2013年に女優デビュー。世界ジュニア武術選手権大会などでの優勝歴多数。映画初出演の『太秦ライムライト』(14年)でジャパンアクションアワードベストアクション女優賞を受賞。16年『キングダム』10周年特別動画でのキョウカイ役や、ドラマ『ウルトラマンジード』(17年)のヒロインを務めるなど、ドラマ、映画など幅広いジャンルで活躍中。
三谷さんは仏様、神様みたいな人でした(笑)
香取慎吾が主演を務め、演出・脚本を三谷幸喜が手掛けたことで話題となっているのが、9月18日より配信がスタートするAmazon Originalドラマシリーズ『誰かが、見ている』。何をしても予想を上回る失敗ばかりする主人公の舎人真一とその生活をのぞき見している隣人・粕谷次郎の様子を中心に描いているシチュエーションコメディ(シットコム)だ。
今回、舎人の隣に暮らす家族・粕谷家の父親を佐藤二朗、母親を長野里美が演じているが、娘のあかねに抜擢されたのは、若手女優の山本千尋。武術太極拳の選手として世界ジュニア武術選手権大会で金メダルを2度獲得した経歴を持ち、“新世代アクション女優”として注目を集めている。今回は初挑戦となったコメディのおもしろさや三谷組の魅力、共演者とのエピソードなどについて語ってもらった。
山本:すごく緊張しましたが、お客さんの笑い声にも助けていただきながらとてもいい緊張感のなかでできたと思います。その場でしか味わえない空気感だったので、貴重な経験をさせていただきました。
山本:今回はワンシチュエーションだったので、香取さんがお芝居をしている隣の部屋で私たちもサイレントのままお芝居をしていたんです。そこには「映像としては残らなくても、その場で見ているお客さんたちの世界観をくずしたくない」という三谷さん思いがあったからこそですが、それがシットコムの素晴らしさなんだなと思いました。
山本:私たちのお芝居に対して、お客さん以上に三谷さんが笑ってくださるので、まずはホッとしました。三谷さんの作品といえば、ベテランの方が集まっている印象がありましたが、今回参加してみてわかったのは、三谷さんが人から愛される理由。三谷さんが温かい人だからこそ、温かいキャストとスタッフ、そしてお客さんが集まって素晴らしい空間になるんですよね。本当に仏様、神様みたいな方だなと思いました(笑)。
山本:いたずらのようなサプライズはよくありましたね。たとえば、本番では違う小道具が置いてあったり、三谷さんが私と二朗さんには内緒で長野さんにだけこういうお芝居にして欲しいと伝えていて本番でびっくりさせられたり(笑)。でも、それによってお客さんがすごく笑ってくださっていたので、これも三谷さんの計算だと思うと、三谷組だからこそ味わえる瞬間なんだろうなと思いました。
山本:実は撮影に入る前に、「せっかく世界チャンピオンのスキルがあるのに、それをまったく活かせない役でごめんね」と冗談で言われていたんです。でも、そのあとに体を動かしたほうが私の緊張が解けると三谷さんが察してくださったのか、「普通の女の子だと思っていたのに、実はキレキレみたいなアクションできる?」と提案していただきました。
山本:実際の私よりもちょっと幼くて、天真爛漫な女の子と聞いていましたが、普段の私もこれくらいのテンションじゃないかなと。実家で家族といるときのような私のナチュラルな部分を三谷さんが引き出してくださったので、いつもの関西のノリに近いかもしれないですね。でも、撮影のたびにすごく体力を使ってしまっていたので、アクションするよりも大変な役だと感じたほどでした。
山本:香取さんが舞台に立った瞬間、私たちだけではなくお客さんも香取さんの虜になって、ハートを鷲掴みにされていくのがわかりました。お芝居のレベルが高いのはもちろんですが、愛されるキャラクターの見せ方が素晴らしくて。それを間近で見させていただけたのは、とても光栄でした。
山本:クールなところもある方なんですが、細やかな気遣いをたくさんしてくださって本当に優しい方だと思いました。頻繁に差し入れをしてくださったり、プレゼントをみんなに配ってくださったりしましたが、漫画に出てくる王子様のようにさりげないんですよね。私は自分のことしか見えていないところがあるだけに、これほどまでに周りに気配りできる方はなかなかいないと感じました。他人をきちんと見ることはお芝居にも通じる部分があるので、香取さんの人柄からはいろいろと学ぶことができました。
