1998年4月9日生まれ、アメリカのジョージア州出身。姉は女優のダコタ・ファニング。2歳8ヵ月のときにダコタの出演作『アイ・アム・サム』(01年)で、ダコタが演じた役の幼少期を演じスクリーンデビュー。ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いたソフィア・コッポラ監督作『SOMEWHWRE』(10年)に出演し注目を浴びる。『マレフィセント』(14年)でオーロラ姫役を演じ世界的人気を博す。また、『となりのトトロ』の英語吹き替え版の声優もつとめている(主人公の妹・メイ役)。その他の主な出演作は『SUPER8/スーパーエイト』(11年)、『Virginia/ヴァージニア』(11年)、『ネオン・デーモン』(16年)、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(17年)など。
神の領域に踏み込んでしまった若き科学者が創り出した異形の怪物──。ゴシック小説の金字塔「フランケンシュタイン」を生み出したメアリー・シェリーが、弱冠18歳で創出したこの物語の背景を描いた『メアリーの総て』が、12月15日より公開される。
家族に恵まれず、道ならぬ恋、貧困、愛する娘の死と次々に悲劇に見舞われ打ちのめされる主人公を演じたのはエル・ファニング。若き名女優に、作品の魅力を語ってもらった。
ファニング:脚本を渡されて「次の主演作でメアリー・シェリーを演じない?」と言われた時に、確か学校の英語の授業で彼女の名前を聞いたことはあるなと思って、ああ『フランケンシュタイン』を書いた人ね!って。でも私はメアリーがどんな人生を送ったのか詳しい事までは知らなかったの。その後、彼女の名前をネットで検索して、脚本を読んで、とにかく若い作家だったという事を知ったわ。彼女は「フランケンシュタイン」を弱冠18歳で書いたのよ!天と地がひっくり返るくらい、ものすごく衝撃的だった。
「フランケンシュタイン」は歴史の中でとてもアイコニックな作品で、そんな作品を手掛けたいろんな意味で時代のずっと先を行っていた女性メアリー・シェリーを演じられるということで、とても心惹かれたの。けれど、とてつもないプレッシャーを感じたし不安だったし、恐ろしかった。だってこれまで誰ひとりとして、メアリーの物語を語ってこなかったのよ。でもメアリーの人生は今の世の中だからこそ描かれるべきと思ったし、彼女の存在を人々に知ってもらわなければいけないと思ったし、これは私がやるべき、やりたい、と心の底から思ったの。
ファニング:メアリーは自由な精神を持っているの。彼女はパワフルで、感受性が豊か。常にアンテナを張り巡らせていて、あらゆることを必死でキャッチしようとする。作家になるために生まれたような人だと思う。細部にわたるまで物事を事細かにみようとする、好奇心旺盛で観察力が鋭い、特別な女の子なの。
ファニング:ロマンチックで幸福な恋の始まりから、やがてそれが崩れゆくところまで丁寧に描いているわ。パーシーは誰が誰を愛しても構わないし、誰と誰が寝てもいいという自由恋愛主義。メアリーも最初は彼の思想を受け入れていたけど、本当はパーシー以外だれも必要ないって悟り始めるの。そしてパーシー自身も心の底ではメアリーしかいらないって思っていると信じているんだと思う。
メアリーはパーシーによって哀しい思いも沢山するけれど、彼と一緒にいれば、この世とこの世が投げつけてくるあらゆるものに立ち向かうことができるの。彼らの愛、このイカれたラブストーリーがどんな運命にも立ち向かえる強さを持っていることをメアリーは分かっているのよ。
ファニング:どのシーンでそんな話になったのかは忘れてしまったんだけど、ハイファ監督に「あなたが女性で本当に良かった!」って言ったことがあるの。監督は、若い女性でいることの気持ちだったり、年を重ねた女性が経験する様々な困難を、とてもよく分かっている。
今回は編集もプロデューサーも女性だし制作陣は女性ばかり。この映画には沢山の強い女性キャラクターが登場するけど、その力強さは撮影中にも、女性の制作陣から感じられたのよ。メアリーの物語を描くにあたって、女性チームが制作を支えたということは、素晴らしく大切な要素だったと思う。
ファニング:この映画は少女の成長物語でもあるし、様々な経験の中から「自分の声」を見つけて、家族の影から外の世界へと踏み出していく女の子の物語でもあると思う。彼女の父ウィリアム・ゴドウィンは偉大な作家で、彼女の母親メアリ・ウルストンクラフトはフェミニズムの先駆者。メアリー・シェリーはそんな偉大な父と母の陰に隠れて生きていて、怪奇小説が好きな“村の鼻つまみ者”で、父にさえ「怪奇小説なんて馬鹿らしい」と言われていて。そんな女の子が、いまや誰もが知っているフランケンシュタインを生みだすまでの物語なのよ、最高でしょう!
ファニング:父親とのシーンはとても強烈なものがあったわ。
メアリーは母親を亡くし、親族は父親だけ。継母はいたけれどあまり……好きではなくて。だから彼女は父親に認められ、愛されたかった。でも、父親はメアリーが(文章を)書いていたノートブックを取り上げ、すべて読んで、「つまらない、ばかげてる」と言って捨ててしまったの。それは彼女にとって致命傷だった。人から尊敬され、優れた著作を残している、ヒーローのようなお父さんだと思っていたのに、そうではなかったことになるから。
父親からある種の承認を欲していた彼女にはつらかったでしょうね。彼女は父親を愛していたし、尊敬し、心酔していたから。
ファニング:「フランケンシュタイン」を書くシーンね。私は何も言わないし、ただ1人で部屋にいるだけなのだけど、小道具さんが紙と羽ペン、インクをくれて、私が手書きで「フランケンシュタイン」の抜粋を書いていて。全部私が書いているのよ! とても特別で大きなシーンだから緊張したわ。
彼女はこの時、自分の中に閉じこもっていた。ジュネーヴから帰って、少しずつヒントをつかみながら、自分の中に住む感情やストーリーを組み立てていったの。
彼女はそういうすべての感情を引き出す必要があった。父親が彼女を軽視し、遠くへ追いやったこと、赤ちゃんを失ったこと。彼女の経験した悲劇、彼女の中にあることの全てを外に注ぎだす必要があった。その結果、あのシーンではすべてが溢れ出すの。
彼女は食べることもせず、文字通りただそこにいて書いているだけ。彼女が書き終える時、それを見て言うの。「できた」って。ワクワクするわ!
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