1989年7月21日生まれ、アメリカのニューヨーク州出身。兄はマコーレー・カルキン。自身も幼い頃から子役として活動。『リッチー・リッチ』(94年)で兄マコーレーの幼い頃の役を演じ俳優デビュー。『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』(00年)で単独デビュー。『ホーンテッド・メモリーズ 戦慄ノ館』(16年)で映画初出演。その他の出演作は、M・ナイト・シャマラン監督の『サイン』(02年)、『HICK ルリ 13歳の旅』(11年)、ドラマ『キャッスル・ロック』(18年)など。
『ロード・オブ・カオス』ロリー・カルキン インタビュー
マコーレー・カルキン弟が血塗られた歴史の“邪悪な王”に
皆が未成熟だったことだけは間違いないんじゃないかな
1980年代後半の北欧で巻き起こったブラック・メタル・ムーブメント。その中核的な存在として多くの熱狂的な“信者”を得たノルウェーのバンド、メイヘムの血塗られた歴史を紐解いた映画『ロード・オブ・カオス』が公開される。悪魔崇拝主義を掲げ、「誰が一番邪悪か」を競い合う中で“王”として君臨することになるメイヘムのリーダー、ユーロニモスを演じるのはロリー・カルキン。マコーレー・カルキンを兄に持つ芸能一家に生まれた彼にとって、本作でユーロニモスを演じることが大きなチャレンジだったことは間違いなく、「約1年をかけ、心身ともにユーロニモスになりきった」という。役作りについて、ユーロニモスという青年について、そしてアンダー・コロナでの日常について、話を聞いた。
・『ロード・オブ・カオス』ジョナス・アカーランド監督インタビュー
ロリー:ユーロニモスになりきるには、彼が目にしたもの、耳にしたものを全部取り込む必要があると思った。だから、まず最初に彼の作った音楽を聴き、その次に彼の聴いていた音楽を聴いたよ。彼の読んだ本もね。それから、彼が親しかった友人や女性にも話を聞いた。そういった情報から、ユーロニモスという人間を自分の中で立体的に作り上げていったんだ。
ロリー:彼らを描くために必要だったのは「時間」だと思う。30年以上が経過して、ようやく彼らの言葉や行動が相対化して見られるようになってきた。何が悪かったのか、あるいは何が人々の共感を得たのか。当時の関係者たちが現在も中年になって生きているから、話を聞くこともできたしね。偏見にまみれた描き方ではなく、ただ当時起きたことを客観的に再現して、改めて世に問うことができたのは良かったと思うよ。
ロリー:撮影が始まる前に1年の準備期間を持てたことで、ぼく自身がユーロニモスを深く研究し、彼になりきることができた。その上でジョナスと対面して撮影に入ったから、大きな齟齬はなかったよ。ただ、時に過激な方向へ行き過ぎた場合は「もうちょっと人間っぽく演じよう」とか、もちろんその逆もあったけれど、軌道修正は何度かしたよ。ディスカッションも重ねた。音楽的な注文としては、劇中で演奏する曲を中心に9曲、しっかり演奏できるようにと言われたんだ。ぼく自身はまったく楽器の経験がなかったから、撮影地のハンガリー・ブダペストでブラック・メタル・バンドに指導を受けて、必死に練習したよ。
ロリー:そう。ドラムは趣味程度にプレイしたことがあったんだけど、ギターはまったく初めてだった。最初は(地元の)ブルックリンで何度かスタジオに入って自主練習をして、その後ブダペストに向かったんだ。
ロリー:それはないね(笑)。そこまで上達したわけじゃないから。
ロリー:彼は10代からバンドを、ぼくは10代から俳優をやってきた。若くして人前に出るようになった点はよく似ていると思う。ただ、彼はとても自分をプロモーションすることが巧みだったけれども、ぼくは全然そういうタイプじゃない。コーラが大好きだとか、ごく普通の若者という側面もあって、そういうところには共感というか親しみを感じたね。まったく共感できないのは、ファンの子たちに自殺を促すような発言をしたこと。大衆を惹きつけるアートが、必ずしも素晴らしい思想を持っているとは限らないということだね。
ロリー:この映画に関わる前は聴いたことがなかったけれども、今はたまに聴くよ。ぼくが好きなのは1970年代のアメリカン・ロック、特にジェファーソン・エアプレインが好きだね。
ロリー:ユーロニモスは本名をオイスタンといって、人前では注目を浴びるために過激なことをするけれど、実際は10代の未成熟な若者なんだ。そういう二面性を演じることに苦労したけど、それが楽しいところでもあった。ぼくはもともとプロレスが好きなんだけど、彼らはリング・ネームを持っていて、その役を演じるようなところがあるよね。それに近い感じで演じ分けをしたよ。バンドマンとしてのユーロニモスを演じる時は、ちょっとあごを上げて人を見下すような目つきを心がけたり。
ロリー:簡単に言って、若気の至りだと思う。ある人物は、ただ目立ちたかっただけかもしれないし、またある人物は、悪びれることをかっこいいと勘違いしていたのかもしれない。自分がのし上がっていくためのツールと割り切っていた人物もいるだろう。いずれにしても、皆が未成熟だったことだけは間違いないんじゃないかな。
ロリー:ジャックはもちろん、ヴァーグを演じたエモリー(・コーエン)とも親しくなったよ。映画の中でバンドを組むにあたって、実際にもバンドのような連帯感が生まれたんだ。曲を練習もしたし、自分はそのバンドのリーダーでもあったから、「バンドってこういう感じなんだな」という感覚を自分なりに理解することができたよ。
コロナ禍で溜め込んだ感情や考えが、必ず役者として生きてくるはず
ロリー:そうだろうね。こういう役はこれまで演じたことがなかったし、これからもそう演じられるものではないと思うから(笑)。とても貴重な経験ができたと思うよ。
ロリー:今は1840年代のニューヨークを描いた映画の準備をしているよ。
ロリー:この映画自体は2年以上前に撮られたものだけど、2020年は本当に身動きが取れなかったから、自宅で好きなことに没頭したよ。たとえば植物。身の回りに緑がたくさんあることがセラピーになると気づいて、自分でいろいろ調べたりね。この1年間で自分の中に溜め込んだ感情や考えが、必ず役者として生きてくると思っているよ。いろんな映画で「創造的な爆発」を見せられたら嬉しいね。
(text:伊藤隆剛)
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