『セカイイチオイシイ水〜マロンパティの涙〜』辻美優インタビュー

異国の地、炎天下での衝撃的な体験とは?

#辻美優

本当に水の大切さを実感しました

第1回全日本美声女コンテストでグランプリを獲得し、アーティスト・女優・声優・モデル・漫画家など幅広い活動を繰り広げている辻美優。そんな彼女が、女優としてスクリーンデビューを飾ったのが『セカイイチオイシイ水〜マロンパティの涙〜』だ。

本作で辻は、友人の誘いからフィリピンで水道建設工事のボランティアをすることになった大学生・明日香を好演。初映画にて主演、しかもほとんどが海外ロケという、初めて尽くしの現場を経験した辻が、女優としての魅力や、自らの人生を振り返った。

──初の映画の現場で主演を務めることになりました。

:まず“主演”という言葉が私の頭のなかにうまくインプットされずに最初は戸惑いました。ただ台本を読ませていただき、本当に素敵な作品で、私が演じた明日香という女の子も魅力的だったので、一生懸命演じようという思いでした。さらにこの話は実話を元にしているということなので、まだまだ自分の知らないことはたくさんあるんだなということも感じました。

──初めての映画の現場はいかがでしたか?しかもほとんどが海外ロケだったんですよね?

辻美優

:本当に右も左もわからないまま、しかも海外で……(笑)。ただ、役として演じた明日香も英語が得意ではなく、まったく知らない世界に不安を持っていくという部分が、自分の置かれている状況とリンクしているなと思っていました。スタッフさんや共演者の方が、とても親切で優しく、しかもしっかりと意見も伝えてくださるので、しがみつきながら、楽しく過ごすことができました。

──明日香という女の子の成長物語でもある本作。明日香自身の変化は意識してお芝居をしましたか?

:すごく大きな変化ではないと思うのですが、現地の人々に触れ、明日香自身が持っていた価値観や考え方も変わっていくんですよね。そういう部分が、身体の表現一つや走り方とか、小さなところにも意識を巡らせたので、観ている方にも伝わればいいなという思いがあります。

──フィリピンロケで印象に残っていることは?

辻美優

:水道管を埋めるためにスコップで穴を掘るシーンは「本当にこういう作業を何キロにも渡ってやっていたんだ」という驚きがありました。炎天下で、果てしない距離をずっと続けていくのは衝撃的でした。

──体力的にきつかったのではないですか?

:行ったのは4月だったのですが、まだ本格的な暑さの前でした。でも正直日本の真夏と同じぐらいの気温で、かなり暑かった。この物語ではないですが、喉がカラカラになるので、本当に水の大切さを実感しました。命の危機に関わりますから。

──その他、思い出に残るシーンは?

辻美優

:明日香が折り紙を持っていき、フィリピンの子どもたちとコミュニケーションをとるシーンですね。風船とか手裏剣、鶴を持っていくと、子どもたちがものすごく喜んでくれるんです。折り紙というコンテンツは万国共通なんだなと改めて思いました。

──ホームステイ先に住む子供のアミー(ミエル・エスピノーザ)が素晴らしい芝居をしていました。

:天才です(笑)。フィリピンでは国民的な人気子役なんです。休憩時間でも膝にちょこんと乗ってきたりして、本当に可愛らしくて演技も素晴らしい。助けられることが多かったです。

──ボランティア先の中心人物・岩田公彦を演じた赤井英和さんとの共演はいかがでしたか?

:すごく優しい方でした。ご一緒することが多かったのですが、常にジョークをおっしゃっていて、現場が明るくなるし、お芝居でも「こうすると良くなるよ」というアドバイスをくださるんです。実際赤井さんのアドバイスを実践したシーンを観ると、本当に深みが出ていたので、感謝しかないです。

──赤井さんは元ボクサーというのはご存知でしたか?

:存じ上げていました。すごく強い方なんだろうなというイメージはあったのですが、実際はとてもユニークで優しくて温かい方でした。

お芝居ってどこまでも深いんだな、と感じた
──明日香は友だちの誘いによって、一歩踏み出したことで人生が変わりました。辻さんにとってそういう出会いや経験はありましたか?

辻美優

:オスカープロモーションと青二プロダクションが行った「全日本美声女コンテスト」ですね。それまでは女優さんとしてやっていこうと思っていたなか、アニメやゲームも好きだった私が、この募集を見てチャレンジしたいと思ったんです。そこで賞をいただいたことで、声のお仕事やelfin’での活動など、仕事の幅が広がっていったんです。あのときの一歩は自分のなかでは大きかったです。

──今回映画の現場を経験して、お芝居について意識が変わったことはありましたか?

:お芝居ってどこまでも深いんだな、と感じました。自分のなかで作り込んでいったつもりでも、まだまだ浅いなと感じることが多かったです。この仕事でずっと生きていけたら、どれだけ幸せなんだろうって、今回改めて感じました。

『セカイイチオイシイ水〜マロンパティの涙〜』
(C)セカイイチオイシイ水製作委員会
──課題は見つかりましたか?

:当たり前のことですが、キャラクターを理解していなければスタートラインにも立てないということを強く感じました。そこがブレなければ、現場でどんな状況になろうとも、臨機応変に対応できるのかなと……。

──お芝居の仕事をしたことで、声の仕事にも影響は?

:どちらにもプラスになっていると思います。実際、映画の撮影後、声優のお仕事をしたとき「表現力が豊かになったね」と声をかけていただいたんです。今後はどちらもプラスになれるように頑張っていきたいです。

(text&photo:磯部正和)

辻美優
辻美優
つじ・みゆう

1996年7月6日生まれ、東京都出身。2014年、オスカープロモーションと青二プロダクションにより開催された「全日本美声女コンテスト」で応募総数14,434通の中からグランプリを獲得し、美声女ユニット「elfin'」のリーダーとして、アーティスト・女優・声優・モデル・漫画家・ゲーマーなど幅広い活動を行う。本作が映画初出演にて初主演。