1979年4月21日生まれ、スコットランド出身。名門の英国王立スコットランド音楽院を卒業。『ダンシング・インサイド/明日を生きる』(05年)で映画初主演。『ナルニア物語/第1章:ライオンと魔女』(05年)のタムナスさん役でブレイク。その他、『ラストキング・オブ・スコットランド』(06年)、『つぐない』(07年)、『ウォンテッド』(08年)、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11年)、『X-MEN: フューチャー&パスト』(14年)、『X-MEN: アポカリプス』(16年)、『ッドプール2』(18年)などに出演。
『X-MEN:ダーク・フェニックス』ジェームズ・マカヴォイ×マイケル・ファスベンダー インタビュー
俳優は恥をかくのがお仕事!? 演技派スター2人がシニカル・コメント
全世界累計興収が28億ドル(約3,126億円)を超えるメガヒットシリーズの最新作にして最終章となる『X-MEN:ダーク・フェニックス』が、6月21日より日本公開される。
ある事故をきっかけに、女性ミュータント、ジーン・グレイの中に潜んでいた闇の人格、ダーク・フェニックスが覚醒。増幅したパワーを抑制できず、暴走することから、悲劇が巻き起こされるが……。
壮大なストーリーの見納めとなる本作について、プロフェッサーX役のジェームズ・マカヴォイと、マグニートー役のマイケル・ファスベンダー、2人の英国人俳優に語ってもらった。
ファスベンダー:より怠惰になったよ(笑)。
当初は壁に穴を空けてやろうと言わんばかりの勢いで認められようと頑張っていたんだ。打ち破るのが難しい天井なので、それは一途な旅路となるわけだよ。それが、ここ2年ほどで、そこまで必死に仕事をしなくなったことに気がついた。それまでの人生がいかに視野の狭いものだったのかを悟ったんだ。自分に集中し、演じるキャラクターのことを知ろうとし、自分と比較してどうだろうとか、類似性はあるのかなど、自分のマインドを追求し自己開発をするなどして、無我夢中の旅路だった。それがだんだん歳を重ねていくに連れて、そこまで脇目も振らずに考えることがなくなってきたのだと思うね。自分のプロダクション会社を持って、脚本家と一緒に作業し、他の俳優達と共演し、役を自分で選べる段階まで来たし、小規模の作品を製作することもできるようになった。X-MENが何をもたらしてくれたかという先ほどの話に戻るが、それによってプロダクション会社を設立する機会を与えてもらい、そうでもなければ資金が集まらなかったであろう作品を製作することもできるようになり、新たなフィルムメーカーたちを世に送り出すことも可能となった。というわけで、以前ほど一心不乱な旅路ではなくなったね。
マカヴォイ:長い間チャールズ(プロフェッサーX)を演じていく中で、難しいとは感じたことはあまりないな。そして長年同じキャラクターを演じ続ける苦労というのもあまりない。ある意味、テレビと似ている部分があるのだと思うが、最初の4話までは脚本が素晴らしかったとしても、第5話、第6話の脚本を気に入らなかったとしたらどうだろうという話だ。もしくは脚本は良くても、内容を好きではないとしたらどうだろうとかね。でも、本作ではそういう苦労というのは特にないよ。スタジオや脚本家がどう展開させたいかに従わなくてはならないわけだが、時には意表を突かれ、「えーっ!」ということもあるものだ。ところがサイモン(・キンバーグ/監督・脚本・製作を兼務)は素晴らしい仕事をしたと思うよ。
ファスベンダー:それから、僕たちの提案に耳を傾けてくれるかどうかにもかかっている。サイモンはそういう意味で素晴らしいんだ。「セリフのこの箇所を少し変えても良いかな?」とか、「コミック・ブックの中のこの要素はどうだろう? ここのところに少し触れてみても良いのではないかな?」などと言うと、彼はそういったことにいつでも寛大で、積極的に取り入れてくれる。そういうことは必ずしも頻繁にあるものではないからね。
