1980年12月3日、秋田県出身。グラビアモデルとして芸能活動を始め、『私の奴隷になりなさい』(12年)で女優デビュー。主な出演作に、ドラマ『半沢直樹』、『ホリデイラブ』、映画『食べる女』(18年)、『星めぐりの町』(18年)など。女優業のほかに、バラエティ、情報番組等への出演、ラジオMCや雑誌などでの執筆活動も行う。
“待つ”ことの尊さが描かれている映画。皆さんの心のワクチンになれば
渋谷駅でお馴染みの、忠犬ハチ公の物語。犬と人との絆が国境を超え、日本とロシアをつなぐ感動作『ハチとパルマの物語』が5月28日より公開を迎える。
旧ソ連時代、モスクワの空港で一匹のジャーマンシェパードが滑走路を駆けている。パルマは飼い主と共にプラハに行くはずだったが、書類不備で搭乗を拒否され、それ以来ずっと飼い主の帰りを待ち続けていた。そんなパルマと出会ったのは9歳の少年コーリャ。母親を亡くし、パイロットである父に引き取られたが、良い思い出がない父との生活に心を閉ざしていた。パルマに自分の姿を投影したコーリャは、飼い主のもとへ戻してあげたいとある行動を起こす。
日本とロシアの共同製作である本作は監督をアレクサンドル・ドモガロフJr.が務め、日本からは渡辺裕之、藤田朋子、壇蜜、阿部純子らが出演し、ロシアと日本の両地で撮影が行われた。本作で大館市観光交流施設「秋田犬の里(あきたいぬのさと)」の館長を演じた、壇蜜にインタビューを敢行した。
壇:今はすごく難しい時代……何かとやきもきしがちですが、この映画には“待つ”ことの尊さが描かれていると感じました。こういう映画は久しぶりですよね。どんな状況であれ、誰かのために何かができる。それは人間同士はもちろん、人間と犬の間でも起こりえます。そういう幸せを、人生でどれだけ味わえるか。自分の身にも起こったとしたら、どう感じるんだろうと想像もしました。
壇:国際色豊かな現場ですし、和気あいあいというよりは、緊張感がありました。ワンちゃんもいたから、あまり退屈させてはいけないし、それでも人はいっぱいいるから……。撮影はうまく進められてはいたと思うんですけど、それぞれに緊張はあったと思いますね。実際、ワンちゃんは落ち着きがない瞬間もあったと思いますが、トレーナーさんも一緒だし、現場全体が気長にリラックスして待ちましょう、という空気でした。
壇:スムーズに撮影を進めるためには、たとえワンちゃんが暴れても、静かに待つことが大切だと知りました。「どうしたの? よしよし」って接してしまうと、甘えちゃうんですよ。それは人間も同じですが(笑)。ワンちゃんのことを静かに待てば「僕もしっかりしなくちゃ」って思うみたいです。それは私自身にとっても、新鮮な発見でしたね。
壇:映画の撮影という意味では、大まかな流れは変わりないと思いましたが、ドモガロフJr.監督が“表情の機微”をとても意識していたのが、私としては印象に残っています。時には動きのあるシーンでも、大きくアングルを変えて、表情に寄っていたことも。特に子役さんの表情をとても大事にしていましたね。
壇:私が出演したシーンは、わりと豊かな感情を持っている登場人物が多かったんですね。ですから、私自身は館長という立場で周囲を俯瞰しながら、あまり出しゃばらず、体温が低いほうがいいのかなと。そういった部分を意識していました。
壇:とてもうれしいですよね! 旧ソ連時代の実話を映画化しているので、当時を振り返り、懐かしがるお客様もいるかもしれないですし、若い世代にとっては「自分たちが知らない時代に、こんなことがあったんだ」と発見もあるかもしれません。日本ではハチの物語もありますし、もしかすると様々な国で同じような温かな物語があるのかも…と想像も膨らみますね。飼い主を待つ気持ちは、きっと世界共通でしょうから。
壇:厳しい自然環境に合わせながら、独特な強さを持って育ったというイメージですね。体も大きくなりますし、雪にも強いので、そり犬として人々の生活を助けてきたという歴史もあります。ですから、ペットというよりは仲間、同胞といえるかもしれませんね。秋田県民にとっては、とても特別な存在です。
壇:コロナ禍の影響もあり、気持ち的に疲れを感じている方もいらっしゃると思います。この映画に触れていただければ、きっと温かな涙とともに、心も少し軽くなると思います。飼い主を待つ犬と、その姿を見て周りの人間がいろんな気持ちに動かされ、行動する…。そんな感動的な物語をぜひ見届けてほしいと思っています。まだまだ先が見通せない時代ですが、『ハチとパルマの物語』が皆さんの心のワクチンになればと思っています。
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