いまなお世界中に熱狂的な支持者を生み出している巨匠タル・ベーラ監督の初期に手がけた日本初公開となる3作品が、1月29日よりシアター・イメージフォーラムほかにて一挙上映される。今回、22歳で手がけたデビュー作『ファミリー・ネスト』(77年)の本編映像が公開された。
・モノクローム。独特のヌメっとしたドリーワーク…巨匠タル・ベーラの初期作品
初期作品3本が日本初公開! 「製作当時は、ただ怒りに満ちていました」
公開となるのは、『ダムネーション/天罰』(88年)、『ファミリー・ネスト』、『アウトサイダー』(82年)の3作。1994年に手がけた全150カット、上映時間7時間18分の伝説的傑作『サタンタンゴ』に至るまでの軌跡がたどれる、伝説前夜のラインナップとなっている。
今回解禁となった本編映像は、タル・ベーラ監督のデビュー作『ファミリー・ネスト』。“ジョン・カサヴェテスやケン・ローチの作品を想起させるドキュメンタリー・スタイルで撮られた『ファミリー・ネスト』は、映像をとらえるタル・ベーラの天性の才能を示している”(NY Film Society of Lincoln Center)と言われるように、22歳で手がけたデビュー作とは思えない、鮮烈な作品となっている。
7時間18分の傑作『サタンタンゴ』や56歳の引退作『ニーチェの馬』(12年)にみられる長回しを用いた“タル・ベーラスタイル”とは異なる、ドキュメンタリー・スタイルで描かれているが、リアルな人々を描きたかった、という思いがデビュー作から引退作まで一貫していることがわかる。
さらに、初期作品3本が日本で初めて劇場公開されるにあたり、タル・ベーラ監督のオンラインインタビューが行われた。映画作りを始めたきっかけについて「船舶工場で働いていて、いつも惨めな労働者階級の人たちと身近に接していたことです。私は彼らの日常や、よりよい生活を求めて努力する姿を描きたかったのです」と話したタル・ベーラ監督。
『ファミリー・ネスト』の製作当時について聞かれると、「製作当時は、ただ怒りに満ちていました。社会全体に対して、人々の置かれている最悪な状況に対して憎んでいました。映画づくりについてはほとんど何も知りませんでしたが、映画が大好きだったから、お金も何もなかったけど、当時の人々が置かれているリアルな生活を見せられるものを、ただシンプルに作りたかった」と答えた。
タル・ベーラ監督は、最初は“社会的な怒り”が原動力になり、映画を撮り始めたという。しかし、映画を撮り続けるうちに、問題はもっと深いところにあると気付き、映画のスタイルが変化していったことを話してくれた。
最後に、これから作品を見る人たちに対し「目を見開いて、心を開いて、この作品を見ていただきたい。そしてできれば、楽しんでください」とメッセージを送ったタル・ベーラ監督。タル・ベーラがいかにして唯一無二の映画作家となったのか。この機会に、ぜひ劇場で確かめてほしい。
『ダムネーション/天罰』、『ファミリー・ネスト』、『アウトサイダー』は、1月29日よりシアター・イメージフォーラムほかにて一挙上映される。
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