1939年5月25日生まれ。イングランド出身。1961年に俳優としてのキャリアをスタートさせ、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの看板俳優として、『マクベス』や『オセロ』に出演。映画の出演本数は40作品以上で、『リチャード三世』(95年)では、製作総指揮、共同脚本、主演を務めた。『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(01、02、03年)のガンダルフ役でも知られ、01年の作品では米アカデミー賞にノミネートされた。88年にゲイであることをカミングアウト。ゲイの法的・社会的平等を求めてロビー活動をするイギリスの慈善団体ストーンウォールの共同創設者である。91年、演劇界への貢献が称えられ、ナイト爵位を受勲。07年、ドラマと平等への尽力が称えられ、エリザベス女王より名誉爵位を受勲した。
『グッドライアー 偽りのゲーム』ヘレン・ミレン×イアン・マッケラン インタビュー
ふたりの名優が華麗なる騙しあいで魅了する!
オスカー女優のヘレン・ミレンと、2度のオスカーノミネートを誇る『ロード・オブ・ザ・リング』のイアン・マッケラン。大英帝国勲章を授与され、DameとSirの称号を持つ2人が映画で初共演を果たしたのが『グッドライアー 偽りのゲーム』だ。ミレンが演じるのは、夫を亡くしてまもない資産家のベティ。対するマッケランは、ベティの財産を狙うベテラン詐欺師のロイに扮する。ロイは出会い系サイトを通じてベティに近づき、ベティも徐々に彼を信用するようになるが、ロイにとって単純な詐欺のはずが思いがけない方向に事態が進んでいく。すべては、ベティの仕掛けた恐ろしい罠だったのだ……。暴かれる秘密と嘘、そして偽りに満ちた人生の奥底にある真実とは? 極上サスペンスで演技バトルを繰り広げた2人のインタビューをお届けする。
マッケラン:我々のところに話が来たのは、このプロセスの最後の方で、監督のビルが原作を読んで良い映画になることを確信し…。いや、もしかしたら、良い映画になると誰かに言われたのかもしれない。その辺りのことは詳しくは分からないが、脚本がどのようなものとなるかが分かるには何年もかかることがある。その後、「さて、そろそろ俳優を確保しなければ」という段階になるわけだが、今回は極めて珍しいことに、オファーを受けた2人の役者がどちらも快諾したんだ。そのプロセスに何ヵ月もかかる可能性もあったわけだが、ある週末のうちに決まった。君もすぐにイエスと言ったんだろう?
ミレン:ええ、そう言ったわ。
ミレン:似ているようでいて、本質はまったく異なるものね。
マッケラン:そうだね。
ミレン:タイミングもスケジュールも違う。舞台だと朝11時に起きて、翌朝3時に就寝するけれど、映画では起床時間が朝の3時で、就寝時間は11時なの(笑)。というわけで、まったく異なるスケジュールだし、エネルギーもまた異なるものなのよ。献身の仕方も違うし、とりわけ舞台での関係性というのは映画のそれとはまったく違うものよ。あの舞台で共演した当時、最終の通しリハーサルをやったのは2001年9月11日だった。つまり、9.11直後にニューヨークでお芝居を上演するという、私達にとって初めての体験だったの。わずか5〜6日後のことだったので、とても強烈な体験だったわ。
マッケラン:あれは凄かったよ。マンハッタン島が閉鎖され、誰も島から出られなかったし、島へ渡る事もできなかったからニューヨークに観光客が一切いなかったんだ。観客が足止めを食らい、プロデューサーたちが何年もかけて準備してきた数々の大規模な公演で空席が目立つという状況となった。ところが、我々の場合、ブロードウェイはもともとそうであるように、観客が地元の人たちだったので、徒歩で行けばよかった。だから、満席だったんだよ。
ミレン:『グッドライアー 偽りのゲーム』のときは、ビル・コンドン監督という温和で素晴らしい存在がいた。イアンはそれまでにも何度か彼と一緒にお仕事してきているけれど、私も今ではビルのファミリーの一員となることができていればと思うわ。彼は仕事熱心ではあるけれど、とても楽しくてリラックスした最高の現場を作ってくれた。それは最も大切な要素だったの。
