アメリカ・ニューヨーク州オールバニー出身。2014年にバード大学を卒業。サンダンス映画祭で史上最年少の23歳で、USドラマ・コンペティション部門に選出された長編デビュー作『As You Are』(16年)で審査員特別賞を受賞。そのほかの作品に短編映画『As a Friend』(14年)、『Brujas』(17年)があり、2019年のTVシリーズ『Gaslight』では監督・脚本を務めた。次回作はイギリスの人気コミックが原作のSFアクション『Tank Girl』が予定されている。
『ドリームランド』マイルズ・ジョリス=ペイラフィット監督インタビュー
マーゴット・ロビーが映画化を熱望、製作と主演を兼任した意欲作
二人のケミストリーの描き方に最もこだわった
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』『スキャンダル』で2度のアカデミー賞ノミネートを果たし、DCコミックス『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クイン役でも人気沸騰のマーゴット・ロビー。今をときめくハリウッドのパワーウーマンが、新人ライターのオリジナル脚本に惚れ込み、自身の製作会社で映画化を実現させた意欲作『ドリームランド』が4月9日より公開される。
世界恐慌下の1930年代半ば、荒涼としたテキサス州の田舎町に暮らす17歳のユージンは、ある夜、納屋で大ケガを負った女性と出くわす。彼女こそが地元の銀行を襲撃し、警察から追われている強盗犯アリソンだった。危険な犯罪者だと知りながらもアリソンに惹かれるユージンは、彼女を匿うことにする。捜査の包囲網をかわし、自由をつかみ取ろうとするアリソンと、希望に満ちた新天地への憧憬を膨らませるユージン。出口を求めたふたりが織りなす、儚くも鮮烈なラブストーリー。
サンダンス映画祭で高い評価を得た長編デビュー作がロビーがの目に止まり、監督に抜てきされた新鋭、マイルズ・ジョリス=ペイラフィットにお話を伺った。
・『ドリームランド』マーゴット・ロビー&フィン・コール インタビュー
監督:ものすごく驚いた。数日間そのショックが続いたくらい。エージェントもついてなかったので、騙されているのかと思ったよ。正式に決まった後に感じたのは恐怖だった。1930年代という時代背景であったり、他の人が書いた脚本の映画化が初めてで、今までの映画作りと違っていたりと、この映画には恐怖を感じる要素が多くあった。それだけにやるべきだと思った。現場では、学びながら作っていく感じだったね。
監督:本作では、ユージンがアリソンと出会うことによって成長していく。映画成立のためのカギは二人のケミストリーだと思うので、二人の関係の描き方に最もこだわった。特に(ユージン役の)フィン・コールは、夢見がちな少年が、アリソンから愛されるような存在に変化していく成長を見せなくてはならない。もろさや強さなど内面にあるものを表現しなくてはならない役なので、フィンが一番大変だったと思う。
監督:時代物なので、当時の再現は大変だった。特に車は手に入りにくい。その上カーチェイスのシーンがあるなんて! 時速25kmしかでない車でカーチェイスのシーンを撮影したけど、素晴らしいスタッフだったから、良いシーンになっていると思う。
ダストボウル(環境破壊が原因で当時のアメリカ中西部で頻発した巨大な砂嵐)のシーンは大変だった。3つの州から映画用のホコリをかき集め、超大型の扇風機を3台使ってシャベルから飛ばして撮影した。最初は少量で試していたけど、まったく迫力も出なくて、結局カメラなどにシールドを付けて全開でやることになったんだ。ダストボウルと戦っているようなシーンは役者たちも実際に戦っていた。本当に大変だったけど、楽しかったよ。
監督:フィンはこれまで出会った中で最高の人物。優しくて思いやりがある。格好つけたりせずがむしゃらに、仕事に100%で取り組んでくれる。役者としても柔軟な対応ができる。彼のシーンはなるべくカットせず大切にした。とても才能のある人で、要注目の役者だと思う。
監督:マーゴットはみんなが持っているイメージ通りの人。リンゴとオレンジを食べるシーンを撮った時、本当にクレイジーだと思った。みんなが彼女のことをすごいと言うけど、本当にすごい! あんなちょっとしたシーンなのにそう思った。ユージン役の読み合わせにも長時間付き合っていた。スターはそんなこと絶対しないから、この役を本当に大切にしていると感じたよ。演技をするというより、キャラクターがそこに生きていると思わせる。仕事に対する姿勢も素晴らしく、周りのスタッフやキャストもがんばらなきゃと思わせるんだ。
監督:プロデューサーとしては、作品はもちろん、誰と一緒に作るのか、「人」を大切にしている。作品に対する姿勢は彼女の脚本を見れば一目瞭然。プロデューサーとして、役者として、いろんな色でチェックを入れていたよ。タフな撮影でもマーゴットのお陰でがんばれた。プロデューサーとしてもすごい資質を持っている。
監督:でき上がった作品はもちろん、映画が完成するまでの道のりも大切で、音楽もその一つなんだ。友人のパトリック・ヒギンズと組んで、今回も楽曲作りから取り組んだ。パトリックは友人であり、世界一好きなミュージシャン。脚本を書いているとそのシーンの音楽が自然と頭に浮かぶんだけど、そこから二人で楽曲を作り始めて、できた楽曲を解体するのがパトリックのスタイル。その後、色彩・メロディ・愛を表現したいなどイメージを伝えて、スタジオに入ってスコアを作る。映画作りで一番好きな作業だよ。
映画にとって音楽は重要だと思われているけど、もっと重要視されてもいいと思っている。映画はピースが緻密に合わさったものだと考えていて、その間のトーンを作るのに重要なのが音楽。作品のエモーショナルなアイデンティティであり、作品を裸にした時の姿。楽曲はキャストの参考のために、事前に聞けるようにしている。フィーリングが伝わるツールだと思うけど、もし聞いてもらえなくても構わないかな。
監督:ジェフ・ブリッジスは本当に大好き。ほかには『The United States vs. Billie Holiday』でビリー・ホリディを演じたアンドラ・デイ。ロジャー・ディーキンス。言葉にすると実現しなくなりそうなので、言いたくないけど。今、一緒にやっているスタッフはすごく信頼しているよ。
監督:「何かをどうしてもやりたい」という気持ちを持っているかどうかだと思う。他のなによりも「映画を作りたい」と思うのであれば、それを目指せばいいと思うし、それは映画作り以外でも同じ。何かをするには時間と気持ちが必要だけど、どんな夢であっても、まず自分で動くこと。それを形にするための時間は誰にでもある。加えて、なにかチャンスが来た時にそれをすぐにつかむことができるように、いろんな知識を身につけておくこと、学んでおくこと、また自分自身でモチベーションを作っておくことも大事だと思う。
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