正直、私はとても優柔不断なんです
- 鬼才テリー・ギリアム監督が、現実と幻想が交差するファンタジックワールドを描いた『Dr.パルナサスの鏡』。主演の名優ヒース・レジャーが撮影中に急死し、一時は完成が危ぶまれたものの、ヒースの友人であるジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルら3人の人気俳優が役を引き継ぎ、3人で1役を演じるという、ファンタジーならではの構成で見事完成、第62回カンヌ国際映画祭では拍手喝采を贈られた。
この映画のヒロイン役に大抜擢されたのが新人女優リリー・コール。新人ではあるものの、実は超一流のスーパーモデルとして活躍してきた逸材。プラダ、シャネル、エルメスなどそうそうたるブランドの広告に登場する一方、現在はケンブリッジ大学のキングス・カレッジに在学中の、まさに才色兼備だ。
父親が、不死と引き替えに娘を差し出すことを約束してしまったため、16歳になったら悪魔に手渡されてしまう運命をもつヴァレンティナを演じたコール。彼女に、ギリアム監督の魅力や、亡きヒースへの思いについて語ってもらった。
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- ──『未来世紀ブラジル』『ブラザーズ・グリム』などテリー・ギリアム監督の作品は日本でも大変人気がありますが、どんな方なのでしょうか?
- コール:監督としても人間としても、とても魅力的な方です。とても頭が良く創造的で、いろんなビジョンをもっています。とにかくアイデアが豊富で、アイデアで爆発しそうなんです(笑)。
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- ──監督の魅力について、もっと教えてください。
- コール:素晴らしいことに、彼は妥協をしない。なので、一緒に仕事をしていてとても楽しいですね。
とにかくノンストップで、エネルギッシュにお仕事されていますが、あれほどの方が、人の意見をちゃんと聞くことに感銘を受けました。それから、困難なときでもユーモアのセンスを忘れないんです。
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- ──撮影中に主演のヒース・レジャーが亡くなったわけですが、彼からはどんなことを学びましたか?
- コール:素晴らしい人との出会いは、いろいろな面で影響を及ぼすもので、彼の価値観や人との接し方が特に印象に残っていて、見習いたいと思っています。
それから、彼の創造力。役に対し、恐れを知らずにアプローチし、突き詰めて演じていく姿勢も見習っていきたいですね。
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- ──モデル、女優、学生と様々な顔をもっていますが、全てをこなすのは大変ではありませんか?
- コール:傍から見ると、1人で何役もやっているように見えるかもしれませんが(笑)、私にとっても1年は365日なので、そのなかで出来る限りのことをやっているだけなんです。今は大学に通っているので、学業が第一。モデルについては、今はほとんどやっていないんです。
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- ──モデルから女優に転身したわけですが、女優という仕事の面白さ、大変さについて教えてください。
- コール:まだ新人なので、あと5年経ったらもう少しマシな答えができるのかもしれませんが(笑)、今、感じているのは、女優という仕事の「恐さ」。自分をさらけ出さなければいけないし、人々の批判のまっただ中に放り込まれ、好き勝手なことを言われ、それに対応しないといけないからです。
それから、自営業なので、1つの仕事が終われば、次の仕事が来るまで無職になってしまう。モデルも同じですが、安定性はまったくないと言えるでしょう。
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- ──女優を目指したきっかけは何ですか?
- コール:特に何かのきっかけがあったわけではないのですが、子どもの頃から演技が好きで、学園祭などで演じたりしていました。そして演技のお仕事をいただいてみて、「ああ、やっぱり今も(演じることが)好きなんだな」と実感し、続けていこうと思ったんです。
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- ──若くして成功したあなたは、様々な局面で人生の決断をしてきたと思います。どんな風に決断を下してきたのでしょうか?
- コール:正直、私はとても優柔不断なんです。いろいろと考えすぎてしまい、なかなか決断できない。だから、あまり考えすぎないよう、本能的、直感的に決めるようにしています。
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- ──今後、挑戦してみたいことはありますか?
- コール:私は、今を生きたいと思っています。だから、将来のことは本当にわかりませんが、いつの日か、カメラの後ろで、映画を撮る側に回りたいと思い始めるかもしれませんね(笑)。
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(10/01/23)
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Lily Cole
1988年、イギリス生まれ。14歳のときにスカウトされ、モデルデビュー。スーパーモデルとして活躍し、シャネル、エルメス、プラダなどのトップブランドの広告に登場。07年の『St.Trinian’s』でスクリーンデビュー。サリー・ポッター監督の『Rage』(09)シェカール・カプール監督の短編『Passage』(09)などに出演。現在はケンブリッジ大学に在学中。
リリー・コール インタビュー動画を見る
撮影中の様子。左からテリー・ギリアム監督、リリー・コール、ヒース・レジャー
『Dr.パルナサスの鏡』
2010年1月23日よりTOHOシネマズ 有楽座ほかにて全国公開
(C) 2009 Imaginarium Films, Inc. All Rights Reserved. (c)2009 Parnassus Productions Inc. All Rights Reserved
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