上川隆也×早乙女太一

舞台出身の2人が、お互いの魅力などについて語った

 

ゲキ×シネ『蛮幽鬼』上川隆也×早乙女太一インタビュー

ゲキ×シネ『蛮幽鬼』上川隆也×早乙女太一インタビュー

 

美しさはあまり意識はしなかった(早乙女)

  • 劇団☆新感線の舞台を映像化したゲキ×シネ『蛮幽鬼』は、デュマ作の『モンテ・クリスト伯』(巌窟王)モチーフにした復讐劇だ。陰謀渦巻く架空の古代国家を舞台に、人間の業を深くえぐり出していく。

    オリジナルの舞台は2009年に上演され、演劇雑誌「えんぶチャート2009」作品部門&俳優部門で1位になった傑作。それを17台ものカメラを使い、劇場の迫力をそのままに、舞台公演ではなかなか見ることができない役者のアップなどを交えながら、1本の映像作品へと仕立て上げた。

  • そんな『蛮幽鬼』に出演する上川隆也と早乙女太一を直撃。2人に初共演の感想から稽古場の雰囲気など、作品にまつわる様々なことを語ってもらった。

    [動画]上川隆也×早乙女太一インタビュー

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  • ──2人は今回が初共演だそうですが、お互いの印象は?
  • 上川:大衆演劇の若手の旗手として、その存在はよく知っていました。ただ、改めて本人を目の当たりにして、年齢からは到底想像もできないほどの落ち着きや配慮みたいなものを感じたので、正直、肝を抜かれたという感じですね。
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  • ──それはどこで、どういう風に感じたのでしょう?
  • 上川:劇団☆新感線の稽古って、出演シーンがない日は稽古場に行かなくていいんですね。なので、最初のうちは太一と一緒に芝居をするシーンがなく、会えなかったんです。で、その日はたまたま、僕の稽古よりも、太一の殺陣の返しが先にあって、稽古場に入ったら太一が殺陣をやっていて。そのときの太刀さばき、殺陣のすごさが最初の印象だったんです。敵の槍を奪って、何人か倒してから自分の剣を抜いて、さらに全員を斬り倒すという複雑な殺陣で、前後左右が入り乱れてかかってくるのですが、それを見事にこなしていた。すぐそばに殺陣師さんがいたので、「これ、結構かかりました?」って尋ねたら、「ううん、1回しかつけていない、すぐ覚えちゃったよ」って言われて。二重の意味でド肝を抜かれました。
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  • ──早乙女さんは舞台挨拶で「殺陣が好き、今回はいっぱいあって嬉しい」と話していました。
  • 早乙女:劇団という環境で育ったせいか物心ついた頃からオモチャが刀や扇子だったり…。遊びの延長で殺陣は子どもの頃からずっとやってきました。だから、自然と好きになった感じです。
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  • ──上川さんの印象は?
  • 早乙女:目力があって吸い込まれるようなイメージで、とても魅力的な方だと感じました。
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  • ──上川さんはこれまでにも、いのうえひでのりさんが演出する新感線の舞台に何度か出演されています。新感線は超人気の劇団ですが、どんな稽古場の雰囲気なのでしょう?
  • 上川:毎回思うのは、いのうえさんが稽古場の雰囲気を意識しながらコントロールしていること。演出で迷うことがないし、僕らに必要な情報は必ず用意されているんですね。なので、僕らが疑問に思ったりすることで立ち止まることがない。さらに、言葉だけでなくて、最初に動きから指示を出してくれるので、誰に向かってどういうテンポで、どのタイミングでセリフを言うかというところまで、全部、絵になるように作られているんです。
    その上、いのうえさんと長年に渡って舞台を作ってきた劇団の方もいるので、交わされる会話1つひとつが常に活性化につながっている。僕らはそれを端で聞いて、笑いながらノセられていく。すべてがスムーズに流れている印象がありますね。
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  • ──早乙女さんは新感線に初参加ですが、いかがでしたか?
  • 早乙女:すんなり稽古の雰囲気に入っていけた感じですね。気づいたら、なかにいたみたいな。
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  • ──早乙女さんの今回の役は、強さと美しさとを併せ持つ役ですが、この2つをどんな風に共存させているのでしょう?
  • 早乙女:うーん……、美しさはあまり意識はしなかったですね。
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  • ──それは初めから身についていると?
  • 早乙女:身についてるということではないのですが、何でしょう……、意識的にという訳でもなく、無意識ってわけでもないですけど、無意識に意識していたりとか(笑)。
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  • ──本作は『巖窟王』をモチーフにした復讐劇となっています。上川さんは、友人に裏切られ投獄されてしまう伊達土門(だてのどもん)という役を演じていますが、出獄後はより表情にすごみが出ています。何か役作りのヒントはあるのでしょうか?
  • 上川:新感線の芝居に出るときに、とても助かると思うのは、稽古前にパンフレットの撮影があることなんです。その段階で演出サイドがどういうビジュアルやキャラクター造形を考えているのかっていうのを示してくれるんです。例えば牢屋の中ではどれくらい汚れているのかとか、その後はどうなるのかとか。なので、僕らはメイクアップしたり、写真になった自分の姿を見て、逆に役柄へフィードバックしていくところもありますね。
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  • ──ゲキ×シネでは、演劇公演をそのまま映像として収録しています。撮影が入ることで、何か演技に変化があったりするのでしょうか?
  • 上川:もちろん、収録が入ることはわかっていますが、だからといって収録日にお芝居を変えることはありません。むしろ、その前後の回に公演を見られる方と同一クオリティーのものを演じる方が正しい姿勢だと思います。僕らはいつもと同じように演じ、あとは撮られるのに任せる。それが、どう切り取られたかは、それこそ演出や編集サイドの思惑に委ねるべきで、だからこそ予期していない絵が山ほどあるんですよ。
    映像作品の場合って、こっちの角度から撮られているっていうのをわかって演じているので、自分でもどんな映像になっているか、ある程度予想できる。けど、演劇の場合はすべてのお客様に向けて演技をするわけで、カメラも何台もあり、最終的にどのカメラの絵が使われるかもわからないので、(完成作は)意外すぎて、とても気恥ずかしいですね。

