裕木奈江

アイスランド初のホラーに、イカした“腐女子役”で出演!

 

『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』裕木奈江インタビュー

裕木奈江

 

ホエール・ウォッチングに行くときには気をつけましょう

  • 海外へ活躍の場を広げる裕木奈江。今回、彼女が選んだのは、なんとアイスランド“初”のホラー作品。

    ホエール・ウォッチングの観光客を乗せた船が海上を漂っている。不慮の事故により船長が亡くなったのだ。そこに捕鯨禁止で失業した一家の船が現れる。彼らは逆ギレ殺人家族だった!

    1人、また1人、大量の血が流れていく。観光客のひと組である日本人夫婦のメイドとして大虐殺現場に遭遇したエンドウを裕木が好演。しかし、このエンドウ、ただ泣き叫ぶ弱いメイドではなかった!? 凱旋作『レイキャヴ〜』が公開中の彼女を直撃。さらには2000年以降、チャレンジを続けているように映る女優・裕木の本音にも迫った。

  •  
  • ・[動画]裕木奈江インタビュー
      
  • ──プロデューサーの方が、デヴィド・リンチ監督の『インランド・エンパイア』をご覧になっていたそうですが、本作への出演はオファーだったのですか?
  • 裕木:オファーでした。プロデューサーの方が『インランド〜』と『硫黄島からの手紙』(監督:クリント・イーストウッド)の両方を見てくださっていて。それで、「この子、ちょっと」ということで(笑)お話しがきたんです。
  •  
  • ──それにしてもホラー、しかもアイスランド“初”のホラーですよね。出演を決めた一番の理由は?
  • 裕木:まず自分が望まれたということ。それともちろん脚本。加えて、とてもおもしろい役でしたので。ゲラゲラ笑いながら台本を読んでしまいました(笑)。「うそー、なんで!?」とか言いながら(笑)。で、これはやらせていただこう!と。
  •  
  • ── 確かにホラー好きから見ると、エンドウはなかなかイカした役でした(笑)。
  • 裕木:最初にお仕事をいただいたときは、アジア人はすぐに殺されるだろうというイメージがあったんです(笑)。でも台本を読んでみたら、わりと出番があって。ちょっと頑張って役作りしようかなと思ってチャレンジしてみました(笑)。
  •  
  • ──エンドウには少々、オタク系が入ったようなところも見受けられますよね。
  • 裕木:彼女は腐女子だろうと思って。秘書のような仕事をしていて、ストレスがたまっているんだけど、生き残るための技術であったり思考力であったり分析力を持っている。マニアックなスキルがあるんです。そこはおもしろいと思いましたね。
  •  
  • ──ジュリアス・ケンプ監督からの、エンドウ役への要望はどんなものでしたか?
  • 裕木:特殊な役ですからね。変な役なので、ちゃんと変に見えてほしい。それくらいですかね。結果、監督は喜んでくださっていたのでよかったかな、と。
  •  
  • ──演じる上で心がけた点はなんですか?
  • 裕木:いっつも余計なことを考えてそうな感じのする子。何かしていたり、しゃべっていても、それとは別に、いつも周りを見ながら、これはこうかもしれないとか考えている。なんとか自分の悪い状況から抜け出したいと思っている子。「この人生、大っ嫌い!」みたいな雰囲気が出るといいなと(笑)。
  •  
  • ──タイトルからも分かる通り、本作は『悪魔のいけにえ(原題:テキサス・チェーンソー・マサカー)』を想起させますが、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』などの作品を思わせるシーンもありましたね。
  • 裕木:え? どこだろう。
  •  
  • ──最後のほうの、…のところとか。
  • 裕木:あ、ネタバレになっちゃうかな(笑)。そうですね。
  •  
  • ──人間ドラマ的にも、人の嫌な部分が見えます。
  • 裕木:クジラを見て癒されたい人というのは、今、つまり癒されていないわけですよ。実はみんなストレスがたまっている。あ、これ以上はあんまり言えないかな。難しいですねぇ(笑)。
  •  
  • ──かなり重要な役柄を演じられたわけですが、完成作をご覧になっていかがでしたか?
  • 裕木:やったなって感じですかね(笑)。OK!変!!って(笑)。あと、他の方のお芝居に笑わせてもらいました。
  •  
  • ──ところで裕木さんには、やはりドラマ『北の国から』や『ポケベルが鳴らなくて』の印象が強いです。が、特に2000年以降、映画『光の雨』をはじめ、いろいろな作品に挑戦されています。女優としての心境や、目指すものの変化などがあったのでしょうか。
  • 裕木:心境の変化は特になかったです。ただ年齢が変わってくると、どうしてもいつまでも地方から出てきて東京で頑張っている女の子というのは無理が出てくる。そんなときに、こういう役をそろそろやってみたら?と声をかけてくださる監督や周りの方と出会えて、新しいものにも挑戦させていってくれた感じですね。
  •  
  • ──実際に挑戦した感想は?
  • 裕木:最初は怖かったです。それまでの役があって、それまでのお客さんやファンがいたわけで。でも役者としてはいろんな役を演じたほうが、やっぱり楽しい。犯人役であったり、弱い女だったり、強い女だったり。いろんなジャンルでいろんな役をやるほうが、私は好きです。
  •  
  • ──しかし海外の作品に挑戦することは、オーディションで役を得る必要があったりと、日本にいるより厳しい状況もあるのでは? モチベーションを保ち続ける、女優・裕木奈江を支える柱はなんでしょう。
  • 裕木:挑戦という気持ちよりも、年齢を重ねていってから、「あぁ、あれもやってみたかった」と手遅れになるのが嫌なんです。今でも英語はコンプレックスですけど、ちょっとはできるようになった。じゃあ、そのちょっとでできる役があるんじゃないかなって思うんです。一言のセリフの役でも、いい監督の作品に出られたら、役者の人生はいい方へ変わっていく。
    いい監督、いい脚本、いい役者さん。そうした場に自分を置くだけで、変わっていけるんです。気持ちが上がっていくというか。だから、なるべくその場にいたい。挑戦というより、そこにいたい、見たい。やっぱり好きという気持ちは重要です。30代からは好きなことを増やしてきました。それがありがたい方向に出て、今、こうした不思議な(笑)アイスランドの映画にも呼んでいただける、光栄なことに繋がっているのだと思っています。
  •  
  • ──最後に、『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』について観客へのメッセージをいただけますか。
  • 裕木:ホエール・ウォッチングに行くときには気をつけましょう。わたしがいるかもしれませんよ(笑)。なんて(笑)、ぜひ劇場にいらしてください!

写真・原稿:望月ふみ (2011/6/10)

 

裕木奈江ゆうき・なえ
1970年生まれ、横浜出身。80年代末に映画女優としてデビュー、90年代にはアイドル的な人気を博し、多方面で活躍。主な出演ドラマは『北の国から ’92年旅立ち』(92)『ポケベルが鳴らなくて』(93)。主な映画作品は『学校』(93)『光の雨』(01)『硫黄島からの手紙』(06)、『インランド・エンパイア』(06)など。

動画マーク

『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』裕木奈江インタビュー裕木奈江"

 

裕木奈江
 『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』
2011年6月4日より銀座シネパトスほかにて全国順次公開

作品紹介ページへ