1975年1月28日生まれ、千葉県出身。数々の賞を受賞し、5年連続受賞により声優アワードでは殿堂入りを果たす人気声優。『進撃の巨人』のリヴァイ・アッカーマン役をはじめ、『夏目友人帳』シリーズの夏目貴志役、『物語』シリーズの阿良々木暦役、『黒子のバスケ』の赤司征十郎役、『機動戦士ガンダム00』のティエリア・アーデ役など、多数の人気作品で主要キャラクターを担当する。また、ミニアルバム「ハレロク」はオリコンで男性声優ソロアルバムでは初のトップ3入りを果たし、歌手としても活躍している。
不朽の名作アニメーション『宇宙戦艦ヤマト』 をリメイク、2012年から14年に渡り、劇場上映やテレビ放送などを含めて大きな支持を得た『宇宙戦艦ヤマト2199』。5月25日からは、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第五章「煉獄篇」が全国で期間限定上映中だ。
新たな局面を迎えたヤマトの物語について羽原信義監督とクラウス・キーマンの声をつとめた神谷浩史が語った。
神谷:相変わらず何を考えているのか分からないガミラス人の男がヤマトに乗っている……それ以上のことは第四章までご覧になっているみなさんも感じ取ることができないと思いますし、その先を感じ取らせてはいけないなと僕は思っています。キーマンの人物像については羽原(信義)監督と福井(晴敏)さんから話を伺っていますが、それが活かされてくるのは第五章以降なので、第四章までだと言えるのは……ガミラス人の怪しい男ということくらいですね(笑)。
監督:シナリオを読んだ段階から僕の中でキーマンのセリフは神谷(浩史)さんの声で聞こえていたんですけど、収録の時には僕が想像していた以上のキーマンになっていたのでとても満足しています。
神谷:嬉しいです、役者冥利に尽きますね。仕事での繋がりは一期一会と言いますけど、(作品が終わってすぐに別れてしまうのは)嫌だなと常々思っているので(笑)、すごく好きなスタッフの方々と再び一緒に仕事ができる喜びはとても大きいです。『ブレイク ブレイド』(2010年〜2011年に上映された劇場アニメ)という作品のオーディションで僕の声と芝居や人となりを羽原監督に知っていただき、その作品で役を頂くこともできました。そういった今までの関係値を踏まえた上で、今回のキーマンという役を任せていただけたと感じているので、1作品だけ1クールだけのサイクルが短い付き合いとは違った情熱の注ぎ方ができると思っています。過去に演じたあの役があったからこの役に辿り着けているんだというありがたみは演じている役に情熱や愛情を傾ける理由の一つになるので、より強い覚悟を持って現場に参加することができますし、その信頼関係が作品を育むことに繋がればいいなと。アニメーションは特に「また同じキャスティングかよ……」って言われがちな世界ですけど、何度も組んでいるスタッフとキャストだからこそできる何かが絶対にあると僕は思います。今回の『ヤマト』ではそれを表現できたらいいなと思っています。
監督:そう言っていただけると本当にありがたいですし、嬉しいですね。スケジュール的には相当厳しかったそうなんですけど、「神谷さんしかいないのでお願いします!」と無理なお願いをさせていただきまして。その結果はみなさんがご覧の通り、素晴らしいものになりました。
神谷:羽原監督が手掛ける『ヤマト』だからということで事務所もスケジュールを調整してくれた部分があるので、それもやっぱり信頼関係の表れですよね。
監督:基本的にはしません。ただ、絵がまだ上がっていない中でアフレコを行っているので(笑)、「距離感はこのくらいですよ」といった情報はお伝えしています。神谷さんのアフレコを見ていてビックリすることはいくつかありますね。何もお伝えしていないのにラフで描かれた細かい表情や息遣いの変化も全部拾ってくださり、勘が鋭い方だなと。未完成の絵を見てもきちんとキャラクターを感じ取れるところは、大きな信頼を置いています。
神谷:ヤマトに乗る時に古代に言い放った「乗せろ、いいから」ですね。こんな無茶苦茶な言葉はないですから(笑)。何かしらの野心を持っているガミラス人が地球人しか乗っていないヤマトに乗るにあたって、あまりにも説得力のないセリフだなとは思ったんですけど。ただ、そこにコイツを乗せなきゃいけない何かを感じさせる強さはありますよね。でも、みんな何であれで納得したんだろう? 古代は分かりますけど、真田さんは「ちょっと待て!」とか言いそうですけどね(笑)。
監督:あのセリフは「乗せろ」と「いいから」の間をどれくらいにするか編集の時にすごく悩みました。他で印象に残っているキーマンのセリフは、やはり「お仕置きだ」ですね。シナリオを読んだ段階から、ここのセリフはアップで抜きだなと思っていたんですけど、ヘルメットを被っていることをすっかり忘れていまして……。絵コンテの段階では確かヘルメットを描いていなかったんですけど、後から気付いてこれじゃ表情が見えないと焦り(笑)、ガラスを透けさせたりして何とか対処しました。
