藤井美菜

凛とした強さを感じさせる、期待の若手実力派

 

『恐怖』藤井美菜インタビュー

『恐怖』藤井美菜インタビュー

 

漠然とした恐怖を抱えながら生きている

  • 『リング』『呪怨』などの傑作ホラーを次々に世に送り出し、ハリウッドをはじめ、世界中でジャパニーズホラー・ブームを巻き起こした一瀬隆重プロデューサー。彼が製作し、ホラー映画で定評のある高橋洋が監督した『恐怖』が、7月10日より公開される。

    人体実験で脳手術される人々の様子を写した1本の記録フィルム。その映像のなかの不思議な白い光を目撃してしまったことで崩壊してしまった家族──父親は自殺。医師である母親は、フィルムに記録されていた脳の人体実験に没頭することとなり、姉は死への誘惑に取り憑かれ失踪……。

    この作品で、姉の失踪にまつわる真実を追う気丈な妹・かおりを演じたのが藤井美菜。藤井は、カーリングに打ち込む女子高生たちの青春を描いた『シムソンズ』で映画デビュー。以後、映画、ドラマで活躍する若手実力派だ。劇中では、陰鬱とした空気のなかで凛とした美しさを放ち、存在感を発揮している彼女に、映画の見どころなどを聞いた。

    [動画]『恐怖』藤井美菜インタビュー

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  • ──ホラー映画に出演した感想は? また、ホラーはお好きですか?
  • 藤井:正直、この作品に関わる前は食わず嫌い的なところがあり、あまり見たことがありませんでした。でも、出演が決まった時点で高橋洋監督が脚本を手がけた『リング』などを拝見し、音響やカメラワークに独特の世界観があり、面白いジャンルだな、と。なので、撮影に臨む頃には興味もわいてきて、すごく楽しみになっていました。
    ただ、主演ということで出番が多く、緊張感ただよう役でもあったので疲れはありました。でも、現場ではみなさんがすごく優しくて、とても楽しかったですね。
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  • ──演技で苦労した部分は?
  • 藤井:普通の映画だと、演じるキャラクターには陰と陽の両方の部分がありますが、今回は陰しかなくて……。「ギョッとする」「ハッとする」「ゾッとする」という幅の狭い3つの感情のなかで演じ分けないといけなかったのですが、シーンが違えば、同じ「ゾッとする」でも感情は微妙に違います。そんな違いを表現するのが大変でした。
    しかも、そんなにセリフの多い役ではないので、表情や仕草ですべてを表現しなければいけない。それも難しかった要因ですね。
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  • ──監督から、どんな演技指導を受けましたか?
  • 藤井:「かおりは強い女性なので、目の強さを大事にしてほしい」と言われました。たとえば、戸惑うお芝居をしたときに、最初は目をそらす演技をしたのですが、監督から「かおりは戸惑いはするけれど、芯が強いので、目は常に強くあってほしい。視線をそらさないでほしい」と指導を受けました。
    今までにないパターンのお芝居だったので難しくはありましたが、監督のおかげで、彼女の強さが表現できたと思います。
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  • ──マッドサイエンティストとなってしまった母親を演じた片平なぎささんの演技が圧巻ですね。
  • 藤井:現場でも圧倒されていました。撮影以外ではすごく気を遣ってくださり、優しくて穏やかな方なのですが、いざ本番となると空気が張り詰めるというか……。片平さんに引っ張っていただいたからこそ、この作品を演じ切れたのだと思います。
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  • ──藤井さんご自身には、恐怖の体験はありますか?
  • 藤井:霊感などがまったくないので、心理現象みたいなものは全然、経験したことがなくて(笑)。監督にも同じようなことを聞かれたのですが、そのときは、子どもの頃にトカゲを捕まえたときのことをお話ししました。
    自らしっぽを切り落としてまで逃げていくトカゲに、生きることへの執念を感じて、すごく衝撃を受けたんです。
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  • ──今、怖いと思うことはありますか?
  • 藤井:日常生活が壊れてしまったら……と思うと、恐怖を感じます。家族にも周囲にも恵まれて、好きな仕事ができて、私はすごく恵まれた環境にいると思うのですが、ある日戦争が起きたり、身近な人がいなくなったりして、この日常が壊れてしまったらどうなるんだろう、と。壊れないでほしいと思いますが、壊れないという保証はどこにもないので、漠然とした恐怖を、心のなかに抱えながら生きている気もします。
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  • ──普段はどんな映画をよく見ますか?
  • 藤井:コメディよりは、しっとりした作品を好んで見るかな。
    読書も好きなのですが、日常生活のなかのちょっとした感動や気持ちの揺れをじっくり描いているような本が好きです。瀬尾まいこさんの「幸福な食卓」はとても好きですね。
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  • ──最後に、映画の見どころを教えてください。
  • 藤井:現代医学においても未知の部分がたくさんある“脳”を操作することで、人間を異次元の世界に誘(いざな)う作品です。フィクションではありますが、もしかするとノンフィクションになるかもしれないという、説得力があり奥の深い作品。1度だけではなく、2度、3度と見ていただくと、その都度、違う恐怖を何度でも味わっていただけると思います。

    ヘアメイク:植村タケヒサ(Fulltool)/スタイリスト:猪上佳恵(エス・キス)

(2010/7/9)

『恐怖』藤井美菜インタビュー

ふじい・みな
1988年、新潟県生まれ。小学生の頃から舞台に立ち、05年にインテルのCMに出演。06年に第27回ビクター・甲子園ポスターキャンペーンのイメージキャラクターに。『シムソンズ』(06)でスクリーンデビュー。『未来予想図〜ア・イ・シ・テ・ルのサイン』(07)『犬と私の10の約束』(08)などにも出演している。

動画マーク

『恐怖』藤井美菜インタビュー

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撮影中の様子。左から高橋洋監督、藤井美菜、片平なぎさ(後ろはスタッフ)

 

『恐怖』藤井美菜インタビュー
 『恐怖』
2010年7月10日よりテアトル新宿ほかにて全国順次公開
(C) 2009「恐怖」製作委員会

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