1998年10月19日、アメリカ・ニューヨーク州バッファロー生まれ。バッファロー芸能アカデミー高校で音楽を専攻、その後バッファロー州立大学で演技クラスを受講した。エリザ・ヒットマン監督作品の編集を長年担当するスコット・カニンガムが彼女を発見し、本作で映画デビューを飾る。本作の演技により、数々の俳優賞を獲得。待機作として『Rounding』がある。シンガーソングライターとしても活躍し、「Starjuice」というバンドのフロントマンでもある。労働者階級の町、人間関係、不安、ティーンエイジャーの怒りを表現する楽曲をアコースティック・ギターにのせて歌っている。
『17歳の瞳に映る世界』シドニー・フラニガン×タリア・ライダー インタビュー
従姉妹と2人きりで訪れたNY、孤独と痛みを抱えた少女たちに見えてくる世界
リアルで力強いシナリオ、誰にでも起こりそうな物語
新鋭エリザ・ヒットマン監督が見出した新たな才能を世界が絶賛、『17歳の瞳に映る世界』が7月16日より公開される。
17歳のオータムの友だちは、従姉妹で同じ学校に通うスカイラーだけ。ある日、オータムに予期せぬ妊娠が発覚。親に内緒で中絶手術を受けるために、スカイラーと共にニューヨークへ向かうことに。ふたりはわずかなお金を握りしめ、長距離バスに乗ってNYブルックリンのヘルスセンターを目指すのだが……。
少女ふたりの数日間を描いたロードムービーというミニマムな作りながら、思春期の感情と、ふたりに降りかかる出来事を通して普遍的な問題をあぶり出した本作は、ベルリン国際映画祭で銀熊賞、サンダンス映画祭でネオリアリズム賞に輝くなど世界の映画賞を席巻。本作が映画デビューながら全米の女優賞を総なめにしたオータム役のシドニー・フラニガンと、スティーブン・スピルバーグ監督作『ウェスト・サイド・ストーリー』の公開も控えているスカイラー役のタリア・ライダー、ふたりに本作での特別な経験を振り返ってもらった。
・17歳で妊娠した少女が手術前に…「避妊具を拒否された?」「脅された?」普遍的問題あぶり出す質問
シドニー:14歳の時、エリザ(・ヒットマン監督)のパートナー(本作の編集を手掛けたスコット・カミングス)が撮影していた『Buffalo Juggalos』という作品でエリザに出会いました。その後、エリザとはフェイスブック上で友だちになり、私が部屋で音楽を演奏している動画を見たようで、私が20歳の時、本作のオーディションに来ないか、とメールが送られてきました。最初は懐疑的で、やりたいかどうかわからなかった。でもせっかくだから、このチャンスで自分に何ができるか確かめようと思ったんです。だからあまり大きな期待や希望は持ってなくて、でも終わってみて、本当にとっても素敵な経験ができたと感じました。
シドニー:私にとって、とても重要な物語だと思いました。リアルで、誰にでも起こりそうな物語。力強いシナリオで、なにか政治的なメッセージを伝えるというより、登場人物と、その個人的な経験に焦点が置かれています。オータムは頑固で、なんでも自分ひとりで解決しようとします。スカイラーはオータムが抱えている問題を知ろうとし、いとこの力になろうとしますが、オータムは少しそれに抵抗する。秘密を保とうとするのです。しかし、彼女は決心します。やらなければならないことをやろうと。
シドニー:最初のうち、私は気が弱くなっていて、心細くさえ感じていました。でも同時に、エリザやエレーヌ(・ルヴァール、撮影監督)らみんなに助けられているとも感じました。毎日一緒に仕事をして、お互いを知るようになるにつれ、絆が深くなっていくのです。そして、ある時、これがどんなに心細いことか、心から理解できるようになりました。これこそがオータムが経験することなんだって。全米家族計画連盟を内側から見る機会を得て、どのように物事が運ばれていくのか、どれだけ多くの援助がここで得られるのかを知ることは、とても興味深い経験でした。
タリア:スカイラーは賢い女の子だと思いました。世界には不公平があること、男の子と女の子の違いも分かっていて、あの年で、自分に若い女子としての魅力があることも気づいています。だからああいう行動ができるんですね。
シドニー:タリアと初めて会った時に、私たちはふたりともバッファロー出身だと知ったんです。同じ町の出身だなんて興味深いし、それだけですでにつながりを感じてしまいました。あと、わずかな期間だったけど、私たちが撮影準備をしているときに、エリザは私たちに宿題を出しました。この映画で描かれる旅とセリフとプライベートに関する個人的な、性格を表す質問です。タリアと私はこのノートに自分たちのことを書いて、翌日に交換し合い、お互いの答えを共有しました。それを共有することで、私は壁がなくなったように感じ、撮影時間以外でも本当に仲の良い友人になれました。私たちはお互いの絆を感じるようになり、セットで過ごすにつれ、彼女に近づけたと思いました。彼女はとても素敵な人で本当に感謝しています、大好きです。
タリア:私も映画のシチュエーションと同じように現実でも感じていました。もし、シドニーに映画と同じようなことが降りかかれば、私はオータムを守るためにスカイラーがしたように、シドニーにも同じ方法をとったはずです。
危機を乗り越え、17歳らしい素朴さを見せる唯一のひとときに涙が溢れた
タリア:『愛のように感じた』『ブルックリンの片隅で』を見ればわかるように、エリザはすごい監督。この『17歳の瞳に映る世界』が三部作に加わることも本当に素晴らしいと思います。彼女はとてもオープンな人で、まさに「俳優のための監督」。彼女が仕事で行うすべてのことは、私たちを助けてくれるし、セットにいる間も快適で安全でいさせてくれるんです。
タリア:私たちは比較的厳密に脚本に従ったけど、あるシーンでは自由もありました。場面によっては、決まっていたセリフを、より自分らしくするために変更したりもしました。
タリア:本当に目まぐるしい経験でした。映画祭に参加する前に、周りのみんなにとんでもない経験になるよって言われたけど、その意味をまったく理解できてなかった。ノンストップの数日間でした。そのクレイジーな経験をしているなかで、『17歳の瞳に映る世界』の観客のみなさんがこの映画を好意的に受け入れてくれているのを目の当たりにしたことは、とても信じられなかった。真剣に取り組んだこの作品について、観客の方々と顔を合わせて会話をできたこともとても有意義な経験でした。あと、私が憧れてる人、尊敬しているアーティストたちが私の作品を見てそれについて話ができた。この経験は本当にエキサイティングでした。
タリア:めちゃくちゃ緊張しました! 生の舞台で観客に対して演技をするのとはまったく違う経験。自分自身を観ていることも、一緒に別の人たちが自分を観ているのを見るのも、なんだか気が遠くなってしまって。私が予想もしないような箇所で、ユーモアを見つけた観客が笑っていたりして、本当に興味深かった。
タリア:エリザは私とシドニーに、サンダンスの前に完成した本編を見せてくれたのですが、私は最後の食事のシーンでとても感情的になってしまって。彼女たちが危機を乗り越え17歳らしい素朴さを見せる、純粋な唯一のひとときに涙が溢れました。サンダンスでもベルリン映画祭でも、瞳を濡らした人々が劇場から出てくる姿を見ました。どちらの映画祭でも、何人もの女性が私のところへ来て、オータムとスカイラーの物語と映画への感謝を伝えてくれました。観客のみなさんが、この物語にある種の聖域を見つけ出したのだと、とても心が温まりました。
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