1988年生まれ。東京都出身。04年に『機関車先生』で映画デビュー。『アノソラノアオ』(12年/父・三田村邦彦と共演)に主演したほか、テレビドラマ『警視庁ナシゴレン課』(16年)、『べっぴんさんSPドラマ 恋する百貨店』(17年)などに出演。今年秋には主演作の劇場版『牙狼〈GARO〉-月虹ノ旅人-』が公開予定。
轢き逃げ事件を起こした青年と同乗者の親友、青年の婚約者、被害女性の父母、ベテラン刑事と新米刑事。事件を機にそれぞれの人生が絡み合い、心の奥に隠れていた心情が暴かれていく。
人間の心の奥底を映し出す濃密なドラマ『轢き逃げ -最高の最悪な日-』は、テレビドラマシリーズ『相棒』でおなじみの俳優、水谷豊の監督第2作目だ。キャストは、青年・秀一に中山麻聖、親友・輝に石田法嗣。W主演を務めた2人に、撮影秘話などを語ってもらった。
中山:こういう映画のオーディションがあるよ、と事務所の方から聞いて受けました。事務所の方は監督が水谷豊さんだと知っていたと思いますが、僕は知らされていませんでした。秀一の部屋を輝が訪ねてきて会話するシーンをテストしましたが、難しかったですね。脚本2ページ分で、どちらの役も覚えてきてほしい、と言われまして、当日にどちらをやるかを聞きました。
石田:僕も同じですが、その2ページのセリフがすごく多くて覚えるのも必死でした。麻聖とは会わなかったから、別の組だったと思います。
石田:嬉しかったのですが、実際の台本が届いてみたら輝の役がけっこう大変で(笑)。どうやって挑めばいいのかな、という不安が大きかったですね。
石田:はい。「はっ!!」って(笑)。
中山:僕も最初は役に決まったことだけ聞いたので、単純に嬉しかったです。昨年の3月に入って準備稿をいただいたときに、監督が水谷さんって書かれていて、「おーっ!!」と(笑)。そこで初めて事の重大さを知りましたね。
中山:監督に最初にお会いしたときに、「なるべく自分の価値観に固執しないで、普通に演じてほしい。フラットな状態で」とおっしゃっていただいたので、「秀一ならばこうする」と作り込んでいくことはせず、フラットな状態で撮影現場に行きました。あとは、会社員の役なのでスーツ姿が多かったのですが、何分この仕事をしているもので、スーツを着慣れていないんです。だから、実はクランクインする前の1ヵ月間、無意味にスーツを着て過ごしていまして、コンビニに行くときもスーツ、部屋にいるときももちろん(笑)。きっと周りの人からは「あいつ就活を始めたのか」と思われていたんじゃないかと(笑)。
石田:初めて聞いた(笑)。
中山:着慣れているかどうかなんて映像からはわからないかもしれませんが、自分としては不慣れな部分が嫌だったので(笑)。これまでは新人の役とかが多かったのでスーツを着こなせてなくてもよかったのですが、今回は新人ではなかったので。
石田:スーツ着て暮らすとか、そういうストイックなことは何もしていません(笑)。素直に言っちゃうと、どうやって演じようかと悩んでいましたね。麻聖と僕と2人で本読みをしたときに、水谷監督が求めている輝と違っていることを指摘されて、それでもうわからなくなっちゃって。そこからもう水しか飲んでなくて。それで、2回目の本読みのときに、「なんとか大丈夫かな……」みたいなことを(監督に)言われて、「あ、これはヤバイ」って、また水しか飲めなくなっちゃって。最後に全体の本読みのときに、「監督、どうでした?」って聞いたら、「なんとか光が見えてきた」と言われて、やっとご飯を食べられるようになって(笑)。すごく大変でした。
石田:明確には言われなかったのですが、多分、僕が独りよがりな演技に持っていっちゃったのだと思います。監督が細かく修正してくださったのですが、それを自分のものにするのも追いつかなくて。別の方にアドバイスをいただいたりもしながら調整して、なんとかたどりついた感じです。
中山:最初に言っていた「フラット」ですね。はっきり覚えているので。役者として当たり前なのですが、本当にあらためてキチンと教えていただいたように思います。
石田:たくさんのアドバイスの中で、今、ポンと浮かんだのは、撮影終了の前日に監督に言われた言葉です。「自分の意識とは別のところまで持っていって演じると、芝居をしていて楽しい、心地よい、と感じられる。そこまで持っていったらいいと思うよ。あー、でもごめんね。1日じゃ時間ないね」って(笑)。「今日の宿題として明日までにやってきます」ってお返事しました。
