『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』オマーラ・ポルトゥオンド インタビュー

偉大なる歌姫が語る「音楽こそ人生!」の思い

#オマーラ・ポルトゥオンド

音楽を聞くほうが、薬を飲むよりも体にいいことさえある

18年前に公開され、世界を、そして日本を沸かせた音楽ドキュメンタリー映画『ブエ ナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。その続編『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』が、7月20日より公開される。

世界的ギタリスト、ライ・クーダーの呼びかけで結集した、キューバの老ミュージシャンたちによるビックバンド“ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”だが、本作では、グループによるステージ活動に終止符を打つことを決めたメンバーたちのアディオス(さよなら)ツアーを通じて、それぞれの軌跡や死を見つめていく……。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブでヴォーカルをつとめるオマーラ・ポルトゥオンドに、本作について話を聞いた。

──キューバの芸術大使にして偉大なる歌姫のあなたですが、この映画が沢山の人に届くことに関して、どう感じますか?

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』
(C)2017 Broad Green Pictures LLC

オマーラ:私たちはキューバで生まれ、キューバの音楽と一緒に育ちました。ここが、キューバ人としての私たちの場所です。音楽に関わるアーティストとして、私はこの映画が世界中で公開されるべきだと思います。全世界で、キューバ音楽が大好きだという声を聞きますからね。

──あなたにとって“音楽”とは何ですか?

オマーラ:キューバ音楽界の最初のスター歌手で、有名な「南京豆売り」という曲を歌ったリタ・モンタネールというとても素晴らしい歌手がいます。彼女のことを知った時、私は子どもでした。でも、とにかく私は「南京豆売り」を聞いて、通りで南京豆を売る人の姿が目に浮かんできたのです。彼女は並外れた人物でした。子どものころから、私たちは素晴らしい宝を持っていると感じています。私たちには様々な美点がありますが、中でも音楽は重要で、とても価値があるものです。人々は皆、音楽を楽しみます。音楽を聞くほうが、薬を飲むよりも体にいいことさえあるんですよ。

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』
(C)2017 Broad Green Pictures LLC

──キューバの人々はとても力強く、たくましさを感じます。なぜなのでしょうか?

オマーラ:キューバ人にとって、音楽はとっても大切なもの。あなただって、毎日踊るでしょ。音楽は、生きること、人生そのものとも言えます。そう、キューバ人は音楽的なの。音楽は、我々に喜びや力を与え、元気や若さを感じさせてくれる。実際の年よりも若くね。

──『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』についてどう捉えていますか?

オマーラ:96年にブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブを始めた時と同様に、人々への尊敬と愛情をもって活動しています。今と同じ願いが将来も継承され、若者たちにもその可能性を追求して欲しい。キューバの音楽家やアーティストは、大きな愛をもって活動をしていて、我々が残していくものを人々に引き継いで欲しいと思っています。本作は、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』とはまた違ったやり方で私たちの思いを伝えていると思います。

オマーラ・ポルトゥオンド
オマーラ・ポルトゥオンド
Omara Portuondo

1930年10月29日生まれ、キューバのハバナ出身。10代の頃に有名なキャバレー・トロピカーナでダンサーとして活動を始める。歌手としても活動し、人気の女性四重唱コーラス・グループ、クアルテート・ダイーダのオリジナルメンバーでもある。59年に最初のソロ・アルバム「Magia Negra」を収録し、67年にはソロ活動を始める。ソロ・アルバム「Gracias」(08年)でラテン・グラミー賞を受賞。