1978年5月4日生まれ、高知県出身。テレビシリーズ『涼宮ハルヒの憂鬱』(06 -09年)で古泉一樹を演じて注目される。『黒執事』(08-14年)のセバスチャン・ミカエリス役、『ジョジョの奇妙な冒険』(14-18年)シリーズの空条承太郎役、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(18年)古代進役、など、多数の人気作品のメインキャラクターを演じている。
1970年代にテレビ放映され一世を風靡した伝説的アニメーション『宇宙戦艦ヤマト』。中でも、日本中を熱狂させた劇場版『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を、新たな解釈で現代に甦らせた『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が、現在放映中だ。
本作で、主人公・古代進の声を担当する小野大輔と、島大介の声を担当する鈴村健一に、作品の魅力を語ってもらった。
小野:『宇宙戦艦ヤマト2199』(以下『2199』)の時からずっと旅を続けている感覚で、やっと一つの終着点が見えてきました。このタイミングでTV放送が始まるのは意義深いことです。ヤマト世代の方々が、あの時の記憶を甦らせるかのように、本作『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下『2202』)に熱狂してくれています。TV 放送は、その熱狂が何なのかということを次の世代に伝えるためにあると思っています。クライマックスへの 盛り上がりと新たなヤマトファンへのアプローチを同時にできるのはとても意味があることだと思います。 『ヤマト』に関わる1人のクルーとして嬉しいです。
鈴村:昔の『ヤマト』は劇場でムーブメントが起きたアニメ映画の一つの金字塔なので、『ヤマト』を象徴する劇場で上映されていることはすごく意味があることだと思います。ただ、それと同時にTVでやっていた『ヤマト』を好きな方もたくさんいるので、TVで人気が出て劇場に繋がった以前の『ヤマト』と逆のことをやってい るのは面白いなと『2199』の時に思いました。今回も同じ形式なのかなと予想していたので、個人的には早く TV放送もやって欲しいなと思っていました(笑)。大きいムーブメントがTVでも劇場でも起きる相乗効果が面白いですからね。劇場上映もまだ途中と いう時にTV放送が始まるのはすごいことだなと思います。
小野:それにしても今回も思った以上に旅が長くなっているじゃないですか。『2199』の時も2クールを1年半 から2年くらいかけて録っているんですよね。/p>
鈴村:そんな収録の仕方をしているアニメはほとんどないよね。
小野:ないですね。だから、TVで毎週見られるようになるっていう感覚にどうしても慣れなくて(笑)。
鈴村:劇場で上映することを想定して収録していますし、ご覧いただいた方は分かると思いますが、絵も緻密に描かれています。劇場で上映されるクオリティのアニメがTVで見られるのは凄いことだと思いますね。TVシリーズを先にやって、そのご褒美的に劇場アニメ化っていうのが今までのお決まりのパターンだったので、僕が知る限りでは『2199』が始めたやり方です。その斬新な方法を見つけた『ヤマト』は、昔と変わらず常にパイオニアなんだろうなと思います。
小野:何も変わることはないですね。一貫して思っているのは、これから起こることのために感情を用意するのではなくて、この先に何があるのか分からないけど自分のできるベストを尽くすことです。それが役を演じ る心構えでもあり、古代のメンタリティにもリンクするんじゃないかなと思っています。偉大な作品なので先に情報を得たいという気持ちもあったんですけど、それは最小限に留めておいて、その場で生まれる熱量を大切にしました。あとはやっぱり古代は迷うので(笑)、自分もリアルに迷いながら決断をしていきたいなと思って、役にアプローチしていました。
鈴村:古代が物語の芯として絶対にブレてはいけない立場にいて、島はそれ以上により明確な意志を持って彼 を支える立ち位置にいます。『2199』よりも『2202』の方が引いている感じがしますね。『2199』の時は古代を支えているという面がもっと強く出ていたと思うんですけど、『2202』では古代が艦長代理としてより強くなっていったので、航海長の島はそのことを理解し尊重してあげているのかなと思います。そういう信頼関係がセリフのないところで描かれるので、僕の出番は少ないんですが(笑)。台本のト書きには古代に対する島のエールが書かれていて、絵はそれを目線だけで芝居させる“これぞアニメーションだ!”という演出になっているんですけど、僕はそこに全く関わることができないという一抹の寂しさはあります。ただ、その間を読んで出てくるセリフはきちんと重いセリフになっているし、島がよく言う「ワープ!」にも毎回違った意味があ ります。心に余裕がある時と大ピンチの時で違いますし、「古代が決断した末のワープ」みたいに色々な「ワ ープ!」があるので、絵や台本のト書きからヒントを得て一生懸命構築しています。島は喋らない分、演じるのは難しいですね。
小野:羽原(信義)監督の演出方法だと思うんですけど、ダイナミックに寄るところは寄りつつ、心理描写は 絵だけで表現することがあります。吉田(知弘)音響監督も極力アドリブを録らない方で、完成版を見ると必 要ないことが分かるんです。
