『ミッドナイト・サン〜タイヨウのうた〜』パトリック・シュワルツェネッガー インタビュー

シュワ二世が映画初主演! 素顔は自立心旺盛で謙虚な24歳

#パトリック・シュワルツェネッガー

一生、ひとつの仕事だけに限定する必要はない。異なる分野での挑戦も大切

2006年の日本映画『タイヨウのうた』をハリウッドでリメイクした『ミッドナイト・サン〜タイヨウのうた〜』。XP(色素性乾皮症)という難病で、太陽の光を浴びることができず夜しか外出できない17歳のケイティが、怪我で水泳選手としての夢に挫折したチャーリー知り合って初めての恋を経験する物語で、パトリック・シュワルツェネッガーはベラ・ソーン演じるヒロインの相手役を務めている。

苗字から明らかなように、父親はアーノルド・シュワルツェネッガー。母親のマリア・シュライヴァーも著名なジャーナリストという二世セレブの24歳だ。家族にも容姿に恵まれ、何不自由なく育った青年らしい伸びやかさがある。だが、それより印象的だったのは、感謝しつつも親の七光りに頼ろうとしない自立心と、新進俳優としての謙虚な心構えだった。

──この役のためにオーディションを受けたと聞いて驚きました。あなたのように両親が著名な場合、特にお父さんが映画スターであれば、そんな必要はないように思えるのですが。

パトリック・シュワルツェネッガー

シュワルツェネッガー:いや、それが当たり前なんです。受けなければならない。アメリカでは自分自身で大スターにならない限り、オーディションなしということはあり得ないです。この映画でケイティの父親を演じたロブ・リグルは『ハングオーバー』とかに出ている有名コメディアンですが、彼もオーディションを受けました。だから、まだ駆け出しの僕はオーディションを受けに行かなくちゃいけない立場で、しかも99パーセントの確率で落とされてます(笑)。

──監督によると、あなたはまるでアスリートのように万全の準備でオーディションに臨んだとか。

シュワルツェネッガー:人によって、やり方はいろいろですが、僕が演技について学んだのは役柄について細かく嚙み砕き、リサーチを徹底することで、役についての5つのW(who、what、where、when、why)を理解するという技術でした。だから、自分でノートを作っていろいろなアイディアを書き込んでいく方法を取りました。

パトリック・シュワルツェネッガー

──アスリートといえば、今回演じたのは水泳選手の役でしたが、そのためのトレーニングはどんなことをしましたか? お父さんにアドバイスを求めたりもしたんでしょうか?

シュワルツェネッガー:準備としてしたのは、単純に泳ぐことだけ。USC(南カリフォルニア大学)のコーチの特訓を受けて週に何時間もプールで泳ぎました。泳げば泳ぐだけ、肩幅は広くなって、ウエストは締まった(笑)。父はボディビルダーでウエイトリフティングをやっていたので、ちょっと体づくりの方法が違うんです。

──撮影は3年前だったそうですが、今改めて作品を見て、どう思いますか?

シュワルツェネッガー:この作品を本当に誇りに思っているので、やっと公開されてとてもうれしいです。撮影当時、僕はまだ学生だったので、大学に通いながらの撮影でした。撮影地のヴァンクーヴァー(カナダ)とロサンゼルスを飛行機で何往復もしながら、中間試験もあって……。大変でしたが、なんとか乗り切って映画は完成し、こうして日本に作品を持ってこられて。夢のようです。

──あなたは、ピザ・レストラン経営などビジネスマンとしての顔も持っています。俳優としても忙しくなってきましたが、今後も二足のわらじを履き続けますか?
パトリック・シュワルツェネッガー

シュワルツェネッガー:異なる仕事を並行して続けていきたいです。父もそうしてきたし。ボディビルをやり、演じ、不動産業をやって政治家にもなった。今はチャリティ活動に熱心です。1つのことに集中するのも大切だけど、いろいろなゴールがあって、異なる世界、分野でやりたいことに挑戦するべきだとも思う。一生ひとつの仕事だけに、と限定する必要はないと思います。ガンジーやJFK、ミケランジェロだって、一生のうちにいろいろなことをした。やり遂げようという情熱があれば、誰だって様々なことに挑戦できると思います。

──否定的な意見に耳を傾けるな、とお父さんに言われたそうですね。

シュワルツェネッガー:絶対にあきらめるな(Never give up)とも教わりました。ネガティブなことを言う人は必ずいるけど、それは嫉妬心から出る言葉だから、と。自分の目指すものを決めたら、毎日それをイメージしながら、ゴールに近づけるようにしています。僕はそういう面で日本文化を尊いと思っています。自分の仕事に打ち込んでいる。なりたい自分になるためには、一所懸命に努力しなければならないと思っています。

──日本にはプライベートでも訪れたことがあるそうですが、今回行ってみたいところは? お気に入りの場所はありますか?
『ミッドナイト・サン ~タイヨウのうた~』撮影中の様子

シュワルツェネッガー:ジロー(「すきやばし次郎」)ですね。前回来た時に行ったんです。すごく美味しかった。寿司が大好きなんです。魚も好きなので魚河岸にも行きました。今回は仕事なので、あまり行けてないけど、お昼に和牛を食べました。日本の食事は美味しくて大好きです。緑茶も。

──お父さんは『ミッドナイト・サン〜タイヨウのうた〜』をご覧になりましたか?

シュワルツェネッガー:家族全員が見てくれました。みんな、とても喜んでくれました。なにしろ公開まで3年もかかったので、ちょっと心配になっていたみたいでしたから。僕が自分の夢を追いかけて歩み始めたことを喜んでくれています。それが両親、家族が僕に一番望んでいることなので。

(text:冨永/photo:小川拓洋)

パトリック・シュワルツェネッガー
パトリック・シュワルツェネッガー
Patrick Schwarzenegger

1993年9月18日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス出身。父は俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー、母はジャーナリストでケネディ一族のジャーナリスト、マリア・シュライヴァー。2006年、『がんばれ!ベンチウォーマーズ』に小さな役で出演して映画デビュー。ハイスクール在学中から両親のサポートを受けて、環境保護のためのProject360を立ち上げたり、大学在学中にピザ・レストランをチェーン展開させるなど、俳優以外の活動にも励み、2011年からはモデルとしても活躍した。南カリフォルニア大学(USC)在学中から俳優業も再開、『ハッピーエンドが描けるまで』(12年)、『ゾンビーワールドへようこそ』(15年)、『マックス&エリー 15歳、ニューヨークへ行く!』(16年)などに出演している。