江口洋介

心に深い傷を負った伝説のパティシエを好演!

 

『洋菓子店コアンドル』江口洋介インタビュー

『洋菓子店コアンドル』江口洋介インタビュー

 

ケーキの食べ方では、結構苦労しました(笑)

  • まるで宝石のような美しさで人々を魅了するスイーツの数々。そんな極上な甘さを持つスイーツ作りに打ち込むパティシエたちのほろ苦い人生を描いた『洋菓子店コアンドル』が、2月11日から公開となる。

    主演は江口洋介と蒼井優。本作で、悲しみと絶望から前に進むことをやめてしまった伝説のパティシエに扮した江口に話を聞いた。

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  • ──この映画のあらすじだけを聞くと、伝説のパティシエが若い女性を導くストーリーを想像してしまいますが、実際はその逆。若者に感化され、人生を再生させていく役でしたね。
  • 江口:確かに“伝説”をどういう風に表現すればいいのか、最初は困りました(笑)。でも、脚本を読んだら、(自らが演じた)十村は実はとても“もろい”人間で、(蒼井優扮する)なつめに出会わなければ、彼はずっと塞(ふさ)いだままだったと思うんです。だから、映画のムードは、なつめが作っているんですよね。
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  • ──今回は18歳年下の蒼井さんとのW主演でしたが、若い俳優さんと共演して感化されることってありますか?
  • 江口:自分の20代の頃はどうだったかな、と思いましたね。若い人たちは、子どもの頃から親にビデオカメラで撮られ慣れているせいか、とてもシンプルに演じるのですごく影響されます。
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  • ──劇中で、江口さんがケーキを食べるシーンが何度も出てきます。「食べる」という行為はあまりに日常的なので演じるのが難しいと聞いたことがありますが、いかがでしたか?
  • 江口:確かに難しかったですね。食べている間にセリフが飛んじゃったり、味わったりしていると間が悪くなることもあるのですが、「味わっている部分も表現したい!」と思ったり……。この役は味を“分析”するような役だったので、(深川栄洋)監督には『科学者のようにクールに淡々とやってくれ』と言われました。
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  • ──ケーキをナイフとフォークで食べるというのが印象的でした。
  • 江口:今までケーキをあんな風に食べたことはなかったんですけど、(タルトのように)下が堅いケーキだと切れなくて、結構苦労しました。切り終わった後、(ナイフが皿に当たって)カツーン!って音がしちゃって(笑)。
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  • ──1987年に映画主演デビューして以来、24年が経ちましたが、そもそもなぜ俳優という仕事を選んだのですか?
  • 江口:「やりたい」と思ったんでしょうね。
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  • ──他の選択肢はあったんですか?
  • 江口:コックになろうかな、と思ったこともありました。ただ、俳優を始めてからも、「よし!」と思えるまでに何年もかかりました。
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  • ──若い頃は現場で「帰れ!」と言われたこともあるそうですが、辛い経験を乗り越え、俳優を続けられた原動力はどこらへんにあるのでしょうか?
  • 江口:その時々で違うと思いますけど、単純に「俳優という職業でメシを食いたい」という気持ちが大きいでしょうね。
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  • ──そんななかで、社会派問題作『闇の子供たち』(08年)への出演はターニングポイントだったように思います。いかがですか?
  • 江口:そうですね。20代はトレンディドラマと呼ばれる作品を一生懸命やっていて、でも30代は映画をやりたいな、と。そんななかで『闇の子供たち』の役をいただき、やってみた。あの作品に出たことで、物事の見方が変わりましたね。
    あの役は、自分の感覚や想像だけでは演じられない。資料を読んだり取材などをするので、時間や余裕が必要ですね。それによって、普通では知ることのできない情報を知り、心を動かされることも多い。20代から30代前半の頃より深い役作りができるようになりました。あんまりやり過ぎるのも良くないかなと思う瞬間もありますが、とにかく“役作り”へのアプローチはどんどん変化していると思います。
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  • ──舞台にも出られてますよね。
  • 江口:舞台をやっていると、俺はセリフを言ってお金をもらってるんだという風に、シンプルに思えるんですよね。とにかく、(映画でもドラマでも)現場が好きです。その気持ちは、映画の現場を一番最初に見たときから変わりません。当時は「なんだよ」と思うくらい“濃い人”たちがいっぱいいたんですけど(笑)。現場で、朝から晩まで撮って、みんなで理想型に向かって行く──そういう空気が好きですね。

(2011/2/10)
(写真:渞忠之/ヘアメイク:勇見勝彦[THYMON]/スタイリスト:山本康一郎)

 

『洋菓子店コアンドル』江口洋介インタビュー

えぐち・ようすけ
1968年東京都生まれ。87年、『湘南爆走族』で映画主演デビュー。主な出演作はテレビドラマ『東京ラブストーリー』(91)『ひとつ屋根の下』(93)『チェイス〜国税捜査官〜』(10)『スクール!!』(11)映など。映画『スワロウテイル』(96)『闇の子供たち』(08)『GOEMON』(09)『パーマネント野ばら』(10)など。

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『洋菓子店コアンドル』江口洋介インタビュー
 『洋菓子店コアンドル』
2011年2月11日より新宿バルト9ほかにて全国公開
(C) 2010『洋菓子店コアンドル』製作委員会

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