1980年1月9日、フランス・パリ出身。両親はポルトガル移民。20歳で俳優デビュー、2002年に短編映画で監督デビュー。2013年、両親をモデルにした初長編監督作『La cage dourêe(原題)』がフランスとポルトガルで大ヒットし、現在も2ヵ国で俳優、脚本家、映画監督として活躍している。俳優として『イヴ・サンローラン』(14年)や『あしたは最高のはじまり』(17年)に出演しており、『MISS ミス・フランスになりたい!』は2作目の長編監督作となる。
『MISS ミス・フランスになりたい!』ルーベン・アウヴェス監督インタビュー
圧倒的な美貌を持つユニセックスモデル、アレクサンドル・ヴェテール初主演
#LGBTQ#ルーベン・アウヴェス#MISS ミス・フランスになりたい!#フランス#フランス映画#ミス・フランスになりたい
男性・女性という2つの視点しかなかった今まで。批判すべきは“美の独裁”
アレックスの小さい頃からの夢、それはミス・フランスになること。「男のくせに」とクラスメイトに笑われ、ずっと心の中に封印していたその夢を、あることをきっかけに思い出した彼は、ミス・フランスを決めるコンテストに出ることを決意。下宿先の風変わりな同居人たちの応援を得て、男性であることを隠し、地区大会を勝ち抜いたアレックス。TVで生中継される全国大会の日が近づいてくるが……。
主人公アレックスを演じた、“圧倒的な美貌を持つユニセックスモデル” アレクサンドル・ヴェテールのスクリーンデビューが話題となった本作。モデルやTVドラマ俳優として活動していた彼を主役に抜てきし、共同脚本も務めたルーベン・アウヴェス監督に話を聞いた。
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監督:身近に性転換をしている人がいて、何年もの間、トランスジェンダーを主人公にアイデンティティについて語りたいと思い、脚本に取り組んでいましたが、上手くいきませんでした。そんな時、当時モデルだったアレクサンドル・ヴェテール(主人公アレックス役)と出会いました。とあるTVドラマに出演する俳優をInstagramで探している時に見つけたのです。彼が男性のルックスから女性のルックスへと自然に変貌していく様子を見て感銘を受けました。
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監督:私は彼に、女性としてどのように自分を表現したいのかを尋ねました。また、将来的に性転換を考えているかどうかも尋ねたのですが、彼にそのつもりはありませんでした。彼は女性になりたいわけではなく、自分自身の中の女性的な部分を強く感じているだけだからです。彼がきっかけとなり、それまで考えていたトランスジェンダーというテーマではなく、アンドロギュノス的なテーマを扱うことに決めたのです。脚本を書いている時、私はアレクサンドルに、女らしさとの真髄とはなんだろう?と尋ねると、彼は“マリアンヌ”と答えました。マリアンヌとはフランスの象徴です。そこからミス・フランスを夢見る少年の物語が始まりました。
監督:ミスコン(ミス・コンテスト)という馴染みのあるイベントを通して、私は「本当の自分を見つける」という普遍的なテーマを深めたいと思ったのです。主人公のアレックスを始め登場人物たちは、ありきたりの社会規範には収まりたくない人たちです。一方、ミスコンは、極端なほどに規定がある世界です。“ミス・フランス”になるためには、身長や体重などいろいろな美の規範を満たしていなければならず、彼らはそれに挑む。そういった世界に男性を紛れ込ませることは、ある種、その美の規範を批判することでもありました。しかし、この映画は、政治的な映画ではありあません。ミス・フランスを批判する映画でもありません。批判しているのは、“美の独裁”です。さらに、男性と女性という2つの視点からしか捉えられていなかった世界を壊して、作品に現代性を吹き込むことはとても楽しいことでした。
監督:確かにこの映画の中には、そうした社会批判があります。現代の社会は外見ばかりを重視して、内面に関して感心を示さない傾向があります。だから、外見の美しさを基準に作り上げられたような人間が生まれてくるのです。キム・カーダシアンのようなね。彼らはなんとかして自分を完璧であるように見せようとする。インターネットやSNSによって、外見重視の傾向が増幅されていることは確かだし、それは危険でもあります。この映画の主人公には一時、SNSで光があたり、フォロワーが増えたことによって、自分が愛されていると信じる瞬間があります。でも、その後、自分がある種の鋳型のようなものの中に迷い込んでしまったことに気が付くのです。
結局、自分自身を受け入れて、自分が自分を愛せるようにならないと、自分が存在しているという実感は持てません。主人公の周りには、本当の家族ではないけれど、家族のように彼を思いやってくれる人々がいます。つまり、自分を愛してくれる人こそが一番大事。それはSNSのフォロワー数とはまったく関係のないことです。もちろん、SNSは悪いことばかりではありません。私がアレクサンドルと出会えたのもInstagramのおかげですからね。
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