『生理ちゃん』二階堂ふみインタビュー

毎月やってくるアレに悩む…女性が共感するヒロイン演じる

#二階堂ふみ

「あ、こういうの分かるな」と思うところはありました

2017年にWEBメディアで連載が始まり、世の女性たちから大きな反響と共感を呼んだ小山健の大ヒットコミック「生理ちゃん」。今年、第23回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した同作が実写映画化された。

仕事だろうがデートだろうがお構いなしに、来なくていい時に限って来てしまう生理ちゃんに悩まされながら、多忙な日々を送っている女性ファッション誌編集者・青子が主人公だ。妻を亡くしたシングルファーザーの久保、彼の11歳になる娘かりんとの関係にも悩みの尽きない青子の泣き笑いの奮闘を演じる二階堂ふみに話を聞いた。

──原作は男性が作者ということも含めて話題になった作品ですね。

二階堂:私は作品のお話をいただいたときに初めて読ませていただいて、こんな面白い漫画があるんだな、と知りました。描かれている内容はリアリティがあるんですが、あの絵だからこそちょっと笑えたり。生理というものが実態となって現れているのも面白かったです。その後、脚本を読ませていただいた時は、あの漫画に描かれていた生理はいったいどういうふうに登場するんだろうと、まず疑問に思いました。原作の絵のタッチがすごく柔らかくてふわっとしているからこそ、人の心にすっと入り込んでくるような作品に感じていたんですけど、実写になった時はそれがどういうふうに伝わるかな、と思いましたね。

──主人公の青子を演じてみて、共感する部分はありましたか?

二階堂ふみ

二階堂:共感性で言うと、1人の女性として生理というものがきた時に、それでも毎日やらなきゃいけないことがあって、ゆっくり休みたくても休めない時がある。それはキャラクターとは関係なく「あ、こういうの分かるな」と思うところはありました。結婚というものに対してあまり実感が湧かなかったり、いまいちまだよく分かってないみたいなところは、ちょっとだけ分かるなっていう気もしました。

──9月に公開された『人間失格 太宰治と3人の女たち』では山崎富栄を演じられましたが、青子は富栄とは正反対で、誰もが共感しやすい、同世代の女性ならば自己投影をしやすいキャラクターだと思います。そういう役を演じる時は、どういう風に取り組まれますか?

二階堂:毎回どの現場でもあまり作り込み過ぎずに現場の流れに身を任せるというか、脚本を読ませていただいて台詞を覚えます。あとは現場で監督とお話しさせていただいたり、相手の役者さんとシーンを重ねながらキャラクターを作っていくことが多いですね。

──さっき共感する部分をお聞きしたら、ちょっと考え込まれましたが、役と自分を引き寄せたりはしないんですね。

二階堂ふみ

二階堂:そうですね。あまり考えないですね。

──青子と、交際中の久保さんの一人娘・かりんとの関係についてはどういうふうに考えられますか。

二階堂:これはまた一つ青子さんの成長にもなっていて。やっぱり最初は「久保さんの娘」としてかりんちゃんと接しているんですけど、終盤でかりんちゃんと別の絆が生まれて、そこからは初めて、かりんちゃんという一人の女の子と1対1の関係になれているのかなっていう感じがしましたね。

──脚本を読まれた時、「生理ちゃん」を実写でどう表現するのか考えたとおっしゃいましたが、ちょうどさっき撮影スタジオで生理ちゃんの着ぐるみが置いてあって。実際、目にするとかなりなインパクトですが、共演はいかがでしたか?

二階堂ふみ

二階堂:すごく面白かったです。実際に中に人が入って動いたりするので、なかなか漫画のようにうまくいかないところもあるんですけど、そのうまくいかなかったポイントがちょっといい味になっていたりとか。あとは実態となったものがさらに実写化になった時に、実際のサイズ感として目の前に現れて一緒にお芝居すると、やっぱり圧迫感があったり、あとは抱えた時の重さが生理をより表現できている気がしました。あの大きさがすごいよかったなって思いましたね。

──あの生理ちゃんの声は撮影現場ではどういうふうになっているんですか。

二階堂:現場では助監督の方が読んでくださってやっていました。

──映画を見ている私たちが聞いているのは……

二階堂:私です。「生理ちゃん」はそれぞれの体の中のものだから、自分のものは自分の声でやっています。

──すごく面白いですね。

二階堂:はい、監督のアイデアです。

──面白いです。そしてこの作品は、やはり女性の生理について考えたくなるのですが、私自身は実際、女友だち同士でもそんなに話題にしたことがありません。世代の違いもあると思いますが、二階堂さんはどうですか。