神谷:キーマンが戦闘機に乗って出撃していくのは意外でした。戦闘機は1人なので常に死と隣り合わせじゃないですか。そんな危険な環境に自ら身を置くというのは僕の中では衝撃で。死の危険があったとしても自らが単身で出撃した方が使命を達成できる確率が上がると考え、自分の腕を信じて出て行っている。相当な自信と使命への強い想いがあることが表れていますよね。結構出撃している印象があるんですけど、その度に「またコイツ行くんだ」と思いながら見ていましたね(笑)。
神谷:キーマンが負っている使命がどの程度のものなのかは計り兼ねていたんですけど、彼が存在する理由はそこにあると考えて、その強い使命感から取るいくつかの行動には納得していました。ただ、第五章でデスラーと出会うことによってキーマンがあんな風に変化するのは驚きでした。第四章までずっとフラットにきていた彼がここにきて急にブレ始める、そのブレ幅がどこまでいってどこに収束していくのか。第五章から先の展開もすごく楽しみにしています。
神谷:楽しいですよ。感情のブレがない人って楽なように見えて実際はしんどいんですよね。今までは抱えている想いが本当はあったとしても表現できないですし、それっぽいことを意味あり気に言っているだけのキャラクターになってしまうのは嫌だなと思っていたので、やっと考えていることと表情と出ている音が一致してくる感覚がありました。第五章を見て、改めて良い役をいただいたなと思いました。第十五話のアフレコが終わった時にすごく楽しかったのを鮮明に覚えています。デスラーが出てきて山寺(宏一)さんと掛け合いで芝居をしたんですけど、本当にスキルがあって芝居が上手な人とやると自分が行けなかったところまで到達できるんですよね。僕でも思いも寄らないキーマンが画面の中にいて、キーマンを演じられて本当に良かったなと思いました。
監督:第十五話のデスラーとキーマンのシーンは掛け合いが本当に凄くて、ブースにいるスタッフも息を飲んで見ていました。
神谷:第五章ではデスラーの過去が描かれますが、その微妙な年齢感を演じ分けていく山寺さんが本当に凄くて。スタジオ内で実際に聞いている時も凄いなと思っていたんですけど、マイクに乗ってスピーカーから出ている音が全然違うんですよ! 実際の映像を拝見したら、スピーカーに乗った時の効果的な音の使い分けを繊細にしていらっしゃることがよりハッキリと分かって、やっぱり山寺さんの技術は半端ないなと思いました。
監督:デスラーが少し若い頃のシーンを山寺さんが演じられるのはもちろん分かっていながら、僕らスタッフは台本と画面を見ているんですけど、「あれ、今誰が喋ったの?」と思わずスタジオ内を確認してしまうくらい自然に若い頃を演じられていました。本当に微妙な年齢差を完璧に演じ分けていらっしゃったので、「この人は声帯の太さが変えられるのかな?」と疑ってしまうほどでしたね(笑)。
神谷:これはブースの中に一緒にいたからこそよりその凄さを感じられた部分ではあるんですけど、あの体験は衝撃的でした。
監督:それと、第五章はゲストが豪華ですよ。
神谷:そうですね、デスラー家のメンバーは半端ないですね(笑)。
監督:キャスティングの要望はまず予算とかを考えずに出すんですけど、現場に行ったらみなさん本当にいらっしゃったので、『ヤマト』は凄いなと思いました(笑)。
神谷:エリートって感じがしますよね。
監督:デスラー家の人たちは、万が一スピンオフがあっても全然いけますね(笑)。この方たちをキープしておけばどんな物語が展開しても絶対大丈夫です!
神谷:羽原監督が仰っていたカメラアングルや細かい表現の違いといったこだわりは多分見ている側にとっては些細なことだと思うんですけど、それを実際に描いている人がいると考え出すと膨大な話になってきます。キーマンだって何人ものアニメーターによって描かれている訳で、総合芸術としてそれを一つの作品に集約させている羽原監督の苦労を思うと果てしない気持ちになってくるんですよね。今までは制作側のことを考えず割と自由にやってきたんですけど、最近はこの監督だったらきっとこういう絵にしてくれるはずだと思いながら演じることが多くなりました。羽原監督はそういう期待通りの絵を作ってくださる方なので、カットに含まれた意図を考えながらアニメーションを見ると物凄く深い楽しみ方ができると思いますし、そういうところから次の世代の羽原監督たちが生み出されていくんじゃないかなと思っていて(笑)。そういった目線で作品を見ていただけたら嬉しいです。
監督:アフレコの段階でまだ絵が完成していないという部分を利用しているところも実はありまして。演じている方に感情が乗って想定よりも大きな声になった場合はそちらの方が正解なので、その場合は口の開き具合を少し大きくするなど、逆に絵の方を描き直したりしています。これは絵ができていないからこそできる芸当ですよね(笑)。アニメーション作品は監督だけのものでは決してなくて、みんなで作っている感覚なんですけど、『ヤマト』では特にそれが顕著です。画面は制作スタッフで作っていますけど、フィルムとしては役者さんや音響さんを含めたみんなで高めているという印象が凄く強いですね。そう言った部分も含めて、ぜひ最後まで楽しんで見ていただければと思います。
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