1990年3月26日生まれ、東京都出身。2004年、映画デビュー作『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭の史上最年少・日本人初となる主演男優賞を受賞。16年、『ディストラクション・ベイビーズ』でヨコハマ映画祭、キネマ旬報ベストテンの主演男優賞を受賞。その他の主な映画出演作は『許されざる者』(13年)、『クローズEXPLODE』(14年)、『最後の命』(14年)、『合葬』(15年)、『銀魂』シリーズ(17年・18年)、『夜明け』(19年)、『泣くな赤鬼』(19年)、今年は主演映画『ターコイズの空の下』と『HOKUSAI』が公開。10月からドラマ『二月の勝者―絶対合格の教室―』主演のほか、今冬はW主演作『浅草キッド』がNetflixで全世界同時配信予定。
首都からロケ地まで車で9時間! その遠さにびっくりした
14歳の時に『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞し、その後も映画やドラマ、舞台へと活躍の場を広げてきた柳楽優弥。30代を迎えた彼が海外合作映画で初主演を務めた『ターコイズの空の下で』は、日本・モンゴル・フランスの合作で、1ヵ月近いモンゴル・ロケ撮影が行われたロードムービーだ。
あるきっかけで、大企業の社長である祖父のためにモンゴルで人探しをすることになったタケシ(柳楽)と道先案内人役を担う馬泥棒のモンゴル人男性との旅は、途中さまざまな出会いを挟みながら、時にドキュメンタリー・タッチに、時に幻想的に描かれていく。
フランスを拠点に国際的な活躍をするマルチリンガル俳優・アーティストのKENTAROの人柄に惹かれ出演を決めたという柳楽に、刺激にあふれたモンゴルでの撮影、俳優としての思いなどを聞いた。
・『ターコイズの空の下で』予告編
・柳楽優弥がカンヌ映画祭主演男優賞を日本人で初めて、しかも最年少受賞した『誰も知らない』をTSUTAYA TVで見る
柳楽:確か飛行機に5~6時間乗って到着して、首都のウランバートルから撮影地まで行くのが車で9時間ぐらいでした。だんだん砂漠に入ってくんですけど、その移動時間に一番びっくりした(笑)。そんなに遠いんだ!と思って。運転手さんも砂漠で迷っていました。だんだん暗くなってきて星がすごくきれいでした。
柳楽:そうですね。台本にも細かいことは書かれていなくて、わりとその場で決めていく。例えば馬の群れを見つけたらそれを撮るとか、即興の雰囲気でしたね。
柳楽:『誰も知らない』の時がそうでした。KENTARO監督も、カメラの横で「こういうふうに言ってみて」とか、「ちょっとたばこ吸ってみて」と指示する程度でした。僕は20代ではキャラクターが強い役柄が多かったので、この作品はいい意味で自分と向き合える時間でした。タケシという役柄を意識するよりも、自分と向き合えたというか。こういうところが弱点なんだな、とか、どうやったらもうちょっと理想に近づけるんだろうとか。普通に旅して思うようなことを感じて。いい意味で、そういう余裕があったと思います。
柳楽:僕は決め込んでカチカチでやるより、その場で「こうやって」と言われるほうが、正直好きなんです。そういう演出でデビューしたからかもしれません。そういうスタイルの人はあまりいないので、KENTAROさんが、「こう言ってみて」「ちょっと動いてみて」とカメラ横で言ってくれたのはすごく居心地が良かったです。
柳楽:それは、あんまりなくて。5ヵ国ぐらいから人が集まって、いろんな言葉が行き交っている現場は初めてだったので、「これもまた何か、1つのネタになるな」という感覚が強かったですね。いろんな人と会えて楽しかった。
柳楽:KENTAROさんとの出会いですかね。ほんとに面白い人なんです。頭も良くて、いろんな引き出しを持っていて。これは会ってもらわないと分かんないかな。だけど、その出会いが大きいです。違う現場にいても、相談してしまいます。先日相談したときは、「柳楽、現場に行くときは心に剣を持って行くんだ。その剣がズタボロになっても血だらけになっても、現場には立ち向かわなきゃいけないんだよ」とアドバイスをくれました。
柳楽:そう。そんなこと言われて励まされていて。話していると落ち着くし、元気をもらえる。
柳楽:そうですね。
柳楽:ソルジャーとかアニマルとか言ってるんですけど(笑)。それがツボ過ぎて。ほんと面白いんですよ。
柳楽:どうやったらもっと良くなるだろうと常に考えています。今もずっと変わらず考えてるんですけど。海外で携帯も使えずにいると、いろいろ考えざるを得ないというか。自分が今まで当たり前と思っていたことを、違う角度から見られてちょっと視野が広くなる感じはありましたね。
10代の頃のいい感覚を思い出そうとしてた
柳楽:そうですね。撮影も2~3年前ですし。どういう映像になるのか全く想像ができなかったです。
柳楽:モンゴルで一番印象に残ったのは、まずみんな体が大きい! すぐ相撲を取り始めるんです。あと女性がすごく強いんですよね。遊牧民女性を演じたツェツゲさんは国際映画祭で受賞経験もある有名な女優さんですけど、すごくかっこいい方で、ご飯を食べに行って、僕が怖い人に絡まれたときも撃退してくれました。ケンカが強い人が偉いみたいな感覚があるというか、「絶対に負けない」という気性が前面に出るんですよね。それでいて知的で。すごいなって思いました。
柳楽:バイクが爆発するシーンですかね。実際に爆発させて、破片が飛んで来て。あれは怖かったな。爆発シーンも、日本じゃなかなかできないし。狼と対峙することもあんまりないじゃないですか(笑)。しかも狼を繋いでいるのが細い糸みたいなヒモで、「それじゃ狼逃げちゃうんじゃないのかな」って。
柳楽:いや、触れない(笑)。無事に終わって良かったです。爆発シーンは1回しかできないし。
柳楽:セリフで説明するよりも、表情ひとつで感情を表現するみたいな演技をされる方が多いです。それは僕も憧れるところだったので、学ぶことはとても多かったですね。日本で当たり前と思っているものではない感覚を味わえるというか。合作映画ならではなんだなって。
柳楽:本当に、今改めて考えています。役になりきるということを精いっぱいやってきたんですけど、それだけだと、もしかしたら自分のいい面みたいなものも押し殺しちゃってるんじゃないかなと考えていて。現場に入る前は、どうしても、いろいろ用意して行こうとしちゃうんですけど、勇気を持って、一旦空っぽな状態で現場に行って演出をしっかり受けることが大切な場面もあることを、この作品で改めて感じました。
柳楽:それは嬉しいです。10代の頃のいい感覚を思い出そうとしてたというか。20代に舞台やドラマいろいろ出演させてもらって、築き上げた考え方をいったん置いて、「自分はこういうの好きだったよな」「どういうふうにやってたっけ?」とちょっとトリップ状態みたいになっていました。たぶんタケシもそんなことを考えていたんじゃないかな。それが旅の楽しみなのかなと思うんです。今は海外旅行も行けないので、この作品を見て、旅感覚を味わっていただきたいなと思います。
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(text:冨永由紀/photo:小川拓洋)
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