二階堂ふみ

二階堂:私は結構、話していますね。半年に1回必ず病院に検診に行くようにしていますし。でも、『生理ちゃん』というタイトルの作品が漫画になって、今回映画になって、もう時代がこういう作品を受け入れるようになったというか。生理って、女性ならほとんどの方が体験する、体験してきたことでもあると思います。だけど、女性だけでなくて男性も一緒に今回、作品にできているのがまた一つ面白いことだとも思います。
『生理ちゃん』というタイトルだから、もちろん生理の「あるある」というか、生理が起こったら体でどういう変化があるか?ということが主軸にはなっているんですけど、話全体として感じていただきたいのは、男性対女性ということではなくて、やっぱり自分とは違う他者が感じている痛みや苦しみを、自分たちの物差しで測るのではなくて、それを自分ができる限り理解してあげれたらいいよね、ということです。なので、本当いろんな方に見ていただきたいです。共感性ももちろんあると思うし、発見もあると思うし、そういった部分を楽しんでいただけたらなと思います。

──確かに生理というものが主軸ですが、そこからあらゆる意味での差別とか格差とか、そういうところにまで考えを及ぼすことはできますね。

二階堂:そうですね。

──この作品を受けようと思った理由は、そのあたりにもあるんでしょうか。

二階堂:いや、漫画が面白かったんでやってみようかなって(笑)。やらせていただけたらなって思いました。

自分を必要としてくださるなら、どの現場にも行きたい
二階堂ふみ
──今年は『翔んで埼玉』や『人間失格〜』。ドラマも『ストロベリーナイト・サーガ』で主演、公開待機中の映画もあり、来年からはNHK連続テレビ小説『エール』にも主演されます。いわゆるアート系からお茶の間に親しまれるものまで幅広く、しかも同時期に網羅している俳優はなかなかいないと思います。出演を決める時に心に留めていることは何でしょうか?

二階堂:自分を必要としてくださるなら、本当にどの現場にも行きたいぐらいの気持ちなんですけれども。

──こういう作品をやりたい、というのは?

二階堂ふみ

二階堂:興味あるもの、こういうのをやってみたいなとかはあるんですけど、あんまり決めてないですね。作品との出会いはやっぱり「ご縁があれば」というものだと思うので、ご縁を感じる作品には参加させていただけたらありがたいなと思います。これからもそういう形で、ご縁を大事にしながら作品と向き合ってお仕事をさせていただけたらなとは思っています。

──今は1つのことだけではなく、俳優であっても演じるだけではなく、いろいろなことに挑戦するというスタイルの人が増えてきている気がします。二階堂さんは今後どういう方向を目指していらっしゃいますか。

二階堂:それもあんまり考えてないですね。一応、写真もやったりしているので、自分の興味を持ったものに携わりながらできればとは思っています。

──「こうしなければ」と決めつけない?

二階堂:そうですね。何でもいいと思っているので、基本的には。「何でもいい」というのは、どういう形のものであっても、どういうスタンスでも、とにかく隣にいる人と見てくださる方々を大事にしながら作品を作っていけるのがベストだと思っています。もちろんその中で自分がどうありたいかとか、どういうふうに生きていきたいか、はあります。あとはお仕事してない時の時間も大事にしながら。動物が好きなので、本当にそれこそ動物に携わることは、お仕事ではなくてもやりたいです。動物のために人間である自分が何ができるんだろうということは、いつも考えていて。そういったことで、自分だからできることや協力させていただけることは、どんどんやっていきたいと思っています。

(text:冨永由紀/photo:小川拓洋)

二階堂ふみ
二階堂ふみ
にかいどう・ふみ

1994年9月21日生まれ、沖縄県出身。2009年、映画『ガマの油』でスクリーン・デビュー。映画は『ヒミズ』(12年)、『ほとりの朔子』『私の男』(共に14年)、『オオカミ少女と黒王子』(16年)、『SCOOP!』『何者』(共に16年)、『リバーズ・エッジ』(18年)、『翔んで埼玉』『人間失格 太宰治と3人の女たち』(共に19年)などに出演。ドラマやバラエティなどテレビでも活躍し、2020年前期のNHK連続テレビ小説『エール』のヒロインを務める。