1992年7月10日生まれ、東京都出身。2014年『おばけ』で映画初主演を務めると、同作で「MOOSIC AWARDS 2014」で女優賞を受賞。その後『リュウグウノツカイ』(04年)、『色あせてカラフル』(05年)、『少女』(06年)『高崎グラフィティ』(18年)など話題作に出演。テレビドラマでも「表参道高校合唱部!」(15年)、「架空OL日記」(17年)、「江戸前の旬」(18年)等に出演し活躍の場を広げている。
「MOOSIC LAB 2019」長編部門で準グランプリを受賞した『ドンテンタウン』は、シンガーソングライターのソラが、創作に行き詰ったとき、偶然引っ越し先で発見したカセットテープに吹き込まれた一人の男性の心の声を拠り所に、苦悩しながらも一歩前に歩み出そうと自身と向き合う物語。
そんな本作で主人公ソラを演じたのが、映画、ドラマ、舞台と幅広い活動を見せる女優・佐藤玲(さとうりょう)だ。演じたソラについて「20代前半の私そのもの」とリンクする部分が多かったという佐藤に、本作で得たことや、自身も一歩踏み出すきっかけになった作品について聞いた。
佐藤:本人にとっては大きな葛藤や心の変化があるのですが、対外的に見るとなかなか伝わりづらい機微を表現する必要があるなと感じました。ただ大きな決意などが特別あるわけではないので、個人的にはスッと心のなかに入ってくる本だなと思って読みました。
佐藤:確かになにをどう表現するかというのは難しかったのですが、ソラという子がほぼ私みたいな感じがしていたので、意識して感情の起伏をつけるというよりは、ただその状態を撮ってもらうという感覚でした。
佐藤:20代前半の私に似ているなと感じていました。そのころの私は自分がやりたいことと、人から見られるイメージが合致していなくて、かなり悩んでいた時期でした。ソラちゃんって女の子らしくなくてヌボっとしている部分があるのですが、そういうちょっとダサいところとか、かなり自分とリンクしていたと思います(笑)。
佐藤:童顔なので、20代前半でも高校生の役をやることが多くて……。そんなとき、ちょうど大学を卒業して、社会性を意識するようになったんです。周囲から自分がどう見られているかが気になりだして、自分がやりたいこととのギャップに悩んでいるような時期でした。
佐藤:『架空OL日記』という作品ですごく明るい役をやらせてもらうことがきっかけでした。それまでは陰のある役や、二面性のある役が多く、自分でも暗い役が自分の持ち味だと思っていたんです。だから明るい役というものに構えてしまっていて、来たら怖いなと思っていました。『架空OL日記』のときも撮影中は、かなり悩みが多かったのですが、いざ振り切ってやってみると、すごく楽しかったんです。周りの目を気にして怖がっているより、思い切ってトライしたことで道が開けた感じがしました。そこからあまり周囲の目は気にせず、進めるようになりました。
佐藤:台本上、どこがリアルでどこが空想か、自分でも良く分からないまま演じていたのですが、笠松さんは同学年ということもあり、とても接しやすかったです。事前にポスター撮影があったのですが、そのときもずっとふざけて遊んでいて、地元の友だちのような居心地の良さがありました。
佐藤:井上監督もプロデューサーさんも同学年だったので、すごく気心が知れるというかやりやすかったです。とにかく相談に乗ってくれるというか、私が感じたソラへの方向性を汲んでくださりました。
佐藤:みんなで作っている感覚が強いですね。だからといって学生映画のようなダレる感じはまったくない。一つのものを集中して作る集団として、私はすごくやりやすかったです。一方で、同世代の人の活躍は刺激になりますし、才能に嫉妬を感じたりもします。それがまた良いなとも思うんです。
佐藤:自分がなにをやりたいのか、もう一度明確にし直すことです。私は流されやすいというか周囲に影響を受けやすいので、自分にはなにができるかをしっかり確認し、仕事をする役者としての佐藤と、私自身がどう折り合いをつけていけるかがいまの課題です。
佐藤:役者って積み重ねて階段を昇っていくような仕事ではないのかなと感じています。例えば泣くというお芝居でも、作品によってはまったく違う表現が要求されます。それは経験を積んでいくことで成長しているというより、どれだけ表現を増やせるか。積み重ねるというより、広げていくものなのかなと感じています。
佐藤:もともと反省するのが好きなんです。自分をストイックに追い詰めていくことが嫌いではないんだと思います。
佐藤:『少女』という映画で三島有紀子監督とご一緒したのですが、あるシーンで何度かテイクを重ねてしまったんです。そのとき三島監督は、私がやりたいことは伝わってくるけれど、緊張してできないんだなと察してくれて、高い位置にいた私の両足を手で押さえてくれて「大丈夫だから」と言ってくれたんです。その行動でフッとなにかが解けたんです。役者の心情や感情をコントロールしていただけたのはとても新鮮な経験でした。
佐藤:自粛中、いろいろな娯楽が制限されていたと思います。まだ大変な時期であることは変わりませんが、映画というメディアの魅力を感じていただけた方もいるのかなと思っています。そういう方に、是非劇場に足を運んでいただき、映画の楽しさを再確認していただければと思います。
佐藤:ずっと昼寝をして、とにかくグータラな生活をしていました。勉強しなきゃ、いろいろなことを吸収しなくちゃ……という思いもあったのですが、私はあえてそれをしないことを選択しました。ダラダラしていることで、今後活動が再開できたとき、思いっきり仕事に向き合えるのかなと思ったんです。私にとってはとても意味のある時間だったと思っています。
(text:磯部正和/photo:小川拓洋)
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