1949年6月22日生まれ、アメリカ合衆国のニュージャージー州出身。イェール大学演劇大学院に学び、舞台俳優としてキャリアをスタートさせる。ロバート・デ・ニーロと共演した『ディア・ハンター』(78年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされる。『クレイマー、クレイマーで』(79年)アカデミー助演女優賞を、『ソフィーの選択』(82年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞。『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』でも主演女優賞を受賞しており、これまでアカデミー賞に21回ノミネートされ、3度の受賞がある。主な出演作は『恋におちて』(84年)、『マイ・ルーム』(97年)、『めぐりあう時間たち』(02年)、『プラダを着た悪魔』(06年)、『マンマ・ミーア!』(08年)、『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(16年)など。
アメリカ政府が30年間もの間ひた隠しにしていた最高機密文書、ペンタゴン・ペーパーズ。ベトナム戦争についての“不都合な真実”が記されたこの文書をめぐる攻防を描いた『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』が、3月30日より公開される。
時のニクソン大統領がありとあらゆる手段で記事を差し止めようとするなか、ワシントン・ポストのトップ、キャサリン・グラハムと編集主幹ベン・ブラッドリーが報道の自由と真実のために戦う姿が感動を呼ぶ。
監督はスティーヴン・スピルバーグ。グラハムをメリル・ストリープが、ブラッドリーをトム・ハンクスが演じているのも話題だ。本作で21回目のアカデミー賞にノミネートされたストリープに、映画の見どころなどを語ってもらった。
ストリープ:何と言えばいいかしら。優雅な女性で、良家の出身、話し方が上品、臆病で、脅威的な面もあった。そして、とても親切な人だった。
ストリープ:そうね。彼女を知る方法は、彼女自身の言葉そのものだった。彼女は79歳の頃に、やっと自伝を完成させたの。書くのに16年もかかった。彼女の家族は“完成は無理”と冗談を言ったそう。でも出版されたし、ピューリッツァー賞を受賞した。700ページ以上におよぶ、米国が劇的に変化した当時を、とても面白い方法で複層的に分析した、すばらしい本よ。彼女は、あの時代を生き抜いた。そして、個人的な変化や歴史的な変化を、実際に経験したの。私にとって、すごく役に立った資料だった。その本を読むだけで、他のリサーチをする時間は、ほとんどなかったわ。
ストリープ:とても楽しかったわ。彼が映画作りの達人だということはずっと前から知っていた。彼には、きっと独自の映画の撮り方があると思っていたの。つまり、現場では、彼の言うことが絶対で、周りの人が皆、彼に従うという形で撮影が進むだろうとね。でも、まったく違ったわ。彼は常に生き生きとしていた。即興的なやり方だったし、彼は周りの人々の意見を喜んで受け入れた。撮影はすぐに始まり、すぐに終わったわ。彼が脚本に目を通してから、映画が完成するまでに9ヵ月しかかからないなんて、ハリウッドでは、ほぼ不可能なことよ。私が最も感銘を受けたのは、彼がオープンだったこと。新人監督のように、皆の考えを受け入れた。だから、撮影はとても楽しかったの。
ストリープ:映画の中でも他の場所でも、彼の性格は常に変わらないわ。彼は、ハリウッドで最も優しい男として有名なの。そして仕事に対して常に一生懸命よ。すごく賢いし。私は「大統領に立候補してよ」と、彼によく言ってるの。とても博識だしね。彼との仕事は楽しいわ。親しみやすさも彼の性格の特長だけど、私が最も感心するのは、彼の仕事に対する姿勢よ。とても真面目で、すごいと思うわ。私以上に仕事熱心な人よ。私はリハーサルがあるものだと思い込んでいたから、準備不足のまま撮影に入ったんだけど、トムは準備万端で、常に完璧な状態だったわ。彼に追いつくのは、大変だったわね。
ストリープ:実在した人物を演じる責任は、すごく重いのよ。これまで、私は何度も経験してきたし、人のお墓を踏むという感覚は、私自身、よく分かっている。故人を愛している人々に、いやな思いをさせたくないと常に思っている。キャサリン・グラハムの家族も健在よ。役作りの一環として、面白い経験をしたわ。彼女の成人した2人の子どもと会ったの。その子どもたちの意見と、キャサリン本人の意見が、大きく異なっていることが印象深かった。私も母親として、はっとさせられたわ。子どもといえども違う人間だから、意見が異なるのは当然だとね。私は、演技のために、彼女の自伝を自由に活用しようと考えた。洞察力に満ちていた本だったし、その本の中で、いろんなことが明らかにされていた。彼女自身の認識を頼りに、キャサリンを演じようと思ったの。
ストリープ:驚くことばかりだったわ。本当にね。私がキャサリンに対して抱いているイメージは、おそらく他の人が抱くイメージと同じだと思う。つまり、背が高くて、強気な女性よ。それに、経験豊富で優雅。そんな大企業経営者だと思っていた。でも、彼女には臆病な側面があったの。常に何かに脅えるような性格だった。何かに脅える必要はなかったはずなのに、時代が彼女を、そんな性格にしたのだと思う。男性ばかりに囲まれて、つらかったのね。私はそれを知って、悲しくなったわ。彼女は自伝の中で、そんな気持ちを正直に明かしているの。彼女はずっと自分を責めていたし、多くの女性も、同じ立場なら、そうしていたと思うわ。
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