(2010/10/4)

上川隆也

かみかわ・たかや
1965年生まれ。89年に演劇集団キャラメルボックスに入団。95年にNHKドラマ『大地の子』の主役・陸一心役を演じて脚光を浴びる。その後、97年にエランドール新人賞、98年に映画『東京夜曲』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。00年には『梟の城』で日本アカデミー賞助演男優賞を受賞する。舞台以外でもテレビドラマ、映画等で活躍。いのうえひでのり演出作品への参加は、『天保十二年のシェイクスピア』(02)があり、劇団☆新感線作品への参加は『SHIROH』(04)以来、2度目となる。


早乙女太一

さおとめ・たいち
1991年生まれ。大衆演劇の劇団、劇団朱雀の二代目。03年に北野武監督作『座頭市』で映画デビュー。05年には同じく北野作品『TAKESHI’S』に早乙女太一役で出演する。大衆演劇の女形として早くから注目を集め、バラエティ番組やテレビドラマ等にも出演。08年には主演舞台『早乙女太一〜千年の祈り〜』が大劇場の最年少座長記録を塗り替えた。近年では外部の部隊にも参加。劇団☆新感線には本舞台が初参加となる。

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ゲキ×シネ『蛮幽鬼』場面写真

ゲキ×シネ『蛮幽鬼』場面写真

ゲキ×シネ『蛮幽鬼』場面写真
 ゲキ×シネ『蛮幽鬼』
2010年10月2日より新宿バルト9ほかにて全国公開
(C) 2010 松竹/ヴィレッヂ

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