヒューの魅力と熱意は人にやる気を起こさせるものなんだ。競合的なものではなくて、励ますタイプのものだ。彼はいつも笑顔で、熱意にあふれている。僕が今までやった中でも最もハードなダンスの一つの撮影で、テイク30になった時、僕はヒューの目を見て、2人とも、「これで決めるぞ」と思う。ああいう感じは大好きだ。ヒューはまるでピーター・パンのように、永遠に若いままだ。彼にはそういうきらめきがあるし、そういう熱意がみなぎっている! ああいう人に僕はなりたいと思っている。自分を向上させようとしている人を見ると、自分ももっとよくなりたいと自然に反応する。思わず150%の努力をして応えてしまう。ヒューは協力者としてもすばらしかった。ヒューからは多くを学んだが、彼はおそらく、僕に何を教えたか、知りもしないだろう。それに、2、3回、僕が彼にアドバイスして、彼が素直に受け入れたこともあったし、そこから別のアイディアが生まれたりもした。僕は彼が頭の中で考えながら目を輝かせるのが分かった。アドバイスを取り入れてまったく違うものに変えてしまうこともあったんだ。いつでもそういう意味の協力ができた。
エフロン:彼女は最高だ! 彼女のように構えることなく、若いのにやる気があって、自分の演技を向上させようとする人は見たことがない。共演を始めた初日から、僕たちは何度もリハーサルを重ね、空中ブランコに乗って空中で過ごした。僕はずっとトレーニングを続けているし、いつでも体の調子を整え、どんな話が来ても準備のできた状態でいたいと思っている。でも、片腕でぶら下がり、空中でお互いに捕まり合うというのは簡単に出来ることではなかった! ゼンデイヤにとってどれほど大変だったかは想像がつく。彼女は大胆に挑み、たぶん1時間ぐらい一緒に組んだ後では、僕らは同じ考えを持っていることに気づいた。お互いに、すばらしい仲間意識があった。可能性は無限だということを彼女と一緒に知った。彼女はいつもそこにぶら下がって、どんなことでもやろうとしていた。彼女は広い心を持っていた。
エフロン:そう言ってもらえて嬉しいよ! 本作の音楽のすばらしいところだけど、音楽にはいつも“意気込み”があった。歌詞に関して意欲とか熱意を感じる時には、ダンスは伝統的な感じになる。伝統的なジーン・ケリーやフレッド・アステアの映画では、ダンスを通して物語を伝えている。彼らのことは足と同じぐらいに顔も見るものだ。本作のナンバーでもそれを目指した。ダンスでは僕は新しいものに触れることができたし、ヒューはダンス・パートナーとして最高だった。ゼンデイヤもそうだ。だから、「どこまでこれをやれる? どれぐらい先まで行ける? もっと危険なものにできるか?(笑)もっと高いところから飛べるか? もっとスピードをあげられるか? この動きはカメラ映りがいいか、それともバカバカしく見えるだけか? 僕たちは限界まで推し進めていき、そうするとマイケルは99%、オーケーを出してくれ、僕たちを励ましてくれた。楽しんで自由になるという意味で、彼は僕たちを手助けしてくれた。僕はまたも17歳に戻った気がしたよ! 言っちゃったかな?(笑い) でも、本当のことなんだ。
エフロン:そうなんだ。だから僕はとても嬉しかったよ。音楽を聞いていたら、どんどん進化して発展していった。ああいう曲は、車に乗っている時に聞きたい音楽だ。「これはラジオから流れてくるような曲だ。ヒットするはずだ」と思った。この音楽をみんなに聞いてもらいたくてワクワクしている。従来のミュージカル・ジャンルには収まらないものだからね。映画に出てくるような曲ではなくて、とても現代的なんだ。
エフロン:彼らの仕事のやり方は良く知っていたから楽しかった。ああいうやり方で、僕は技能を学んだんだ。1人はピアノを弾き、もう1人は歌う人の隣にいて、曲が盛り上がってくると、彼らは生き生きとして、レコーディングしながら一緒に歌に入ってくれる。歌い始めて、いつでも少し低い音程で始めるんだ。僕にはなかなか出せないような高音がいくつかあった。というのは、僕は何年も歌っていなかったのに、急に歌に戻ったからだ。高音をほぼ出せるようになるまでに2、3週間かかった。それから何度かリハーサルをしたあとで、突然、彼らは、「いいよ、マイクに近づいて、低い音で録音する」と言った。レコーディングを始めて、何度かテイクをして、もう一度歌おうと準備して、「今度こそ、キメるぞ」と思っていたが、誰もマイクに戻ってこない! 僕は、「もしもし?」と言った。それから録音室を見ると、彼らは盛んに言い合っているのが見えたが、僕は別のブースにいて何と言っているかは聞こえない。それから、彼らはこう言った。「もう終わった。君はずっと高音が出ていたけど、言わなかっただけだ。君はうまくやっていたよ!」僕が「本当に?」と言うと、彼らは「ああ、良いものを5回分、手にした。もう大丈夫だ!」彼らは、僕が自分の声で長いこと感じたことがない場所へ僕を導いたようなものだ。なんと言うのか分からないが、ファルセットか。ミドル・ファルセットの音域に近いものだ。でも、あれはとても素敵だったし、彼らにだまされて僕はそういう音を出したようなものだった(笑)。
エフロン:僕はいつでも、仕事が面白くなるように、生活が楽しくなるように、物事を切り換えたり変化させたりするのが好きだ。僕はまだ若い。30歳になったばかりで、自分の能力に関しては始まりにすぎない気がしている。何でもやってみようと思っているし、未来にはワクワクしている。なぜなら、今ほど集中しているというか、冷静でいたことがないからだ。僕は何も後悔がないような場所にいる。それに、批評を読むのを止めたんだ! ただ「やり遂げるために出演」しているし、楽しんで、これから先どこへつながるかを見ている。次のプロジェクトは、テッド・バンディ(連続殺人犯)の話だ。ミュージカルとは違っていると言えるよね! 僕はレーンを変更して新しいことをやるのが好きなんだ。変化に富むことは人生の鍵だと思う。
エフロン:本作は多様性と多様性の受け入れについての話だ。愛と是認を描いている。それに、たとえどんなだろうと、自分に誇りを持つことだ。自分の光を輝かせればいい! 僕たちはこの世界の規則の中で、すべてのチェックボックスに印を入れたら、何もかもうまくいくとう考えの中で育っている。実際、ミレニアル世代として、僕たちにはずっと遠くに到達するツールがあり、これまで以上に多くのことができる。勇気をもって既存の枠組みにとらわれずに物事を考え続けなければならないし、新しいことを試す気持ちを持たなければならない。この映画を見た人には、「すごくよかった! 久しぶりに最高に楽しかった。」と言ってもらいたいし、笑顔になって幸せな気分で、自分はこの世界で独りぼっちではないと感じながら映画館をあとにしてほしい。映画はこう言っている。「僕たちはあなたたちと一緒にここにいて、あなたたちを愛している。運が悪いのは僕も同じ、(笑)お互いさまだ!」
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