1948年1月8日生まれ、イギリスのスコットランド南西部にあるグラスゴー出身。グラスゴー芸術大学で絵画を、英国国立映画テレビ学校で映画を学び、卒業制作作品が86年エディンバラ国際映画祭で賞を獲得。ゴールデン・グローブ賞と英国アカデミー賞を受賞した『ザ・ブロンド爆弾 最後のばら』(00年)の他、ケイト・ウィンスレット主演『グッバイ・モロッコ』(98年)、『レジェンド・オブ・サンダー』(04年)などを監督。
イギリス人がこよなく愛するウイスキー。第二次大戦中、スコットランドの島を舞台に、ウイスキーを巡る役人と島民との大騒動を描いたのが『ウイスキーと2人の花嫁』だ。
美しいスコットランドの風景に心奪われ、思わずウイスキーが飲みたくなってしまう、お酒好きにはたまらない1本。見る者の心をほっこり温めてくれる本作について、来日したギリーズ・マッキノン監督に語ってもらった。
監督:いろいろな理由があるのですが、一つは、オリジナルの作品がモノクロで70年以上前に作られたということです。ただ本作で語っているのは、そのオリジナルと同じ話ではないんです。
私が脚本に興味を持った理由は、オリジナルの要素が拡張されていて、ウイスキーだけではなくコミュニティとか、家族の話だというところに非常に魅力を感じたからです。私はこれまでずっとコミュニティというものが大事だと思ってきましたし、私が作ってきた映画というのは、家族というものがベースになっているものが多いのです。ですから、この作品の持つコミュニティを描く部分や家族の物語を描く部分というのにとても魅力を感じました。ウイスキーの話は半分で、残りの半分は島のコミュニティの話です。
監督:実はイギリスではそれほど有名な事件ではないんです。道を歩いている人に聞いても知っている人はそんなにたくさんはいません。映画を通してこの事件を知った人がほとんどだと思います。
監督:あっちこっち探しまわりました。プロデューサーのアラン・J・ワンズが薦める場所に連れて行ってもらいました。彼は以前、その近くで撮影したことがあったんですね。私は美術のアンディ・ハリスと一緒に車でロケハンに向かいました。車を降りた瞬間「ここが良い!」と決めたんです。それがスコットランド本土のアバディーンシャーという場所です。
もちろん(舞台となる)アウター・ヘブリディーズ諸島は素晴らしいロケーションなのですが、実際に島で撮影をするのは、物流などを考えるとあまりに予算がかかり過ぎてしまうんです。宿泊所もないので、クルー全員を連れて行っても全員泊まれないですし、本土からの移動も大変です。そこで、プロデューサーにスコットランドのハイランド地方など、ロケーションに適した場所を教えてもらいました。
結果的に、素晴らしいロケーションに出会えました。私も美術監督も、(ロケ地となった)アバディーンシャー周辺が大好きでした。なぜかというと、そこは巨大な舞台セットみたいなところだったのです。メインとなる郵便局やパブや学校として使用する建物がそこに全て集まっていたんです。もともと学校は校舎ではなかったり、郵便局も本物の郵便局ではなかったりしたのですが、庭を改造したり家屋を改造したり、既存の建築物を使ってメインの舞台を作り上げていきました。壁や港、船なども、そこに追加していきました。
監督:もちろん、スコットランドの文化に、ウイスキーは欠かせない大切なものです。私もウイスキーが好きです。何年も会っていない旧友に会うときやパーティーのときなど、社交的な場で飲みますね。
監督:私には2人娘がいて、それぞれ夫や孫もいるので同じような家族構成ですが、彼とはちょっと状況が違います。彼の場合は、娘が嫁いで島を出てしまうと島にたった独り取り残されるかたちになってしまいます。下手したら一生会えないかもしれない、会えたとしても1年に一回しか会えなくなってしまう。見捨てられた感じになります。ですので、私とは少し状況が違うのかなと思います。
監督:難しい質問ですね!実は問題はほとんどなかったんです。スコットランドはだいたい雨が降る時期なのに天気もすごく良くて。今思い出しても困難だったことが見当たらないんです。というのも、準備を非常に入念に緻密に行ったからなんです。しいて言えば、沈没船に小舟で向かうシーンの撮影準備が大変でしたね。
監督:沈没船に、小舟に乗った島民たちが向かっていくシーンです。そこで非常に美しい音楽が流れるんです。素晴らしいシーンだと思っています。
監督:日本は、人々がとても優しくて素晴らしいです。もっと街を歩き回りたいです。
日本映画については、黒澤明の映画が好きです。彼の作品からは多大な影響を受けました。『羅生門』『生きる』『七人の侍』『どですかでん』など、彼の全ての作品が好きです。日本以外の国の映画監督では、アンドレイ・タルコフスキー、イングマール・ベルイマン、フェデリコ・フェリーニ、ヴィットリオ・デ・シーカ、現代でいうとロイ・アンダーソンが好きです。
監督:今、3本の作品が進行しているのですが、そのうちの一つが、ブラック・コメディなんです。これは是非監督として成功させたい、監督してみたかった作品です。
監督:この作品で起こることは、ある意味で全てが其々のキャラクターにとって真実です。「非常に特殊なことは実は非常に普遍的である」という言い方があるんですが、この映画は、全く文化の違う日本でも観客が共感できるものだと思います。自分や自分の周りの人に、登場人物の心情を投影できるのではないかと思います。とても楽しい映画です。
深刻なことは起こりませんが、ばかばかしいコメディを作ったわけではなく、これは真実の映画です。ある意味、これは人が互いにどのように関わり合っていくかを描いたもので、人々についての映画です。そしてコミュニティについてのストーリーを楽しく描いた作品です。そして、とにかく作曲家のパトリック・ドイルの音楽が美しいです。日本の皆さんに、是非楽しんでいただきたいです。
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