『ボストン ストロング〜ダメな僕だから英雄になれた〜』ジェイク・ギレンホール インタビュー

約束も守れないダメ男への共感語る

#ジェイク・ギレンホール

ユーモアのセンスは、どん底の彼を救った

仕事では言い訳ばかり、面倒は同僚に押しつけて約束も守れない青年。どこにでもいそうな未熟な男が、とある事件によりヒーローへと賛美される存在に……。

2013年に起きたボストンマラソン爆弾テロで両足を失うも、犯人の目撃者となったことなどから、悲劇に屈しない強さの象徴となってしまった主人公の光と影を描いた『ボストン ストロング〜ダメな僕だから英雄になれた〜』が、先週末から公開された。

ヒーローとして称えられる一方、本当の自分とのギャップに苦しむ主人公を演じたのは、演技派として名高いジェイク・ギレンホール。本作の製作も兼務した彼に、映画について語ってもらった。

──実在の人物、ジェフ。ボーマンを演じていますが、本人にも会ったそうですね。

ジェフ。ボーマン(左)とジェイク・ギレンホール(右)

ギレンホール:この出来事を最初に聞いて、ジェフの写真を見たのは、もちろんニュースでだった。僕らの人生が交差するとは思わなかったよ。僕はジェフと会って話す時間をたくさんとった。彼にはとても少年のようなところがあるから、すぐに好きになった。僕たちみんながね。どうしてジェフが好きなのかずっと話せるよ。彼は考えられないほどの生存能力と謙虚さを持っている。予期せぬことが起きても優雅なんだ。カリスマがあるだけじゃなくて、とても愛情にあふれていて、ユーモアのセンスもある。同時に奥底に深い闇もあるね。彼の肉体的適応力に、ジェフという人間を知るための大きな手掛かりを見つけた。あと特にユーモアのセンスは、どん底の彼を救ったのだと思う。(ボーマン一家は)信じられないくらい強い結束力がある人々だ。ジェフは1日たりとも家族に会ったり話したりしないで過ごすことはない。

──ボストンでロケをしたんですよね。

ギレンホール:ボストンで撮影を行うことが重要だったんだ。他の場所は考えられなかった。できることは全てやったし、ボストンが素晴らしい場所で、ボストンの人々が素晴らしい心の持ち主だと、世界中に伝わればいいと思う。

『ボストン ストロング〜ダメな僕だから英雄になれた〜』
(C)2017StrongerFilmHoldings,LLC. AllRightsReserved. MotionPictureArtwork©2018LionsGateEntertainmentInc. AllRightsReserved.

──『ブロークバック・マウンテン』では同性愛者、『サウスポー』では不屈のボクサー、『ナイトクローラー』では社会病質者を演じるなど多くの難役を演じてきましたが、今回の役はいかがでしたか?

ギレンホール:ボストンの人間、特に男は気持ちをあまり言わない。だから気持ちを話させるのではなく、彼のペースや様々な問題に対するやり方から感情の手掛かりを見つけなければならなかった。
 演技の話をするときに、難しいというときに「大変」という言葉を使うのは好きではないけれど、今回の役は人生で一番変革的(斬新)だった。仕事を通じて周りの世界を学ぶことが大好きだし、それが役者の一番の醍醐味だけど、彼のストーリーを知って、彼の友人になって……ジェフを知っているみんなが言うように、彼自身の想い(spirit)というものがあって、その想いは周囲を動かすほど力のあるもので、しかし彼自身は恐らくそれをいつも快く思っているわけではないと思うが、そういった部分もこの映画で描かれる内容の一部になっている。当然、彼は僕に対してもその部分を見せてくれた。だから今回の旅は、これまでの僕の役者人生の中でも一番素晴らしい旅になったと思ってるよ。

──本作の製作に関わって、何か学んだことなどはありますか?
『ボストン ストロング〜ダメな僕だから英雄になれた〜』
(C)2017StrongerFilmHoldings,LLC. AllRightsReserved. MotionPictureArtwork©2018LionsGateEntertainmentInc. AllRightsReserved.

ギレンホール:僕が気付いたのは、みんな自分のキャリアの中で伝えたいと思うストーリーがいくつかあって、観客から一人ひとり特有の感想を引き出したりすることだ。昔関わった作品の一つ『ブロークバック・マウンテン』で、人々がストーリーを聞かせてくれた。僕のところに来て、いろんなストーリーを、彼らが乗り越えてきたこと、映画が彼らに気付かせたことを。プレミアの前に何度も行った試写の後や予告ができたときに、人々のそれぞれ特有のストーリーを聞いた。一人ひとりが何かに苦しんでる、もしくは誰か愛する人が何かにもがいていると知ること、ジェフのような人やそのストーリーが僕たちに希望を与えてくれること、(その希望は例えば)次の日も生きてゆけるとか、きっと大丈夫とか、もしくは経験からきっと強くなれる、だったり、それが僕がこの映画を通して学んだことで、今でも毎日学んでいることだよ。

──本作で一番伝えたかったことは何ですか?

ギレンホール:ジェフ・ボーマンの物語を聞いた人はまず、このテロ事件の特殊な点に気づくはずだ。でもこの映画はそれ以上にもっと大切なことを伝えようとしている。困難な状況をどのように克服していくかについて描いた映画だ。絶望的な環境の中でも、僕たちは乗り越えることができる。ジェフがそれを証明してくれている。それがこの映画のテーマだよ。

ジェイク・ギレンホール
ジェイク・ギレンホール
Jake Gyllenhaal

1980年12月19日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。映画監督の父、プロデューサー兼脚本家の下に生まれ、姉は女優のマギー・ギレンホールという芸能一家。11歳の時に『シティ・スリッカーズ』(91年)でキャリアをスタート。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞したアン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』(05)で英国アカデミー賞助演男優賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネート。『ナイトクローラー』(14年)、『ノクターナル・アニマルズ』(16)などでも高い評価を得ている。その他、『遠い空の向こうに』(99年)、『ムーンライト・マイル』(02)、『グッド・ガール』(02)、『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』(05)、『ゾディアック』(06)、『マイ・ブラザー』(09)、『サウスポー』(15)、『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(15)、『ライフ』(17)などに出演。製作会社ナイン・ストーリーズを設立し、製作者としても活躍。