1999年生まれ、東京都出身。2009年にデビュー。15年に映画『俺物語!!』でヒロインに大抜擢され、17年『ひるなかの流星』で映画初主演。18年にNHK連続ドラマ小説『半分、青い。』でヒロインを演じる。19年はドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です−』や、映画『君は月夜に光り輝く』など話題作に出演。
心優しく頭脳明晰なユウ、バスケ部のエースのハル、ハルの恋人で快活なコトナ。同じ高校に通う幼なじみの3人が、突然事件に巻き込まれる。同時にユウとハルは見知らぬ世界に迷い込む……。
人気RPG「二ノ国」の世界観を基に誕生した、オリジナルストーリーのアニメーション映画『二ノ国』。山崎賢人、新田真剣佑と共に、アニメーション声優に初挑戦したのは永野芽郁。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』のヒロイン・楡野鈴愛役で国民的人気を得た彼女は、本作でアニメ声優に初挑戦。現実(一ノ国)でのコトナ、命のつながりを持つ二ノ国のアーシャ姫の2役を演じた。
そんな彼女に、声だけでの表現の難しさ、もうすぐ20歳を迎える現在の心境などを語ってもらった。
永野:実は、私はあまりアニメーションを見たり、ゲームもしないので、まずその世界観に自分がなじめるだろうかと不安もありました。最初、文字だけでは一ノ国と二ノ国を行き来するストーリーを一度で理解できなくて。何回か読み直していくうちに『世界を行き来できるって、そんなファンタジー最高だな!』と思うようになって(笑)。ユウとハルが世界を移動しますが、私は自分に置き換えて、2人の気持ちになってみたら、すごくわくわくしながら読めて、そこからアフレコがすごく楽しみになりました。
永野:最初は嫌だなって思いましたね。演じているのはコトナだから、女性側として見ていたんですけど、彼氏と彼氏の親友がいて、そこにずっと居続けられるのも結構すごいなって。でも、たぶん(密かにコトナのことを好きな)ユウが一番しんどい立場だけど、3人だからこそ成り立つ関係性でもありますよね。現実に置き換えると、やっぱりなかなか厳しいところはありますけど。あの3人だから、『二ノ国』だからあり得るんだと思います。
永野:アーシャです。一国の姫だから、こう振舞おうと思っている姿と、ユウの前でちょっとお茶目になる、「私、本当はこうなのに」という姿があって。それって、たぶん私だけじゃなくて、芸能界でお仕事をしている方たちもみんな感じていることだと思っています。仕事で見られている自分と、本当はこうなんだけどな、と思っている自分がいる。よく「ギャップがある」と言われるので、そういう意味でもアーシャかな、と自分では思います。
永野:コトナは男女共に好かれるタイプだと思いますね。変に女の子らしくするわけでもないし、媚びる感じもない。私も今までそういう役が多かったので、お芝居するならこうだな、と想像はつきやすかったですが、今の自分と感情が似ているかと言われると、やっぱりアーシャのほうが近いかなと思いました。
永野:自分が出ているもの……自分は映っていないですけど、自分の声が聞こえてくるので、それを聞くのはどこか恥ずかしい気持ちにもなりました。でも、それも忘れさせてくれるぐらい、二ノ国という一つの世界に自分も一緒に入ったように楽しく見られて、ユウとハルやみんなが戦っているシーンもハラハラしたし、どこか実写のような見方もできて。すごく新しいものを見させていただいたという気持ちでしたね。
永野:最初は二役をやるなら、声質やトーンを変えなきゃいけないんだろうなと思って、すごくどきどきしていたんです。現場に入ってみると、皆さんがあんまり構えずに、「自分がやりたいように一回やってみて」と言ってくださって。なので、そのときの感情で一回お芝居してみて「声をもうちょっと低くしようか、高くしようか」とか簡潔に、分かりやすくアドバイスをいただきながら演じました。意識しながらやってみると意外と簡単に声が低くなったりして、自分の意識を皆さんに変えてもらいながらやっている感じでしたね。
永野:普段お芝居をしている時は、呼吸をあまり意識せずにやっているんです。たぶん自分の中で表情に比重がいっているので。でも、アフレコは声だけなので、呼吸の大事さに気づきました。意識していないと、気づかない間に小さくなっていたり、止めていたりするんです。それを開放しなきゃいけなかった。今後、作品に入る時に、呼吸は自分の中で大事になってくるなと思いました。
永野:もう大変だったんですよ! 完成作を見て「こんなだったの?」って(笑)。作っていく中で内容が少しずつ変わっていったりしたところもあるので、「全然違う!」と驚いたことも多かったです。アフレコしている最中も、映像が未完成の箇所はキューが頼りでした。相手役の方もいらっしゃらないですし、1人対マイクという状態だったので、今までに感じたことのない孤独感を感じながらやっていました。
永野:聞いてくださっている方たちの感覚に頼って、そこに自分ができるだけ乗っていけるように務めました。普段のお芝居をしている時は、せりふを完璧に覚えて、相手の顔を見て演じますが、アフレコはほぼ2日間程度で全部録るので、せりふを全部覚えることはできません。量が多過ぎて。せりふを読みながらだと、感情が入らなくなりそうで、できるだけリハーサル時に頭に入れて、台本を見ずに言えるようにしました。新田さんは共演したことがあったので、新田さんだったらこういう呼吸の使い方をするかなとか、以前お会いしたときの雰囲気を想像しながら、いろいろトライして、という繰り返しでした。どう言うのが正しいかわからないですが、普段のお芝居は自由に、空間を全部使って動いていいけれど、アフレコはマイクと対等になって、ずっと一緒で、決められた枠の中にずっといる感覚があったので、変に力を入れないように心がけました。録り終えた後は頭がぼーっとするぐらい集中しました。3日、4日ぐらいかけても回らなくなりましたね、頭が。他のことに全然行かなくなっちゃって。
永野:20歳までのカウントダウンを1年前ぐらいからしていました。ものすごく長かったのに、気づいたら、あと1ヵ月か、みたいな気持ちです。何が変わるのかなと思った時、年齢的な制約もなくなって、自由になるというのもあるし。10代の間に先輩たちにたくさん食事に連れていっていただいたので、「20歳になったので」と言って、私に一回ぐらいごちそうさせてほしいなって思います。皆さん優しいので「年下の子にはもらえないよ」って絶対言うでしょうけど、かっこよく、こそっとお会計とかしてみようかなと思って(笑)。
永野:皆さんが思っている私のイメージが、また少し変わるようなお芝居や、そういう座組に入れたらすごく幸せだなとは思いますね。シリアスなものだったりとか、アクションもそうだし、全然笑わない役とかも。コメディもやってみたいですけど、いろんなものに挑戦したい。今しかできないものもやりたいし、と欲張りですけど。その時々で、やりたいものをやれる自分の技術力が付いていったらいいなと思っています。
永野:どんな女性……。人に合わせないという意味ではないのですが、自分がこうでありたいと思ったら、そのまま突き進める人にはなりたいと思っています。芯があるというか、間違っていることは間違っている、間違っていないことは間違っていないという判断力と決断力がちゃんと備わっている女性でありたいと思います。
(text:冨永由紀/photo:ナカムラヨシノーブ)
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