『レディ・プレイヤー1』タイ・シェリダン×オリヴィア・クック インタビュー

僕たちのヒーロー! 期待の新星が語る巨匠スピルバーグの魅力とは?

#オリヴィア・クック#タイ・シェリダン

スピルバーグは史上最大の映画オタク(タイ・シェリダン)

スティーヴン・スピルバーグ監督が2045年という近未来を舞台に、現代よりさらに格差の広がった現実世界と理想の人生を楽しめる仮想現実(VR)の世界「OASIS(オアシス)」を行き来する若者たちの冒険を描いた『レディ・プレイヤー1』。アニメやゲーム、音楽など80年代のポップカルチャーも数多く登場する同作の主役を演じたタイ・シェリダン、ヒロイン役のオリヴィア・クックに話を聞いた。

──リアルの世界とヴァーチャルな世界の両方を行き来する、非常に特徴的な構造になっています。演じてみて、どんなふうに感じたでしょうか?

シェリダン:この作品の最も大きなチャレンジの1つは、一方に本物の世界があり、ヴァーチャルな世界がある。その2つをいかにシームレスな形で行ったり来たりするのか、それをやりながらストーリーを語っていくというのが一番大きな課題だったと思う。

クック:私は視覚効果の美しさに圧倒されたわ。撮影で演じていた場所は白い空間で、原始的なヴィジュアルしかなかった。でも完成作を見たら、本当にびっくり。ぶっ飛んだわ(笑)。

──確かに2つの世界の描き方はシームレスですが、演じるのは本人とアバターという2つの異なる人格ですね。
タイ・シェリダン

シェリダン:特に僕の演じたキャラクターはオリヴィアのキャラクターに較べて、アバターとの差が大きかったと思う。他のキャラクターはまずVRの世界「OASIS(オアシス)」のアバターが先に登場するけど、僕だけは現実世界のウェイドが先だった。ウェイドのアバターであるパーシヴァルは、オアシス内ではリアルな世界にいる時よりずっと自信がある。その差に気をつけながら、キャラクターにアプローチするのは重要なことだった。モーション・キャプチャーで演じるアバターのシーンを先に全部撮った後から、実写シーンを撮ったので、その違いを意識ながら演じた。

クック:ウェイドは……じゃなくて(笑)、タイは本当に異なる2つのキャラクターを演じなければならなかったけど、私の場合は2つとも比較的近かった。私が素晴らしいと思ったのは、キャラクター同士がVRじゃなくてリアルな世界で初めて出会った時だと思う。そこで互いの欠点だったり、いろいろなものが見えてくる。演じる立場としても、それが良かったと思う。モーション・キャプチャーで演じる時は、衣裳もなければメイクもしていなかったし、いわば抑制のない状態だったから、アバターになった時のように偽りの自信がついているから。

──日本にはヴァーチャル・ユーチューバーという存在があります。VRのキャラクターとして何かを表現する人たちですが、これは本作の主題にとてもよく似ています。

シェリダン:アバターになってストーリーを語り、自分の声をアバターとして世界に発信していくことだね。まさに今のデジタル・プラットフォーム、ソーシャルメディアがある現実社会ととてもよく似ているところはあると思う。『レディ・プレイヤー1』に出て来るオアシスは、それを過度に表現したバージョンだと思う。

オリヴィア・クック

──演じるという行為もヴァーチャルのキャラクターになることに近いと思いませんか?

クック:私もまさにそれを言おうと思ってたの。アバターのようにメディアを使ってストーリーを語っていくことによって、自分自身からは離れていく……それが私たちのしていること。演じるというのは、ある意味で常に自分自身から逃げて、様々な人生を生きて行くことだと思う。

──劇中には80年代のポップカルチャーが数え切れないほど出て来ます。お2人が生まれる前の時代ですが、いろいろリサーチしましたか?

クック:タイも私も、脚本を読んだ時点で「80年代ってこんな感じかな?」と大体は理解していたと思う。でも全然知らないものもたくさんあったわ。本編からはカットされたけど、タイと私が80年代のお菓子のCMの歌を歌うシーンがあったの。まったく聞いたことがなかったから、YouTubeで検索しまくったわね。
 アーネスト・クラインの原作(「ゲームウォーズ」SB文庫)は1ページに20くらいの引用があって、私自身は聞いたこともないような80年代の知識を得るには、彼の本を読むのが一番役に立った。

シェリダン:80年代のエキスパートだと自負する人にとっても、原作は80年代のポップカルチャーをさらに学ぶ特訓コースみたいな本だと思う。

──80年代という時代にどんな印象を持ちました?

