1988年5月9日生まれ、大阪府出身。2004年にドラマ「放課後」で女優デビューを果たすと、2006年『放郷物語 THROES OUT MY HOMETOWN』で映画初出演。2010年公開の映画『春との旅』で毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞と日本映画批評家大賞新人女優賞を受賞。その後も、連続テレビ小説「わろてんか」(2017年)や、「恋のツキ」(2018年)など話題作の出演が続いている。7月からはレギュラー出演する連続ドラマ「べしゃり暮らし」(EX)の放送が控えている。
音楽と映画の祭典「MOOSIC LAB」でグランプリを含む4冠を達成した映画『月極オトコトモダチ』。WEBマガジン編集者・望月那沙は、「レンタル友だち」を生業にしている青年・柳瀬と出会うことにより、大人の男女に友情は存在するのか――というテーマの連載を始めることになるが……。
本作で那沙を演じるのは、数々の映画やドラマに出演している実力派女優・徳永えりだ。商業作品でもその演技力が高く評価されている徳永が「映画作りってこうあるべきだなと思った」と振り返った撮影での思い出や、30代になって変わったことなどを語った。
徳永:アラサーの恋愛物語なのですが、男女間に友情は存在するのかという、答えがあるようでないような、お客さんに答えをゆだねる作品だったので、演じている方は、いろいろと考えを巡らせることができ、とても楽しかったです。
徳永:最初に台本を読んだとき、那沙というキャラクターは年の割にすごく幼いところがあり、もがいている女性だなと感じたんです。恋愛に対しても未熟なところが多いからこそ、男友だちとのやり取りも演じていて面白かった。悩む部分も多かった役ですが、すごくやりがいがありました。
徳永:アラサー女性の恋愛事情というのはこれまでも経験してきたのですが、那沙は恋愛までにもいっていない女の子。そういう段階の彼女の、どこに焦点を絞って演じたらいいのかは悩みました。そんなとき、こんなこと言ったら失礼ですが、穐山(茉由)監督を見て「あーいいモデルがいる!」と思ったんです(笑)。本当の穐山監督の恋愛事情は分からないですが、表現の仕方とか、動きとか身振り手振りが、いい意味でこじらせているように見えたんです(笑)。かなり穐山監督を参考にさせていただきました。
徳永:橋本さんとは初めてご一緒させていただいたのですが、ラッキーだったのは、すごくお芝居の相性が良かったんです。那沙がこじらせているなか、スンと立ってくれて、全部お芝居を受け止めてくださいました。だから私はとりあえず全部やってみようと思えました。相手が橋本さんじゃなかったら全然違う形になっていたと思います(笑)。
徳永:私が言うと偉そうになってしまいますが、しっかりと見えている絵を持たれている監督なので、その許容範囲内だったら遊んでも動じない大きさを感じました。長編映画初作品とのことでしたが、そんなことを感じさせないくらいの余裕もあって視野も広い方だなと。でも自分のやりたいことに対してのこだわりは強いので、ピンポイントな演出は多かったと思います。あとは、アパレルの仕事をされているということもあると思うのですが、衣装のカラーリングなど、とても鮮やかでワクワクしました。
徳永:柳瀬ほどスイッチをぱちぱちと切り替えられる経験はないですよね(笑)。ただこの仕事ってすごく特殊で、役によっては、キスしたり絡みもあると思うのですが、ある意味でそこではスイッチをオフにしているのかもしれませんね。でもプライベートでは、タイプとかはあるのかもしれませんが、異性と接するとき「この人は恋愛対象、この人は対象外」という見方はしていないです。
徳永:自分にはあまりない発想だったなと思うと同時に、このテーマって答えがないと感じていて、そこに映画として答えを出す作業に挑む監督ってすごいなと思いました。私もそのチャレンジに惹かれた部分は大きかったです。どこに着地するか、やってみないと分からないという映画作りも不思議な体験でした。
徳永:一番分かりやすい商業映画との違いは、時間がないということですかね(笑)。もちろん予算的な部分も自主映画だと厳しいとは思うのですが、私自身が、初めて映画に出させていただいた作品は、劇場公開はされましたが、とても小規模な作品でした。その作品でお芝居について学ぶことが多かったので、当時のことを思い出し、すごく懐かしい気持ちになりました。初心に戻れた気分でした。
徳永:限られた時間や予算のなか、どうやってベストを尽くすかを、どの部署もみんな一生懸命考えて映画作りをするんです。もちろん時間もお金もあった方がいいとは思いますが、ないなかで作ることの尊さや強さもあるんです。やっぱり映画作りってこうあるべきなんだなと改めて感じましたし、大変なことって楽しいに変わるんだなと実感しました。ありがたいことに『月極オトコトモダチ』は、観ていただいた方からの評価が高く、全国公開していただけることになりました。その意味でも、とても貴重な体験ができた作品です。
徳永:経験をしなければ分からなかったことはたくさんあります。一番は「私はどれだけ脇に甘えていたんだろう」ということ。主演の方って作品を背負う使命があるし、重圧もすごい。そのなかで、一緒に芝居をしている俳優さんの表現をつぶさないようにしようとか、できるだけ伸び伸びと演じられるような環境を作りたいという気持ちで臨んでいるんですよね。主演を経験したことで、これまで脇で演じていたとき、主演の方にたくさん守っていただけていたんだなと感じました。
徳永:こんなにも変わるのか……というぐらい実感しています。30歳を超えてから、突然恋愛ものへの出演を含め、いろいろな作品をやらせてもらえるようになりました。以前事務所の社長から「30歳を超えてからだよ」と言われていたこともありましたが、私も早く30歳になりたいと思っていたんです。実際になると、すごく気持ちがラクになりました。10代の頃から、お姉さんたちが「30歳を超えると楽しいよ」と言われていたのですが、言葉通り、いまはとても楽しいです。
(text&photo:磯部正和)
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