『記憶屋 あなたを忘れない』蓮佛美沙子インタビュー

山田涼介、芳根京子との共演を振り返る

#蓮佛美沙子

山田涼介さんとのキラキラしたシーンの残像を消すのが大変でした

刊行以降「泣けた」「感動した」などの絶賛口コミが殺到した累計50万部を超える織守きょうやの小説が原作。プロポーズした恋人の中から自分の記憶だけが消されてしまった大学生の遼一が、恋人の記憶を取り戻すため、人の記憶を消すという“記憶屋”の正体を探ろうとする物語だ。

 この作品に遼一の恋人・杏子役として出演しているのが、『白ゆき姫殺人事件』(14年)など数多くの映画やドラマで活躍している蓮佛美沙子だ。遼一役の山田涼介(Hey! Say! JUMP)、遼一の幼なじみである真希役の芳根京子との共演エピソードや、10代でデビューした頃から変わらない透明感のある美しさの秘訣、意外なオフの過ごし方などを聞いた。

──杏子は、記憶をなくしたという設定ですが、遼一を知っていたのに知らない演技をするのは難しかったですか?

蓮佛:私のシーンに関しては順撮りだったので、遼一からプロポーズされてOKして、というハッピーなシーンを先に撮っていたんです。だから、その後に記憶をなくしているシーンを演じるとき、杏子としては完全に遼一の記憶がないので遼一に何か言われても「何、この人」という態度になるのですが、私としては山田さんとの楽しくキラキラしたシーンの記憶があるのでその残像を消すのが大変でした。

──真希を演じたのは『べっぴんさん』(NHK連続テレビ小説)で共演されていた芳根京子さんですが、ふだんから交流があるそうですね。蓮佛さんからみて芳根さんはどのような存在なのでしょうか。

『記憶屋 あなたを忘れない』
(C)2020「記憶屋」製作委員会

蓮佛:『べっぴんさん』の撮影で10ヵ月間も一緒にいたので、家族のような感じです。あの作品で私は芳根さんが演じるヒロインの姉だったので、妹みたいな存在ですかなぁ。でも、彼女はしっかりしていて何でも一人でできるので、頼れる友だち? やっぱり妹かな? ふだんから一緒に食事に行ったりしているので、撮影の現場で会うとちょっと不思議な感じがしましたね(笑)。

──完成した作品を見て、特に印象に残っているシーンは?

蓮佛:自分は出ていないのですが、山田さんが真希の祖父の前で泣くシーンです。演技というより、本当に泣いている感じで、引き込まれました。

──この作品はいくつかの泣くシーンが印象的ですね。

『記憶屋 あなたを忘れない』
(C)2020「記憶屋」製作委員会

蓮佛:私が演じていて難しかったのも、やはり泣くシーンでした。あるシーンで、平川監督から「泣くタイミングを少しだけずらしてほしい」と言われたんです。今まであのようなシーンは感情が高ぶるままに演じていて、それで特に何かを言われたことはありませんでした。でも、平川監督の中に求めているイメージがしっかりとあることがわかりましたし、丁寧に説明してくださったので、私の方も信頼されているのだなと感じられましたし、とても勉強になりました。

──今後、演じてみたい役や目標はありますか?

蓮佛:今、演じてみたいのは、トリッキーな役。今回の作品もそうだったのですが、私はわりと男性を立てるような大人しい雰囲気の女性の役をいただくことが多いので、次はいじめっ子とか殺人鬼とか悪い役もやってみたいですね。

──女優のお仕事を続けていくうえで心掛けていることはありますか?

『記憶屋 あなたを忘れない』
(C)2020「記憶屋」製作委員会

蓮佛:ふつうに生きることですね。金銭感覚などもそうですね。今でも大学時代の友だちと会いますが、2児の母になっていて私とはかけ離れた世界で生きている子もいます。あるとき、そんな友だちの一人と一緒の時にエレベーターに乗ったんですね。ドアが閉まるのがすごく遅かったので、「閉まるの遅いよね」って私はマイナスな意味で言ったんですけど、友人は「でも、ベビーカーを使っている時にはすごくありがたいよ」って言っていて。私はその言葉に「なるほど!」と衝撃を受けたんです。そういうことを知らなかったから、やはりきちんと知っておきたいな、って。そうでないと役を演じていても理解や共感ができなかったりするかもしれないので。もちろん、健康でいるために食事に気を使ったり体を動かしたりということもしていますが、もっと日常的なことにアンテナを張れている状態でいたいですね。

──食事にも気つけているとのことですが、料理も好きですか?

蓮佛:好きですね。私は家にいるのが大好きなので、よく作っています。

──得意料理を聞いてもいいですか?

蓮佛:なんだろう(笑)。レシピ見ないで作れるものはあまりないかも。ただ、レシピ見ればわりとなんでも作れます。唐揚げは好きでよく作りますね。

──蓮佛さんは10代の頃にオーディションで合格して女優の道に進まれたので、子どもの頃から女優に憧れていらっしゃったのだと思いますが、実際にこのお仕事をしていてよかったな、と思うのはどんな時でしょうか?

蓮佛:子どもの頃から女優になりたかったですね。今、実際に現場で仕事をしていて感じるのは、役者もスタッフもいろんな年代の人たちが集まって寝る間も惜しんでひとつの作品を作ろう、って頑張っているところが魅力なのかな、と思います。そういう風にみんなでひとつのものに向かっていく過程が好きですし、幸せを感じる瞬間かもしれません。

肌荒れに悩んでいたとき、体の中からのケアが大事だと確認しました

──ところで、蓮佛さんはいつまでも透明感があって可愛らしい印象がありますが、美容の秘訣があったら教えてください。

蓮佛:ありがとうございます(笑)。美容については、ここ数年で私が確信したのは、“中”が大事だな、ということ。胃腸とか内臓の調子が外にも出るんですよね。私自身、ビタミン摂ったり、青汁飲んだりとか、中から変えようといろいろ試したら変化がありました。

──何かきっかけがあったのですか?

蓮佛:2、3年前まで肌荒れに悩んでいたんです。どうしたらいいかな、と思って、腸もみマッサージに行ったり、納豆やキムチなどの発酵食品を食べてみたり、最近はやっていませんが麹を作ってみたり。そういうことをしていたら肌の調子もよくなって、体も軽くなってきて、「これだ!」って(笑)。体に良さそうなものを毎日少しでも食べるとか、ストレスにならない程度に続けていけばいいんじゃないかな、と思いますね。

──オフの日はどのように過ごしていますか?

蓮佛:家にいるのが大好きなので、掃除したり(笑)。家具も大好きなので、SNSで素敵なお宅の家具の写真を見たりしています。今、テレビボードが欲しいので、ずっと検索していますね(笑)。あとは、友だちの予定が空いていたら、その子の家に遊びにいくとか。ただ、誘われれば遊びに行きますが、腰が重いタイプなので、たいていは家にいますね。本当に地味ですみません(笑)。

(text:中山恵子)

蓮佛美沙子
蓮佛美沙子
れんぶつ・みさこ

1991年2月27日、鳥取県生まれ。2006年に『犬神家の一族』で映画デビュー。07年の『転校生 ‐さよなら あなた‐』で映画初主演を飾る。以降、コンスタントに映画やドラマなどで活躍。主な出演作品に、ドラマ『37.5℃の涙』(15年)、NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」(16年)、ドラマ『悪党〜加害者追跡調査〜』(19年)、ドラマ『盤上の向日葵』(19年)など。ドラマ『恋はつづくよどこまでも』が放映中のほか、今後、舞台『脳内ポイズンベリー』の出演を控えている。