『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』ゾーイ・カザン インタビュー

愛が異文化の壁を乗り越えさせる!? 名監督孫が語る豊かな世界観

#ゾーイ・カザン

今の世の中にとって必要な映画

パキスタン出身の男性と白人女性が、異文化の壁を乗り越えるまでをユーモラスに描いた感動作『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』。実話をもとにし、アカデミー賞脚本賞にもノミネートされた話題作だ。

アメリカではたった5スクリーンの上映からスタートしながらも、口コミで人気を呼び、2600スクリーンにまで拡大上映されることとなった本作。同郷の妻を持つようプレッシャーをかける両親と白人恋人の間で揺れる恋人──そんな彼の行動に傷つくヒロイン、エミリーを演じたのはゾーイ・カザン。歴史に残る名監督エリア・カザンを祖父に持つ彼女に、映画の見どころなどを語ってもらった。

──出演の決め手はなんでしたか? 脚本を担当したのはクメイル・ナンジアニと、妻のエミリー・V・ゴードンで、彼らの物語を映画化した作品でもあります。さらに、クメイルは主演もつとめ、あなたの恋人役ですね。

『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』
(C)2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

カザン:脚本がすばらしくユニークだと思ったの。これは、私が成長するにつれて自分をわかってきたからなのか、映画業界が変化してきたからなのか知らないけれど、ここ数年の私は、脚本を見ても食指が動かないことが増えてきたの。でも今回は脚本も物語もよくて、すっかり虜になっちゃったわ。
 ネット上で実際のクメイルとエミリーの動画を見てみたらますますピンと来たし、私はジャド・アパトー(『40歳の童貞男』監督で本作の製作総指揮)や(本作を手がけた)マイケル・ショウォルター監督の作品のファンでもあった。それで、この“嵐”に参加してみたくなったの。
 実際に現場に行ってみたら、みんなのやる気や集中力がみなぎっていて、私もその周波数に合わせたいって気分になったわ。

──あなたの役のモデルとなったエミリー・V・ゴードンに会った感想は?

カザン:会う前は、嫌われたどうしようかと思って緊張しちゃった。で、会ったみたら、私が持っているのと同じブラウスをエミリーが着ていたのよ! 先行きいいかもって思った。しかも会った瞬間に、ずっと前から知っていたような気分がしたの。実際、共通の友だちも何人かいたのよ。そのうち、私の彼氏も一緒に、みんなで食事に行ったりして、すんなりなじめたわ。

『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』
(C)2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

──劇中での恋人・クメイルをどう思いますか?

カザン:映画の中のクメイルは実際の彼から5歩遅れてるって感じかな。今のクメイルははるかにバランス感覚があるし、心穏やかに過ごしているから、ちょうどいいわ。だって本当に追い詰められたら、コメディにもドラマにもならないでしょ。

──この映画の魅力は何でしょうか?

カザン:今の世の中にとって必要な映画なんじゃないかな。特に大統領のことを考えたりするとね。こうしてアメリカで善良な市民として、みんなと同じ悩みを抱えて生きているムスリムの家族がいる。その豊かさや人間性は、皆さんにも興味を持っていただけるはずよ。

ゾーイ・カザン
ゾーイ・カザン
Zoe Kazan

1983年9月9日生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルス市出身。祖父は『欲望という名の電車』などを手がけた名監督エリア・カザンで、祖母は劇作家、両親は脚本家。イェール大学に学び演劇の学士号を取得、ブロードウェイの舞台でも活躍。映画『恋するベーカリー』(09年)、『ハッピーサンキューモアプリーズ』(10年)などに出演。『ルビー・スパークス』(12年)では主演と脚本を兼務した。