山本:1月に発売されたアルバムや以前出されたフォトブックを絵のお話をしたあとにわざわざ持ってきてくださったりしました。あとは、香取さんのブランドの帽子を粕谷家全員が色違いでいただいたことも。みんなでおそろいの写真を撮ったりもしました(笑)。
山本:当然のことながら役のうえでは長野さんがお母さんで、二朗さんがお父さんなんですが、普段は逆に二朗さんがお母さんみたいに寄り添ってアドバイスをくださるほうで、長野さんのほうがかっこよくてクールなお父さんみたいな感じでした(笑)。おふたりには本当にたくさん助けていただきましたが、今回はみんなで舞台を作っているような感覚だったので、自然と距離が近づくのも早かったと思います。
山本:一見、二朗さんはその場でいっぱいアドリブをされているように見えると思いますが、実は二朗さんの台本は誰よりもメモがびっしり書かれているんです。そんな風に事前に引き出しをたくさん作っておいて、アドリブに持っていくまでの計算もされているんだと知り、誰かと一緒にお芝居をするとはこういうことなんだと本当に勉強になりました。
山本:初回の撮影のとき、「緊張するけどがんばろう!」とみんなで話していたら、なんと二朗さんが始まって7秒でセリフを忘れてしまったことがありました(笑)。でも、素の二朗さんを見たことで緊張していたお客さんもすごく笑っていらっしゃったので、結果的に現場が和んだ瞬間だったと思います。
山本:普段から欠かさないようにしているのは、ちゃんとした食事をとり、ちゃんと運動をして、ちゃんと睡眠をとること。そのルーティーンが今回の現場でも活きたんじゃないかなと思っています。
山本:私は3歳から武術をしているので、運動をしない日が1日でもあると、それが逆にストレスになってしまうんです。なので、撮影がどんなに長かった日でも5〜7キロくらいはランニングをしますし、声を張るために腹筋と背筋を鍛えたりしています。話がアスリート寄りになってしまいますが、トレーニングが私にとってはリラックスできる方法。きれいな汗を流すと、質のいい睡眠が取れて、翌日は気持ちのいい朝が迎えられるんです。
山本:私がチャンネル登録しているほど大好きなのは、海外のシットコムやバラエティ番組。なかでも、『カープール・カラオケ』といって本物のアーティストの方々やハリウッドスターたちが車のなかで歌っている番組があるんですが、そういうのを見て笑うのは刺激にもなりますし、癒しにもなりますね。
山本:繰り返しになりますが、まずはトレーニング(笑)。あとはおいしいご飯を食べて、さっぱりした状態で映画を見ることですね。そのなかの1つでも欠けてしまうとストレスを感じてしまうほどです。
山本:私は中国武術から入って女優になりましたが、畑違いのところにきてしまったんじゃないかと感じていた時期もありました。でも、やっぱりこのお仕事がすごく好きなので、これからも女優としてがんばっていきたいなと考えていたときにいただいたのが三谷さんとのご縁。お芝居の楽しさも改めて知ったので、これからもお芝居にもっと触れていきたいと思っています。
山本:私はどちらかというと、型にはまってしまう部分があり、こうと決めたら抜けるまでに時間がかかってしまうタイプ。でも、香取さんや二朗さんは切り替えが早いので、三谷さんからのリクエストにもその場で柔軟に対応できるんですよね。そんな風に、素晴らしい役者さんのお芝居を間近で見させていただいて、私にとってはそういう部分が課題なんだと気付かされました。
山本:そうですね。ただ、私は夢よりも目標を持つほうが好きで、三谷さんとお仕事をさせていただいたことで新しい目標が生まれました。もちろんハリウッドに行きたいという目標も変わらずに持ち続けていますが、大きな目標に近づくために、小さな目標をコツコツとクリアしていけるようにがんばります。
山本:今回は初めてのコメディでしたが、もう一度コメディに挑戦したいですし、完全にアクションを封印してお芝居だけで演じてみたいと思っています。三谷さんともまた違う作品でご一緒できたらうれしいです。
(text:志村昌美)
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