お笑いコンビまんじゅう大帝国の一員。1994年生まれ、東京都出身。日本大学藝術学部卒業。在学中は日本大学藝術学部落語研究会に所属。第12/13回全日本落語選手権、「策伝大賞」決勝選出。2016年6月コンビ結成、2017年4月デビュー。結成直後の『M-1グランプリ2016』にて、アマチュアながら、3回戦進出を果たし話題を集めた。また、竹内は演技力の高さにも定評があり、役者としても活躍中。『ウルトラマンR/B』(18年)、『特命!おばさん検事 花村彩乃の事件ファイルSpecial』(19年)、『行列の女神〜らーめん才遊記〜』(20年)、SEA BREEZE WEBCM「Poolside Desteny」(18年)ほか多数出演。
『実りゆく』まんじゅう大帝国インタビュー
漫才コンビがマネージャーに「だまされた」と苦笑い
これは大変だと不安になって。震えていました/竹内
堤幸彦監督、大根仁監督らを擁する、オフィスクレッシェンド主催の「MI-CAN 未完成映画予告編映画大賞」で、堤幸彦賞受賞作品を獲得した予告編が『実りゆく』のタイトルで完全映画化。今週末より新宿武蔵野館ほかにて全国公開中だ。
予告編に続き、本作のメガホンをとるのは、芸能事務所タイタンのマネジャー八木順一朗監督。若手漫才師“まんじゅう大帝国”の竹内一希が主演を続投している。ほかに田中要次、三浦貴大、小野真弓、山本学といった実力派俳優陣も集結した。長野県のりんご農家を舞台に父と子のきずなを描き出した本作。今回、若手注目株の漫才コンビ、まんじゅう大帝国の二人に映画の話を聞いた。
竹内:いったん賞をいただいたところでゴールじゃないですけど、「よかったね、八木さん」と思っていて。とにかく『実りゆく長野』という予告編を褒めてもらえてよかったねという気持ちだったんで、本当にやるのかと。ただただビックリして。「八木さん、大変だ。頑張ってくださいね」と思っていたんですけど、竹内さんから、キャストはそのままいきますよと言われて。二重にビックリというか。本当、最初は驚いてばっかりでした。
竹内:そうなんです。最初の方は八木さんも、僕が緊張するのを分かってたのか、あまり情報を教えてくれなくて。「スケジュールはもう押さえました。ひとつよろしくお願いします」みたいな感じで。これはもうやるしかないなという感じでしたね。
田中:本編を撮ると聞いて、僕たちの手を離れたもんだと思っていたんですけど、八木さんから二人はそのままの役でと言われて「なるほど、予告編の長いやつをやるんだな」と思ったんですよ。でも打ち合わせを重ねていくごとに、どんどん大人が増えてきて、あれ、あれと思っているうちに、読み合わせや衣装合わせをやるごとにさらに大人が多くなってくる。そうなって、「思っていたのと違う。だまされた」と思ったんです(笑)。
竹内:八木さんも大人たちに囲まれてたからね。大変だったよね。
田中:そうそう。こんなガチなら言ってよと思いましたよね。
竹内:正直、僕は内容に関して、いい悪いと言えるところまでには達していなくて。台本も恐る恐る読んでいったんで、だから読むときが一番怖かったかもしれない。自分にできるのかなと。ただ内容は本当に、ちゃんとした映画になっているなと思って。これはちゃんと芝居ができないと、本当に邪魔しちゃうぞと。これは大変だと不安になって。震えていましたね。
竹内のこんな笑顔はお笑いの舞台では出たことがない/田中
田中:そうですね。難しかったです。台本を読んだ時に難しそうだなと思って。1回閉じて。難しいな、やりたくないなと思いながら、何日か見なかったふりをして。それで、あ、違う違う。役が決まったんだったとわれに返るという。
竹内:仕事だからね。
田中:それでまた読み直すんですが、自分と全然違う人をやるというのは、本当に難しいなと思いました。演技ってそういうもんだとは思うんですけど、どうしたらいいか分からない。だから現場でずっと、監督と「こうですか」「もっとやってください」「ああ、なるほど」の繰り返しで。なんとなくだんだん固まってきてから本番だったんで。本当に大変でした。きつかったですね。つらかった思い出です(笑)。
田中:漫才は2人だけなんで、融通が利くんですよね。駄目だというのもすぐ言えるし、今のそれはいいね、ということもすぐに判断できるし。舞台でやってみて、ウケるかウケないか試すこともできる。でも映画やドラマって、一発で出すしかないじゃないですか。それはなんだか怖い作業だなと思いました。相手が見えない中で完成させないといけないという怖さは、映画をやる前も、やった後も思いましたね。
