1995年2月16日生まれ、東京都出身。2008年テレビ東京の『おはスタ』で“おはガール”を務める。13年、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』に出演し、注目される。16年NHK大河ドラマ『真田丸』で主人公・真田信繁の正室・春役を演じる。『ちはやふる』3部作(16年、18年)に出演し、『勝手にふるえてろ』(17年)で映画初主演を果たす。第71回カンヌ映画祭パルムドール受賞の話題作『万引き家族』にも出演。白石和彌監督の『ひとよ』が11月8日より公開される。
史上初の快挙となる直木賞と本屋大賞のダブル受賞を果たした恩田陸原作による「蜜蜂と遠雷」。“映像化不可能”と言われたこの傑作が実写映画化された。国際ピアノコンクールを舞台に4人のピアニストにスポットを当てて彼らの挑戦と成長を描いている。
天才少女だったが母親の死をきっかけに表舞台から消えていた栄伝亜夜。サラリーマンで家庭を持つ年齢制限ギリギリの高島明石。名門ジュリアード音楽院に在学中で優勝大本命のマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。そして“ピアノの神様”と言われる今は亡き著名なピアニストの推薦状を持つ謎の少年・風間塵。栄伝亜夜を『万引き家族』の松岡茉優、高島明石を『狐狼の血』の松坂桃李、マサル・カルロス・レヴィ・アナトールを『レディ・プレイヤー1』の森崎ウィン、風間塵を、オーディションで選ばれた新星・鈴鹿央士が演じ、白熱したピアノコンクールを繰り広げる。
栄伝亜夜に扮して繊細さと力強さを体現した松岡茉優が作品の魅力と撮影の苦労について語ってくれた。
松岡:出演のオファーがあってから原作を読んだのですが、「これを映像化するの⁉」と衝撃を受けました。読者の方それぞれの頭の中で音楽が鳴ったと思うんですが、それを実際に提示しなくてはいけないのですから。恩田陸先生の渾身の作品で、音楽の描写が素晴らしくて! クラシックに疎い私ですら、読みながら想像を掻き立てられました。
松岡:今までクラシックというとゆったりと落ち着いた気分で味わうもの、と私も思っていました。でも、この作品の演奏シーンはまるでアクションシーン! 4名のピアニストがフィーチャーされているのですが、まったく違うフィールドで戦ってきた4名で演奏の仕方もまったく違うんです。コンクールはバトルアクションのようで、クラシックに興味のなかった方でも高揚感を持って見てもらえると思います。少年漫画のように興奮できるので、コンクールを“天下一武道会”(『ドラゴンボール』の格闘大会)と捉えて、誰が優勝するのか楽しんで見てください(笑)。
松岡:幼少期にやっていました。習い事のレベルだったので今回のレベルとは比べものにならないけれど、鍵盤に触ったことがあるのは役に立ちました。編曲などが出来上がったのが撮影の1ヵ月前ぐらいだったので実際に練習したのは1ヵ月くらいです。松坂さんや鈴鹿くんは鍵盤に触るところから始められたので、あそこまで演奏できるようになったことに感動しました。
松岡:天才、天才と言われていたけれど、本人としては普通の女の子だと思っていると思います。それこそが天才の所以であるんですけど。私の回りの天才たちも、自分のことを天才だとは思ってないんですよね。
松岡:それが、今回取材を受けるなかで「セリフが少ない」と言われて、その事実に初めて気づきました(笑)。私自身はセリフの有無で役を捉えていないんだと思います。原作で亜夜の気持ちが理解できるように書かれてますし、私も現場では言葉にはしていなくても常に心は動いていたし、何かを発信していました。言葉にするかしないかは重要ではないし、セリフが少ないからといって難しいということはないです。むしろ亜夜がたくさんしゃべった方が私は違和感があったと思います。
松岡:亜夜として女を意識するシーンが一箇所だけあって、風間塵と連弾するシーンです。原作通りのシーンですが、映像として見てもらううえで肉体同士のぶつかり合いを見せたいと思いました。体のラインがわかるようになるべくピタッとした衣装をお願いして、ピアノで煽って煽られて気分を高めていって、2人で打ち砕いていく。欲望をぶつけ合ってるようなシーンです。
松岡:いや、それが強風だし砂だらけになるし、大変でした(笑)。髪もサラサラヘアーにセットしてもらったのに、吹き飛んでしまって。でも、本当はドローンで海のそばで撮る予定だったんですが、ドローンが故障したので急遽変更して砂地での撮影になりました。空は曇りで灰色で砂地も灰色で、異空間のような不思議なムードが出ていると思います。偶然が重なって撮れたシーンなので映画の神様に救われたのかなって思います。
松岡:明石ですね。明石はこの物語を語るうえで重要なキャラクターで、明石と3人の天才という構図とも言えると思います。明石は恵まれた環境でピアノを弾いてるわけではなく、家庭を持っていて生活があり、時間に制限もある。私は“生活がある人”として俳優をしていきたいと思っているので、4人の中では明石の気持ちがいちばん理解しやすいです。
松岡:誰でも何かの分野の天才だと思うんですよね。ただ、この作品のピアニストのように、多くの人の心を動かす天才という人はいて、それはすごいことだなと思います。
松岡:うーん、どうかなぁ。『ボヘミアン・ラプソディ』とか見ていると、天才って幸せなのかな?って思いますね。天才って何かに秀でてるということだから、おそらく私たちが理解できないような葛藤があったり、回りの人と話が合わなかったりすると思う。とても孤独な戦いなんじゃないかな。
松岡:お仕事をいただくたびに責任とプレッシャーは常にあるものだと思ってます。今回はとくに大好きな恩田陸先生の素晴らしい作品の映像化で、大作ですし、プレッシャーも大きいです。でも、作品の大小は関係なく、1つひとつの作品に責任とプレッシャーをもって臨んでいます。
松岡:好きなことをすることですかね。本を読んだりゲームをしたりします。本は小説も漫画もエッセイも好きですし、撮影は待ち時間が多いので本を読んで過ごしています。
松岡:村田沙耶香先生が好きなんですけど、「地球星人」がめちゃくちゃ面白くて! もうどうしたらいいかわからなくなるくらい面白いです! 読後は茫然として処理しきれないくらいでした。この作品も映像化不可能だと思います。
松岡:無理無理、できないです! 年齢的に合っていないですけど、それだけじゃなく、無理です。それでも、いつか私にその役が巡ってきたら、誠心誠意やらせていただきたいです。
松岡:最近20代後半の役をいただくことが多くなってきて、自分の年齢というものを感じるようになってきました。そのときそのときの年齢でしかやれない役ってあると思うので、もう高校生役は卒業かもしれません。それでも、20代後半でも高校生役を演じられている方はいるので、希望は捨てていませんけどね(笑)。
松岡:この仕事を始めてから常に思っているのは人を笑顔にしたいということです。何もコメディアンになりたいという意味ではなく、笑いにはいろんな種類の笑いがあると思うので。今回の作品も大爆笑するというタイプのものではないです。でも、見てもらった方を元気にしたり、勇気を持ってもらえる自信はあります。生き辛いと感じる方や生きるのが下手だという方がちょっと生きやすくなるような作品を作っていきたいと思ってます。
(text:入江奈々/photo:小川拓洋)
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