1979年10月8日生まれ。ベトナム難民の両親の下、タイの難民キャンプで生まれ、乳児の頃にアメリカのニューオリンズに移住。ボストン大学の映画学コースを卒業、その後ニューヨークで演技を学んだ。テレビドラマ『Treme』(11-13年)で注目を浴び、14年にはポール・トーマス・アンダーソン監督のアカデミー賞ノミネート作品『インヒアレント・ヴァイス』に出演。本作ではゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされた。
もしも人間が13センチほどに小さくなれば、人口問題も食糧問題も経済問題も一挙に解決!? そんな発想の転換にして世紀の大発明をテーマにした『ダウンサイズ』が公開中だ。
本作で、後戻り不可能な小型化を余儀なくされてしまった義足の政治犯女性を演じたのはホン・チャウ。ベトナム難民としてアメリカに渡り、ゴールデングローブ賞では助演女優賞にもノミネートされた彼女に話を聞いた。
チャウ:この映画はあまり遠くない未来の話で、ノルウェー人の科学者が人間を13センチに小型化する技術を開発して、世界の人道的な問題、資源の枯渇、気候の悪化、人口過剰の問題を解決しようとしているという設定から始まるの。
チャウ:私の役はノク・ラン・トランという、政治犯のベトナム人で強制的にダウンサイズされてしまい、アメリカのレジャーランドに流れ着いた女性の役なの。この人間の小型化は、他の多くのテクノロジーと同じように使い方次第で良いものにも悪いものにもなりうる。彼女の場合はテクノロジーが悪い方に使われた例ね。
チャウ:彼女のように、様々な側面があって幾重にも層になっている役を演じるのは素晴らしい。女性のキャラクター、特に主役だと、好き嫌いの問題がいつもあると感じていて、どういうわけか、どこかちょっと馬鹿なふりとか、純粋で傷つきやすいふりをしなければいけないというのがある。だから映画好きの女性として、ストレートで賢く、ただ馬鹿なだけじゃない女性をスクリーンで見るというのはとても興味深い経験だった。障害がありながらも自分の会社を運営し、世界に対して何かが起きるのをただ待っているだけじゃない彼女を見ているのは良い気持ちだったわ。彼女は殉教者じゃないし、誰かがかわいそうに思うような人物でもない。彼女は一人で本当に様々なことができるけれど、助けも必要としていて、そのバランスをうまくとっていける。彼女には、それをとても有機的に出来る才能がある。無理にリキみながらやっているわけじゃない。この種のキャラクターを演じるのは簡単ではないわ。ジム・テイラーとアレクサンダー・ペインの書いた脚本はとても美しく、愛に満ちていてとても入り組んでいる 。役者としてこの役を演じられることはとても幸せよ。なぜなら、本当に様々なことをお願いされるから……。おかしくあること、ドラマティックであること、本物であること、意識的であったり意識的でなかったりできること。お手玉の鞠が沢山あって、でもそれを使って楽しむことができる、私はそんな挑戦するのが大好きなの。
チャン:私の両親はベトナム人の難民で、私はルイジアナ州ニューオーリンズで育ったの。タイの難民キャンプで生まれて、両親とアメリカにやってきた。私たちは貧しく、両親は必死に働いて3人の子を育て、そして3人ともを大学へ行かせた。こういう話は移民の場合、話が短縮されてしまってきちんと伝わらないわ。誰と話しているかにもよるけれど、両親は働き者だって話になって、それから侵略の話になって、他の誰かがひどいことをいう。でも、どちらの特徴の説明の場合でも、彼らのことを、私たちと同じようにユーモアのセンスがあって、感情のある3次元の人間だって認識する視点が欠けているの。 ユーモアのセンスのある移民の物語っていうのはまだ一度も私は見たことがない。このことはいつもとても重要な問題で、これが『ダウンサイズ』がとても新鮮に感じる理由なの。普通なら重い問題があって、潜在的に重くて暗いキャラクターが使われる。でも、アレクサンダーとジムの物語はどういうわけか、それを明るく保つ方法を見つけているの。多くの人は誰かの講義を受けたり、話しかけられて話を聞かされたりするのが嫌いだったり、そうしたことに拒否反応が出たりする。けれど、薬を飲んだりせずとも人々がこうした問題について考えることのできる、この映画はとても良いものだと思う。
チャウ:映画製作、プロダクションの勉強をしていて、将来は撮る側として働こうと考えていたわ。大学にいたときには本当に多くのインターンシップもした。レンタル機材の会社でレンズを掃除したり、パブリックアクセス・ショーを主宰する女性の元で働いたり、キャスティング・オフィスで働いたり、ドキュメンター映画制作をしたりもした。大学を卒業して最初の仕事は公共のテレビの仕事だった。それで、非営利の方か、インディー映画の分野で働こうと考えていた。役者になろうとなんて全く考えていなかったわ。
チャウ:プロダクションの授業をとったときに大学の同級生の学生映画に出演することになった。でもそこで私がうまく演技できていたとは決して言えない。でもその時は「俳優になる」って考えていたわ。HBOのテレビドラマでデヴィッド・シモンの『Treme』(11-13年)に出演してからも、プロダクションの仕事に応募し続けていたわ。本当に2年ぐらい前まで自分のことを俳優だとは言っていなかったの。まだ本当にちゃんと試されていないし『インヒアレント・ヴァイス』(14年)に出演してからも自分のことを俳優と呼ぶ権利なんてないと思っていた。
チャウ:監督になりたいかどうかはわからない。なぜなら映画監督の仕事を尊敬しているから。私に監督の才能があるとは思わないしね(笑)。今のところ、ただ俳優をやっていたいと考えている。プロデュースやライティングが私の将来になると思う。そもそもクリエイティブ・ライティングを専攻したくて大学に行くはずだったのだけれど、結局映画を選んだの。どちらも物語を伝えるものだし、その道に進んでいたら仕事が見つかるかもしれない。そう思って選んだのだけれど、それは間違いだった。映画学校の後に仕事を見つけるのは本当に大変。
チャウ:マットは『ダウンサイズ』の仕事の始まる寸前まで『ジェイソン・ボーン』(16年)の仕事をしていて、撮影の初日まで直接会うことはなかったの。彼は温かくて愛らしい人だけれど、それだけでなくてプロフェショナルな人。この業界で長く働いているし、一緒に働くことが他の人にとって大きなプレッシャーになりえるってことが分かっていて、自分の方からオープンに接してくれるの。同じシーンで共演する私だけじゃなくて、シーンの途中で彼に話しかけたい他の俳優や、撮影の後に一緒に写真を撮って欲しい人にまで。共演の俳優陣と監督に関して言えば、私は本当に幸運だった。なぜならアレクサンダーは他の人と接するのがとても好きだし、本当に夢が仕事になったような、素晴らしい現場だった。家に帰りたくなくて、もう一杯コーヒーを飲むだけ長く入れたらいいなって考えていたわ。自分が出演していないシーンでも共演する俳優と一緒に時間を過ごした。今はアレクサンダーと私で映画制作とプレス宣伝をする以外のところで時間を一緒に過ごしているわ。
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