中山:また、水谷さん自らが演じて見せてくれるのですが、先輩の役者さんのお芝居ですから、これはもう見逃せないと。少しでも多くの情報を得たくて、食らいついて監督の動き・呼吸を見させていただいてました。
石田:水谷さんは、輝の演技を見せてくれた後にすぐ監督の顔に戻るのですが、瞬時に変わるのがすごいなって。切り替えの早さで思い出すのは、最終日に撮影したシーンです。本当に大変なシーンで、監督も僕の演技を見て「うーん」ってなって。そのとき、監督が瞬時に反応して、撮ろうとしていたビジョンを変えたんですよ。「自分のせいで悪いな」と思ったのと同時に、「監督の切り替えの早さはすごいな」と。いくつもの引き出しがあるというか。(中山に向かって)あのシーンね、見ておいたほうがよかったよ。
中山:自分が出演しないシーンも見ておきたいと思っていて、ほとんどの撮影を見学していたんですよ。でも、あの時は法嗣がすごく集中力を要するシーンだったので、ここに俺はいない方がいいな、と思って見学を控えてたんです。そしたら、そんなにすごいことになってて(笑)。
石田:もう死にそうでしたよ(笑)。その一言だったかひとつの動きだったか覚えていませんが、数回やってもできなかったんですよ。それで瞬時に別バージョンに変えて、オーケーになったんですけど。
石田:客観視できない(笑)。なんか(撮影した長さよりも)短くなってる、とか、僕はこんな顔してたんだ、とか思ったり。
中山:撮影が夜遅くに終わることが多かったので、「お疲れ様でした!」って言った後、夜な夜なふたりで「ハンバーグ行こうか?」(笑)。宿の近くにあるお店がハンバーグ屋さんだけだったもので。その日の撮影の話をしたり、ただ「おいしいね」って話したり(笑)。
中山:完全に初対面でした。親友を演じるためにも、僕はなるべく一緒に過ごしたいと思っていたので、ハンバーグ屋さんでの時間が実はとても大切だったように思います。ただ、最初、法嗣はずっと敬語で接してきて。2歳しか違わないんですけどね。
石田:この世界では1歳上でも先輩なので、敬語を使わなくちゃって。
中山:早々に敬語禁止令を出したけど、なかなかね。でも、今は全然ですよ(笑)。
石田:はい。コーヒーを差し入れしたり。麻聖の部屋のドアノブに引っ掛けておいたよね?
中山:あははは(笑)。ホテルで隣の部屋だったんですよ。僕が撮影から帰ってきたら、ドアノブにUCCのドリップ式コーヒーが入った袋がぶら下がってて。夜、ひとりで飲みましたよ。
石田:撮影現場の近くにUCCの工場があったので見学に行ったんです。お土産でも買おうかなと思ったら、あげる相手が麻聖しかいなくて。「彼女か」って麻聖からメールが来たんですが、まんざらでもなさそうでしたよ(笑)。
中山:わらび餅も差し入れしてくれたよね。
石田:おいしいわらび餅が売っていたので買ったんですが、自分で食べて余ったのであげました。
中山:作品というより監督の話になってしまいますが、芝居をさらに深いところに持っていけるように導いてくださって、自分の芝居に対して改めて向かい合える時間を過ごさせていただきました。
石田:監督に指導していただいて、あらためて芝居に向き合ったような感じがします。これから10年、20年と役者をやっていく中で、「こんなことあったよね」と思い出せる作品なんじゃないかな。撮影終了から1年経ったけれど、ついこの間のことのようなんです。
石田・中山:濃かったですね〜(笑)。
中山:ハモっちゃった、初めてシンクロした(笑)。
中山:何事もそうだと思いますが、続けていくことは難しいので、芝居をさせていただける環境に感謝しながら続けていくことですね。また、自分の芝居につながる何かに挑戦していくことです。
石田:いろんな役に挑戦していきたいです。あとは、今回、水谷さんがリハのときに、「自分の意識を別のところに持っていって」とおっしゃっていたので、その言葉を自分も言えるようになりたいです。自分もその域まで到達して、麻聖にそう言いたい(笑)。
中山:待ってるよ(笑)。
中山:監督、よろしくお願いします。
石田:めっちゃ厳しいよ(笑)。
(text:中山恵子/photo:中村好伸)
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