女性に演出されるのはとても楽しかった(S・ドーフ)
- 『ヴァージン・スーサイズ』(99年)、『マリー・アントワネット』(06年)などで女性の内面を繊細に描き、高い評価を得ているソフィア・コッポラ監督。彼女が初めて男性を主人公にした『SOMEWHERE』が、4月2日から公開される。
舞台となるのはハリウッドの伝説的ホテル、シャトー・マーモント。俳優として成功しながらも、家族と離れ退廃的な生活を送る主人公ジョニー・マルコが、11歳の娘との交流を通じて本当に大切なものに気づいていく様子が静かに描き出されていく。
本作は、第67回ヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞。映画のプロモーションで来日したコッポラ監督と主演のスティーヴン・ドーフに話を聞いた。
・[動画]S・コッポラ監督&S・ドーフ インタビュー
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- ──金獅子賞を受賞した感想をお聞かせください。
- コッポラ監督:権威ある賞で、大変嬉しく、ありがたく思っています。願わくば、これをきっかけに、もっと多くの方々に見てもらえれば嬉しいですね。
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- ──あなたの映画はいつもサントラがとてもステキですが、今回は沈黙の使い方が印象的でした。音を少なくしたのはなぜですか?
- コッポラ監督:今回はわざと音楽を少なくして、沈黙を多くしようと思いました。映画のなかで沈黙というのはとても重要です。いつもより音楽を少なくすることで、インパクトを強くしたいと思ったんです。その理由は、沈黙によって男の孤独感がより強調されるのではないかと思ったからです。
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- ──コッポラ監督と仕事をした感想を教えてください。
- ドーフ:今回のすべての体験が、僕にとってはハイライトでした。これまでたくさんの才能ある監督と仕事をしてきましたが、ソフィアとの仕事はとても楽しく、言葉にしにくいんだけど、今までとはちょっと違っていて、とてもリラックスできました。名のある監督のなかには気性の荒い人もいますが、ソフィアは穏やかでリラックスできたし、現場も親密さにあふれていました。この映画は僕にとっては特別な1本。またこういう映画に出会いたいけれど、なかなか出会えないんだよね。
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- ──家族について描いた作品ですが、おふたりにとって家族とは?
- コッポラ監督:映画では、現実と、楽しいけれど表層的な世界のコントラストを描いたつもりです。そのなかで家族は、地に足を付けて生きることを教えてくれる存在。私にとって家族とは、とてもとても大切な存在なんです。
ドーフ:僕にとっても、家族は最も重要な存在です。若い頃に道を踏み外さなかったのは、家族のおかげだと思います。ジョニー・マルコも、最終的にそのことに気づいていくんです。
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- ──主人公ジョニー・マルコは、コッポラ監督がもともと書いていたヴァンパイア映画のキャラクターだったそうですが、その映画は完成するのでしょうか?
- コッポラ監督:(笑)まだ数ページしか書いていない脚本なの。でも、最近はヴァンパイア映画が多いので、もう作らないと思います。
ドーフ:でも、ジョニー・マルコの次の仕事がヴァンパイア役っていうのはアリだよね(笑)。
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- ──日本の印象を教えてください。
- ドーフ:初来日したのが18か19歳の頃で、あの頃からエキサイティングな思い出があります。日本には友人もいるし、北野武監督にもお会いしたことがあるし、東京も日本も大好きです。今回も、出来ればソフィアと一緒にホテルから抜け出してショッピングくらいはしたいですね。ソフィアに教えてもらった東急ハンズにも行きたいし(笑)。
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- ──冒頭、主人公は人生を見失い孤独に見えます。監督は本作で初めて男性を主人公にしたわけですが、男と女の孤独には違いがあると思いますか?
- コッポラ監督:このキャラクターにはとても共感がもてるし、基本的に男でも女でも人間の本質は変わらないと思います。監督するにあたっては、私自身の男性的な部分を見つめながら、男性の孤独を描いていきました。
ドーフ:僕もソフィアと一緒で、本質は変わらないと思います。異なる部分もあるけれど、似通ってもいるんじゃないかな。でも、女性に演出されるのはとても楽しかったですね。
コッポラ監督:初めてだったの?
ドーフ:『I SHOT ANDY WARHOL』(96年)以来2回目なんだ。メアリー・ハロン監督も良かったけど、ソフィアはさらに素晴らしい監督です。
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- (2011/3/30)
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Stephen Dorff
1973年、アメリカのジョージア州で生まれる。90年に『パワー・オブ・ワン』で主役に抜擢される。94年に『バック・ビート』でブレイク。その他、主な出演作は『I SHOT ANDY WARHOL』(96)『ブレイド』(98)『ワールド・トレード・センター』(06)など。
Sofia Coppola
1971年、アメリカのニューヨーク州に生まれる。父は映画監督のフランシス・F・コッポラ。父の監督作『ゴッドファーザーPART III』(90)などに女優として出演した後、『ヴァージン・スーサイズ』(99)で長編監督デビュー。続いて『ロスト・イン・トランスレーション』(03)、『マリー・アントワネット』(06)を監督し、高い評価を得ている。『SOMEWHERE』(10)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞。
『SOMEWHERE』
2011年4月2日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
(C) 2010 – Somewhere LLC
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