竹内:表情で言うと、漫才の時は、1から10の段階で、ほとんど全部10みたいな振り切った顔をしているんです。驚いたら目をひんむくし。でもそれがお芝居となったら、そんなヤツいないよという話になりますもんね。
田中:そうだよね。
竹内:漫才は日常じゃないですからね。笑ってくださいというので、ニカッと笑ったら、どうやらそんなんじゃないなということになり。これは3なら3の笑顔、7なら7の笑顔というのを、1個1個、探らなきゃいけないぞと。やりすぎちゃう癖がついていたんで、そこがもう大変でした。だからもう、何なら顔も動かさないようにしようとして。なんとなく自然な加減を探っていったという感じですね。
田中:すごいよね。俺からしたら、このポスターの竹内の表情は見たことないもん。お笑いの舞台では出たことがない、ちょうどいい笑顔で。
竹内:これはちょうど6か7くらいの笑顔だね。
田中:これが6か7の笑顔なんだ! これは役者の仕事を象徴する1枚だね。本当に。
竹内:調整の結果がこの顔になったっていう。貴重な顔ですね。
竹内:もともと直接、頑張れとか、そういうことを言うタイプの人じゃないんで。でも、ご本人役で出てくださったり、題字も書いてくださったり。本当に快く協力してくださった。それが本当にうれしくて。もちろん田中さんもこうやって力を貸してくれたことが、何よりの応援だと思っていて。本当にうれしかったですね。
竹内:まさか爆笑問題さんとお芝居をする日がくるとは思っていなかった。お二人とお笑いの現場で会うというのは、ある種、目標にしてやってましたけど、お芝居となると、予想してなかったことなんで。これはすごく勉強になりました。
田中:もちろん八木さんには監督としての役割があるので。スタッフさんと話すときは、もちろんいつもの感じとは違っていて。ピシッとした監督の顔になってますけど。でもここってどんな感じですか? みたいな話をするときは、いつも仕事のアドバイスをくれるときのマネジャー八木さんと同じような感じで接してくれた。多分それは、僕らがやりやすいように気を使ってくれたのかなと思ってますね。
竹内:マネジャーと映画監督って対照的な職業だと思うんですよ。それを同時にやっていたんで、すごいなあと思って。八木さんの真面目さと人の良さが、どっちにも生きているんで、それはすごいなと思うんですね。
撮影は本当にきつかった/田中
竹内:エキストラとして、町の人にたくさん参加していただいて。皆さん、すごく自然なんですよ。本当に違和感なく、エキストラとしても参加してくださって。盛り上げてくださった。本当に町をあげて、この映画に参加してくださってるんだな、本当にありがたいなと思いながら、やってましたね。
田中:僕は酪農の町出身なんで、果樹園とかはあまり見たことがなくて。リンゴ農家の畑がバーッてあって、空の色が夕方になるとすごくきれいで。その景色はすごく覚えてますね。本当にすばらしい景色だったんです。でも本当に撮影がきつかったんですよね…。一番覚えているのはそれです(笑)。
竹内:本当に撮影は大変だったからね。
田中:ちょっとは褒めてくれないとね。
竹内:多めに褒めていただきたいですね。
監督:普段、マネジャーとして、まんじゅう大帝国の一番近くにいて見ている存在として。芸人が、違う役柄の芸人を演じるのはすごく難しいだろうなと思ったんですけど、2人は本当に真面目に向き合ってくれた。分からないことは質問してくれたし。僕自身も初監督で、本当に緊張の連続だったんですけど、そういう意味では2人が一番近くにいてくれることで、すごく安心して、のびのびと映画を撮ることができました。あと本編の中でもネタをやる部分が出てくるんですが、そういう部分は本物の芸人じゃないと臨場感やその場の空気、雰囲気は出ないと思うので。2人がいなかったらこの映画はこういう形にはならなかったと思うので、そういう意味でも感謝しかないですね。
監督:そうですね。大変だったと思います。
竹内:ずっとここで文句を言ってました(笑)。言いたい放題だったね。
監督:でも、本当に2人のおかげで良い映画になったなと思いますので、さらにここから広がっていくといいなと思いますね。
竹内:じゃ許そう(笑)。
田中:撮影は大変だったけど。結果、いいものができたのなら良かった。
監督:本当にありがとうございます(笑)。
(text:壬生智裕/photo:小川拓洋)
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