鈴村:アニメーションはそうあるべきですよね。旧作『ヤマト』は子ども向けだったアニメで大人の心理描写を描いたことが評価された作品なので、影響を受けた羽原監督もそこを丁寧にやられているんだろうなと。その 分、島のセリフは少なくなっていますけど、ほぼほぼ毎週出ているのでTV放送をご覧頂きたいですね(笑)。
小野::改めて、「あっ、島いる!」ってTV放送を楽しみたいですよね(笑)。
鈴村:島をウォーリーみたいにするの、止めてもらっていい(笑)。
鈴村:神谷くんが入ってきたのはすごく劇的な変化で、現場の雰囲気が全く変わりました。
小野:キーマンは謎が多い役なので、福井さんや羽原監督とディスカッションを何度もして情報を得ていましたね。神谷さんは「これから何が起こるのか全部知りたい」と仰っていたので、僕のアプローチとは真逆。それが凄く新鮮でした。
鈴村:僕も小野くんと同じタイプで先のことを聞かず、脚本から読み解くのを大事にしています。ただ、その 流れでご飯を食べに行きましょうとなると、なぜか行くのは福井さんと羽原監督と神谷くんと僕の4人なんです(笑)。
小野:いいな〜っていつも思っています(笑)。
鈴村:小野くんは主役だから収録後もぶら下がりの取材などが入っていて行けないんですよ(笑)。
鈴村:島がヤマトに乗るか乗らないかを決断するシーンですね。『2199』で一緒に旅をした2人の想いがズレていることは大きかったと思います。結果として、古代の想いを汲んだ島はヤマトに乗艦することに なるんですけど、あのシーンは古代でなければ乗らないですね。普通に考えると社会人としてあるまじき行為なので(笑)。組織において守らなければいけない絶対的なルールがあるはずなんですけど、助けに行かなければいけないっていうことだけを信じて行く人たちには、“ちょっと待って、冷静になろうよ”って(笑)。確証もなければ、自分たちが何をできるのかの裏付けもない中で、島が冷静に反対意見を述べるのは正しいはずなんですよ。それでも理屈を超えてヤマトに乗る決断を下した島は、古代の情熱からくる行動力や、悩みに悩むけどやる時はやる有言実行な人間性を信じたんだと思います。それが地球連邦軍の方にまで浸透していないから彼は出世していませんけど(笑)、自分の手が届く範囲の人たちを幸せにする力を持っているんですよね。組織における立ち位置と、一個人が何かをやった時の人への影響の与え方を島は天秤に掛けて、大いなるヤマトを大事にした結果として船に乗ったんだろうなと思います。全て言葉にすると薄っぺらくなってしまうので、「あとは任せろ」とだけ言って乗り込む島はやっぱり男前だなと。あそこで2人の確かな絆を描いているので、その後はわざわざ強調するようなエピソードを盛り込まなくても、見ている人に伝わるようになっているのが今回の演出なんだなと僕は捉えています。
小野:島のような友だちが欲しいですね(笑)。言葉ではなく、お互いが相手のためを思って尽くしたり、「ヤマ ト」はそういう想いで繋がっている艦なんだと思います。ただ艦乗りの血が騒いだ部分もあるんじゃないかと思いますけど(笑)、お父さんと弟の描写が出てくるように、島の行動原理は家族だと思うんですよ。テレサに見せられるビジョンもそうですけど、本当に深い愛だなと思います。一方の古代は好きな女の事しか見ていないんですけど(笑)。ただ、旅立つ時はその愛する人を置き去りにしてでも行こうとしていますから。そこで島が「森くんのことはどうするんだ!」と古代を止めますけど、それを言ってくれる友達ってなかなかいな いと思います。あのシーンの島の古代への想い、あのセリフは凄くズシッときました。僕は自分の親友に同じことを言えるんだろうかと思いました。島はいい奴だなって……。
鈴村:今回の島は言葉数少ないですけど、いいことを言うよね(笑)。
小野:TV放送は週一の2クール、劇場での上映をその都度その都度楽しみにして待っていた人とはまた違ったテンポで見られるので、もしかしたら贅沢な見方かもしれないですね。
鈴村:劇場ではポップコーンくらいしか食べられなかったと思いますけど、家ではお酒とつまみを楽しみながら見られますからね(笑)。
鈴村:劇場に足を運べなかった方もたくさんいると思います。今回は、劇場で上映されたものと全く同じクオ リティのものがTVで見られますので、ぜひ楽しんでいただきたいです。『2199』を見ていない方が『2202』から見てもしっかりと理解できる作りになっています。その上で『2199』を見直すこともできますので、ぜひこの機会に『ヤマト』の世界にたっぷりと触れて頂ければと思います。
小野:皆さんお待たせいたしました。このクオリティのアニメ作品を毎週TVで見られる喜びは、感無量と言ってもいいですね。前作『2199』から続いてきた『2202』を今の時代にやっては、日本のTVアニメの金字塔である『宇宙戦艦ヤマト』を次の世代に語り継いでいくという使命を担っている からだと思っています。このTV放送をきっかけにして新たに「ヤマト」を知ってくださる方、また改めて「ヤ マト」を好きになってくれる方がたくさんいると思います。この艦に乗る人を増やしていって次の世代に「ヤ マト」が持っている普遍の魅力、愛を伝えていければと思っています。老若男女問わず家族皆さんで見て、「ヤ マト」の素晴らしさに気付いていただけたら嬉しいです。
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