1993年5月7日生まれ。大阪府出身。2010年に『リアル鬼ごっこ2』でヒロインに抜擢され、映画デビュー。主演を務めた河瀨直美監督作『2つ目の窓』(14)は、第67回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、同作品で第4回サハリン国際映画祭主演女優賞を受賞する。その後、ニューヨーク大学の演劇科で学ぶために渡米。帰国後、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』などに出演。主な出演作は、『孤狼の血』(18年)、『サムライマラソン』(19年)、『ソローキンの見た桜』(19年)、今後公開を控える『461個のおべんとう』『燃えよ剣』など。
自分の体をもっと大切にしようと考えるきっかけになった
今週末公開の注目作の一つは、中目黒でルームシェアをする2人の女性を描いた映画『Daughters』。ファッションイベント等の演出家として第一線で活躍する津田肇が監督と脚本を手掛け、初の長編作品を完成させた。イベントデザイナーの小春とファッションブランドで広報として働く彩乃を主人公に据え、予期せぬ妊娠をきっかけに悩みながらも新たな人生を歩んでいく姿が描かれている。
今回、母親として生きていくという選択をする彩乃を演じたのは、実力派女優の阿部純子。近年は『ソローキンの見た桜』や『燃えよ剣』といった話題作に出演し、注目を集めている。そこで、本作を通じて得た経験や小春を演じた共演者である三吉彩花とのエピソード、女優としての将来のついて語ってもらった。
阿部:映像、音楽、インテリア、ファッションといったすべてを総合的に使って表現していて、いままであまり見たことがない映画だと感じました。女性の微妙なゆらぎや感情の変化が伝わってくるだけに、男性の監督が作っていることに驚く方もいるんじゃないかなと思います。
阿部:今回は私が経験したことのない妊娠や出産というものがテーマだったので、すべての資料を読むだけではなく、出産を控えている方々のための体験学習にも参加させていただいたり、彩乃と同じ職業で出産経験もある監督の奥さまとお話をさせていただいたりもしました。やっぱり私自身、そのあたりが一番不安でしたから。あとは、出産するまでの波打つような感情を表現することが大事だと思っていたので、「もしお腹に赤ちゃんがいたら、どうしたらいいのか」ということはつねに考えるようにしていました。
阿部:実際に経験してみないとわからないところはあると思いますが、彩乃のように自分のペースで生きてきた人にとって、妊娠は不安定な気持ちになってしまう部分もあるんだなと知りました。でも、新しい命が宿り、自分だけの体じゃなくなるということはどういうことなのかというのを考える時間を持つことで、もっと自分の体のことを大切にしようと考えるきっかけにはなったと思います。
阿部:劇中で描かれているのは、自分の意志で出産をすることを決めた彩乃とそれに寄り添う小春。どちらかというと私は寄り添うことが多いタイプなので、そういう意味では小春の方に共感する部分が多かったように感じました。でも、私も一度決めたら突っ走っちゃうところがあるので、そういうところは彩乃と似ているところかなと(笑)。決めたことはやり通すことが大事だと考えている方ですね。
阿部:美容やファッションについてたくさん教えていただいたり、アドバイスをくださったりしたので、年齢的には私のほうが少し上なんですけど、頼れるお姉ちゃんみたいでした。
阿部:自分で体のコントロールができないことに対していらだってしまう難しいシーンがあって、どう演じようか悩んでいたときがあったんですが、三吉さんは言葉をかけるわけでもなく、ただ静かにそばで寄り添ってくださいました。そんな風に、三吉さんが小春でいてくださったからこそ、私は彩乃を演じることができているんだと感じられたので、役としても女優としても信頼関係が生まれたと思っています。
阿部:今回は撮影に入る前に三吉さんと二人で、実際に撮影に使うマンションの部屋で過ごしてみたこともありましたが、そういう時間があったからこそ、どのシーンでも硬くならずにいられたんだと思います。私たちの間の友情も限りなく役に近いものになったので、2人でいるときは、将来や仕事のこと、あとはプライベートのことまで何でも話し合いました。とはいえ、基本的に私が悩みを三吉さんに話して、具体的なアドバイスをもらうことが多かったかもしれないですが(笑)。
阿部:とてもたくましくて頼りがいがあるんですけど、一方でものすごく繊細な部分を持ち合わせている方ですね。私が感じていることもすぐに察してくださいますし、一緒の空気を無理なく分かち合ってくれる方なので、繊細な感性をお持ちなんだと感じました。
阿部:日本の四季をきちんと撮った作品は珍しいので、すごくぜいたくなことですよね。同じ役を長期間演じることになりましたが、その間はつねに頭のなかのどこかに彩乃がいたと思います。もちろん、別の現場では目の前にある仕事に集中はしているんですけど、ふとした瞬間に「もし赤ちゃんがいたら?」とか「自分が彩乃だったら?」といったことを考えることはあったので、8か月かけて役を構築できたのは大きかったですね。
阿部:家具も照明も飾っている絵も壁紙も、すべてに対して監督がこだわっていたので、「私は彩乃としてこの世界にそのままいるだけでいいんだ」という安心感はありました。映画の世界観に身を委ねるような感じでしたね。そのなかでも好きだったのは、まったく違うテイストで作り上げられていた小春と彩乃の部屋。色や置いてある本など、役の性格に合わせて作られていましたが、どちらの部屋もすごく好きでした。
ハリウッドに行きたいという大きな夢をつねに持っている
阿部:最初に桜並木を2人で歩くシーンでは、ちょうど桜も満開だったので印象的でしたね。みんなで一緒にお花見気分を味わいながら撮影できたのが、楽しい思い出として残っています。
阿部:気が付いたら10年経っていたという感じですが、本当にいろんな方に繋いでいただいたおかげでいまの自分があるんだなと。そういうみなさんのためにも、人間としても女優としてももっと魅力的になりたいなと思いますし、それが原動力になっています。
阿部:つねに夢は大きく持ってたいので、ハリウッドに行ってみたいです! いまは要求されるレベルもどんどん上がっていますが、現場の方々と一緒に作品をひとつひとつ積み上げていきながら、みなさんの期待に応えていけるような女優でありたいと思っています。
阿部:余裕のある女性になりたいですね。いまは失敗したり成功したりの連続で落ち込んだりもすることもありますが、そういうときでもつねに周りの人に気を配り、他人の話を聞ける余裕を持てるようになりたいなと思っています。
阿部:いまは、オレンジですね。お仕事をさせていただくのがとにかく楽しいですし、昔に比べるとずいぶん明るくなったのかなと思うので。将来は、深みのある女性になれたらいいなと思っているので、深緑かな。
阿部:この作品の脚本を読んだとき、女性の選択肢や生き方において、「こうなければいけないんだということはない」と感じました。小春と彩乃の2人のようにたくさんの価値観があるなかで、自分にとって一番居心地の良いチョイスができる社会になっていったらいいなと思います。
(text:志村昌美/photo:小川拓洋)
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