マカヴォイ:そう、僕たちはとてもラッキーだと思うね。
マカヴォイ:他の国がどうかは分からないが、この国の学校教育の制度について考えるにつけ、ちゃんと税金を払い牢屋に入れられるようなことがないような人を次々に世に送り出すのみとなっていると感じる。勉強の仕方を教わるわけではないし、積極的に自己表現するように言われるわけではないと思う。ただ規則に従ってやるように教わるだけだ。自分が受けた教育体験を振り返ってみて初めてそれに気づき、自分に何が起こっていたのかが分かるんだ。その当時はそういう事が起きているとは意識しなかったものだよ。
(スコットランドの)グラスゴーにあるヤバい学校に通っていたので、大した機会を与えられたわけではなかったが、自分が操られているとは感じていなかった。今どきの子どもたちを見ていると、自分の教育体験と比較して僕はとても頭にくるんだ。まるで歯車の1つを設計しているだけのようだったが、それは今でもそうだ。僕たち一人一人がその役目を果たしてこそ社会が機能するということは理解できるが、政府、機関、社会といった僕たちが属しているものはそれが何であれ、皆個人主義を恐れている。そして潜在能力を脅威だと感じており、誰もが権力を持つことを恐れているんだ。皆が権力を実感するようになると、道路の清掃をする者が誰もいなくなってしまうからね。
ファスベンダー:それから個人主義という考えは20世紀の産物のようなものとなった。僕たち個人個人が特別な何かを持っていなくてはならない。個人主義は讃えられているが、僕たちはこの世に生を受けた日には誰かを必要とするわけだ。お互いを頼りにするもので、一緒に協力し合うことによって、より多くのことを成し遂げることができるんだ。教育システムで興味深いのは、「これは時代遅れのシステムだ」といつも感じる分野だということだ。このカリキュラムは産業革命の頃からしばらくの間は上手く機能していたかもしれないが、今我々は全く異なる世界にいるわけで、今どきの子供達は紙をこんな風に(親指と人差指を押し広げる、スマートフォンの文字を拡大するのと同じ動き)して文字を拡大しようとする。すべてがかなり変わってきたんだ。ジェームズが言ったように、学生数が少なく、教師が学ぶことを楽しむように励ましてくれ、ただ試験に合格すれば良いというものではなく、学ぶプロセスについて自分なりの意見を持つようにとインスパイアしてくれるような私立校にでも行かない限りそうなんだ。僕の時代は、前の年、その前の年の試験問題をやるだけだったが、僕は一体どれだけ吸収していただろうか。その教科をどれだけ学んでいただろうか。大して学んではいなかったね。少なくとも自分で調べようと思ったり、楽しもうとしたりはしなかった。教師が学年末にある程度の成果をあげなければならないというのは理解できるが、システムを見直すべきなのは確かだ。それこそが将来だからと言って、そういう形式の教育に集中してしまっている。
ファスベンダー:「今、コーヒーを飲んでいるところだから、そっとしておいてくれ」、なんてね(笑)。「君に可能性はないから、今すぐ諦めたほうが良い」とか(笑)?
誰かに教わったことでいつも念頭に置いているのは、「自分の直感を信じろ」ということだ。スティーヴ・マックイーンが言ったことで心に響いたのは、「お前はどうせいつか死ぬんだから、恥をかいたって何が問題だというんだ?」ということだ。
ジェームズ(・マカヴォイ)も言っているように、人前に出ていって、顔から先に転んだり、顔に卵をぶつけられたりする覚悟がなければ、そのシーン、そこでの自分の演技を本当の意味で理解することはできない。挑発的でオリジナルな、見ていて興味深い何かをもたらすことはできないものだ。怖いもの知らずでなくてはならない。大概はついさっき会ったばかりの見知らぬ人たちの中に身を置き、ジェームズも言ったように恥ずかしいことをしなくてはならないものだから、それを乗り越えていかなければならないんだ。
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