マッケラン:ビルもまた舞台を見て育った人で、なかでもミュージカルが好きなんだ。彼は舞台に詳しいから、まず彼に初めに聞くことは、「どのお芝居を見に行ったら良いか」ということだ。同様に映画にも詳しいので、参考にすべき作品などについて常に話している。お互いを良く理解していて好みが似ているので、昔にさかのぼって話すことができるんだ。
ミレン:それはどうかしら。ネットでの出会いには好奇心をそそられるわ。もちろん私の時代にはそんなものはなかったけれど、友人の中にネットを通して素敵な相手と出会った人がいるの。バーに行き、男に「何か飲み物でも?」と言われるのと何が違うというの? ネットでの出会いの方がかえって良いかもしれないわ。お互い真実を語りさえすれば、ね(笑)。
ミレン:もしくは自分を一番良く見せるようにするとかね。誰かと出会い、チャットを通してお互いの関心事を知り、実際に会う前にある程度関係を築いておく。私は面白いと思うわ。
マッケラン:ネットで出会ったゲイのカップルの中に、今では結婚している人たちを何組か知っているよ。国境を超えて、探し続けていた相手と出会ったんだ。なんと素晴らしいことだろう。
ミレン:その通りよ。
マッケラン:うまくいかなくなるかもしれないが、それは……。
ミレン:パブで出会った人たちだって同じようにうまくいかなくなることがあるものよ。
マッケラン:私がデートするようになった当時は、相手がゲイかどうかを見極めなければならなかった。想像してみてくれないか。一体どうやってそれが分かるというんだ? その頃はゲイクラブなんてなかった。少なくともボルトンには、ね(笑)。だから、握手の仕方や相手への視線などで見極めることになる。そういうのも、相手のことを知る興味深いやり方ではあるが、誰かを抱きしめたいと思うとなかなか難しいものだったよ。ネットというのは、孤立していると感じている者にとっては素晴らしいものだと思うね。孤独で、恋愛がたやすい都市部ではないところに住んでいる人にとってはそうだ。そして、華やかな都市にいながら孤独を感じることが何度あったことか? そんなことも今では必要ない。
マッケラン:キャリアを継続させていること、そしてどんどん上達していっていることだね。こういう風に言って気を悪くされないといいけれど。
ミレン:そのように言ってもらえて嬉しいわ。
マッケラン:そして上達したいと思う気持ちがあることだね。
ミレン:そう、私は上達したいと思うの。
マッケラン:ある一定のやり方に固執しない。「ああ、またこれか」というようなことはない。「ああ、彼女は10歳若いふりをしているぞ」なんてことはないんだ。そういうのは美しい人によくあることで、美を維持したいと思う人がいるからなんだが、ヘレンはいつだってその瞬間を生きている。だからこそ愛されているのだと思うよ。彼女が披露する演技以外でね。ヘレンはとても強いパーソナリティを持っている。
ミレン:イアンは……。
マッケラン:ああ、よしてくれよ。
ミレン:さあ、机の下にでも隠れていて(笑)。イアンは1人でこの業界を牽引していて、彼の取り組みといったら……。実は私は彼の映画のキャリアには興味がないの。もちろんそれは素晴らしく輝かしいものであることに間違いないのだけれど、私が話しているのは彼のお芝居の演技のことよ。素晴らしい献身ぶりで、なんと言ったらいいのかしら。文化、歴史、人と直接関わる手法としての舞台に身を捧げている唯一無二の存在だわ。特にシェイクスピア、その他の舞台の最も素晴らしい俳優であるわけだけど、それにも増して彼の観客に対する支援、献身ぶり、彼らとの交流には頭が下がる思いよ。人に話しかける、人と一緒にいるといったシンプルな手法でそれをやってのけるの。そういったことは、プライベートの時間に自分のパブでもやっているようね(笑)。
マッケラン:それを楽しんでいるのは、自分が観客としてそれを楽しむからなんだ。私は俳優になるずっと前にまず観客だったわけだ。
ミレン:それは私も同じよ。
マッケラン:「ああいうのはどのようにしてやっているのだろう」と思っていたんだよ。
ミレン:そう、一体どのようにやっているのかしら、とね。
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