シェリダン:僕自身が抱くイメージはいい方向に変わった。

クック:楽しそうよね。

シェリダン:そうだね。ごく活発でエネルギー満ちている。スティーヴンは80年代について、アナログからデジタルに移行していく時期だったとも話してくれた。比較的平和な時代だったから、政治よりエンターテインメント、音楽やファッションといったものの方に影響力があった。

クック:祝祭の時代だったんだと思うわ。

『レディ・プレイヤー1』
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──それにしても、今回はスピルバーグという偉大な監督の下、超大作に出演するプレッシャーや緊張もあったと思いますが、撮影現場はどんな感じでしたか?

シェリダン:僕にとって本当に素晴らしい体験だった。子どもの頃からの僕のヒーローの……

クック:私のヒーローでもある(笑)。

シェリダン:そうだね(笑)。ヒーローである監督の作品に出演できたことも、業界で尊敬されている人……オリヴィア・クックのことだからね(笑)、そんな人と共演できて最高だった。
 僕は映画作りそのものにすごく興味があるんだ。特に技術的な側面に普段から興味を持っている。『レディ・プレイヤー1』は既存の映画のレベルをさらに押し上げる位置づけの作品だと思う。それを作っていく現場にいて、実際に経験するのは本当にエキサイティングだった。友だちにもいつも言ってるんだけど、今までいろいろな映画に出演したけど、間違いなく、今回はどの作品よりも学ぶことが多かった。モーション・キャプチャーでの撮影も、35ミリフィルムの撮影も、本当に多くを学べた素晴らしい経験だった。

クック:あれほどの大規模なセットに身を置き、タイも言っているように子どもの頃からヒーローだった人と仕事をすることに、とても謙虚な気持ちになったわ。同時に大きなインスピレーションを受けた。彼だけじゃなく、映画界の各分野で最高の腕を持つ人たちとの仕事でもあった。みんな信じられないくらい才能があって、同時に人としても素晴らしい。スティーヴンは彼らとチームを作って、何度も一緒に作品を作ってきたから、まるで、うまく油が注された機械みたいに機能する。彼らは映画に対して、スティーヴンに対して情熱がある。その情熱は同じ場にいるだけで伝染する。私たち自身もそういう気持ちになるのよ。

──スピルバーグ監督はどういう人ですか?

シェリダン:とても寛大で、

クック:遊び心がある。

シェリダン:若々しくて、忍耐力があって。

クック:すごくワクワクしてる人。

シェリダン:熱い人だよね。で、史上最大の映画オタク(笑)。

(text:冨永由紀/photo:小川拓洋)

オリヴィア・クック
オリヴィア・クック
Olivia Cooke

1993年12月27日生まれ、イギリスのグレーターマンチェスター州出身。子どもの頃から演技を学び、14歳頃からCMなどに出演。2012年からTVドラマに出演、2013年から始まった『ベイツ・モーテル』(13-15年)ではメインキャラクターの1人、エマ・ディコーディを演じた。映画出演はほかに、サンダンス映画祭で審査員大賞と観客賞を受賞した『ぼくとアールと彼女のさよなら』(15年/未)、『切り裂きゴーレム』(16年)など。9月にアメリカで主演映画『Life Itself』が公開予定。Amazonプライム・ビデオ放送の新シリーズ『Vanity Fair(原題)』の撮影を終えたばかり。

タイ・シェリダン
タイ・シェリダン
Tye Sheridan

1996年11月11日生まれ、アメリカ合衆国のテキサス州出身。2011年、テレンス・マリック監督のカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作『ツリー・オブ・ライフ』でデビュー。翌年、ジェフ・ニコルズ監督、マシュー・マコノヒー主演の『MUD –マッド–』に出演。ジョン・トラヴォルタ主演の『THE FORGER 天才贋作画家 最後のミッション』(15年)、シャーリーズ・セロン製作・主演の『ダーク・プレイス』(15年)などを経て、『X-MEN: アポカリプス』(16年)でスコット・サマーズ/サイクロップスを演じた。全米で11月公開予定の『X-MEN: ダーク・フェニックス』(18年)にも同役で出演している。