つまり、偏見を捨てることにしたんだ
- 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のアルフォンソ・キュアロン、『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ、『バベル』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ──メキシコ映画界を牽引する3人の監督が、メキシコ映画の底上げと次世代のサポートを目的に立ち上げた〈チャ・チャ・チャ・フィルムズ〉。その第1弾となるのが、ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナという、メキシコきってのスター俳優が主演する『ルドandクルシ』だ。
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メキシコの片田舎にあるバナナ農園で暮らしていた兄弟が、偶然、村に立ち寄ったスカウトマンの目に留まり、サッカー選手として成功していく様子が、コミカルに描かれていく。
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絵に描いたような田舎者のダメ兄弟が一気に成り上がり、女やギャンブル、ドラッグに溺れ、強烈なアップダウンの中で騒動を繰り広げる。ライバル心むき出しで、ケンカばかりしているのに離れられない兄弟を、ユーモラスに演じたガエルとディエゴに話を聞いた。
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- ──劇中で兄弟は、女性やドラッグなどの誘惑に常にさらされています。映画界も同じで、誘惑に負けてキャリアが途絶えた若手が何人もいますが、お二人は、どうやってそういう誘惑から距離をとっているのですか?
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- ガエル・ガルシア・ベルナル(以下、ガエル):本人がどんな種類の名声を追っているかによるんじゃないかな。それと、名声を得た後でどうするかにもよるよね。自分が良いと思う素晴らしい映画を作るのと、公開オーディション番組のようなタレント発掘ショーに出るのとでは、名声に対するアプローチが全然違うから。
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- ディエゴ・ルナ(以下、ディエゴ):誘惑はもちろんあるよ。でも、誘惑への対応は、当人の性格や教育、人生に何を求めているかで大きく違ってくる。それから周りの人々。常々思っているんだけど、家族って、バカげた誘惑を遠ざけてくれる最高のものなんじゃないかな。あるいは友だち。「どうしちゃったんだよ、おまえ。賞を獲ったところで、おまえは相変わらずただの大バカ野郎だろ」って言ってくれる友だちに囲まれていれば、地に足がついた生き方ができるんだよ。
それに、撮影に入れば、華やかなことなんてひとつもないよ。毎朝5時に起きて、日の出から日が沈むまで働いて。大抵、家を離れなきゃいけなくて、初めの1週間はかなり楽しいけど、あとの3〜4カ月はすごく苦痛で(笑)。
そうやって精魂込めて作った映画が、なんとか披露してもいいくらいのところまで来て、僕たちも心の準備ができれば、当然パーティだよ。それまでの約半年、地道に働きづめだったんだから、パーティくらい当然だ。そこで撮られた写真を見て、そういうのが僕らの生活だと思っちゃうみたいだけど、そんなのは本当に些細な部分でしかないんだよ。
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- ──ガエルさんは、「クルシ(ダサい自惚れ屋)」とあだ名される弟タトを演じ、劇中で、ド派手なダサい衣装に身を包み俗っぽさの極みのような歌を披露しましたが、自分の中に、ポップスター性を発見しましたか? その映像は、You Tubeで100万回以上のヒットを記録しましたね。
- ガエル:うん、ポップスター性があることは、ずっと知ってはいたんだ(笑)。ただ、世間が追いついてなかっただけだよ(笑)。
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- ──お二人は映画制作会社Canana Filmを立ち上げましたが、大作映画ではない、上質な作品の制作を目的に創設したのですか?
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- ガエル:大作映画ができたら嬉しいけどね(笑)。「僕らは商業主義の映画はやらない」とか、うだうだ考えて時間をムダにすることをやめようっていうのが目的のひとつなんだよ。僕らの好きな、良いと思う映画を作りたいと思って立ち上げたんだ。
映画を作るのはとても難しくて、商業的に大成功した作品のなかにも、とても良い映画もたくさんある。だから、「これは商業映画だから大した作品じゃないだろう」とか考えるのはやめたんだ。つまり、偏見を捨てることにしたんだ。
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- ディエゴ:それとね、誰かにとって特別な意味を持つ映画であることが大事だと思うんだ。そういう作品にはパーソナリティがあるし、存在する意義がある。監督と、彼の語りたいストーリーとの関係が大事なんだ。
あるストーリーを語りたいという誰かの欲求、表現したいことを持っているクリエーター、監督──そういった人たちと縁を結んでいくのが僕らのやってきたことだし、これからも続けたいことなんだ。映画そのものよりも、ストーリーを語ることに情熱を持った人自身が大事なんだ。
プロジェクトを決めるときは、目をつぶって「う〜ん、そう、その雰囲気いいね」なんて言って決めるわけじゃないんだ。気持ちがつながるかどうかが重要で、それが健康な「ファミリー」の秘訣だと思う。
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(10/02/20)
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Gael García Bernal
1978年メキシコ生まれ。7歳で舞台に立ち、20歳のときにアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』(99)で映画デビュー。『天国の口、終わりの楽園。』(01)では、共演のディエゴ・ルナと共にヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を受賞。主な出演作は『モーターサイクル・ダイアリーズ』(03)『バベル』(06)など。『太陽のかけら』(07)で監督デビュー。05年にディエゴ・ルナと制作会社Canana Filmを設立。
Diego Luna
1979年メキシコ生まれ。幼なじみだったガエル・ガルシア・ベルナルと共に6歳で舞台デビュー。『天国の口、終わりの楽園。』(01)では、共演のガエル・ガルシア・ベルナルと共にヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を受賞。主な出演作は『フリーダ』(02)『ミルク』(08)など。07年にはドキュメンタリー映画『J.C. Chavez』で監督業にも進出。05年にガエル・ガルシア・ベルナルと制作会社Canana Filmを設立。
『ルドandクルシ』
2010年2月20日よりシネマライズほかにて全国順次公開
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