30年前にアメリカに養子に出された韓国の青年、書類不備で国外追放? 「人身売買になりかねない」国際養子縁組の闇とは

#アリシア・ヴィキャンデル#ジャスティン・チョン#ブルー・バイユー#国際養子縁組#早川眞一郎#社会問題

(C)2021 Focus Features, LLC.

2021年カンヌ国際映画祭に出品され、8分間におよぶスタンディングオベーションで喝采を浴びた、愛と感動の物語『ブルー・バイユー』が、211日より全国公開される。今回、30秒予告編が公開された。

・2・11公開『ブルー・バイユー』ジャスティン・チョン監督インタビュー

「国際養子縁組」の問題点に焦点を当てたコラムも公開

本作品の監督・脚本・主演を務めるのは、映画『トワイライト』シリーズで俳優として知られ、監督としても数々の賞を受賞している韓国系アメリカ人、ジャスティン・チョン。共演は、2015年『リリーのすべて』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したアリシア・ヴィキャンデル。

韓国で生まれ、わずか3歳で遠くアメリカに養子に出された青年・アントニオが、自身は知る由もない30年以上前の書類不備で、国外追放命令を受け、2度と戻れない危機に瀕したらどうするか? アメリカの移民政策で生じた法律の“すき間”に落とされてしまった彼は、愛する家族との暮らしを守れるのか。不器用な生き方しかできない男、大きな愛で支えようとする女、義父を失う不安を抱える少女。家族を襲う不幸に揺れ動く3人を美しい映像と共に力強く描いた傑作が誕生した。

今回解禁された30秒予告編では、アメリカの司法制度に翻弄される家族の様子が映し出されている。引き離されそうになる家族3人の悲痛な叫びに、心が揺さぶられる予告編だ。

また、早川眞一郎専修大学法科大学院 教授による国際養子縁組についてのコラムも一部公開された。

国境を超えて行われる養子縁組である“国際養子縁組”は、「先進諸国では養子をとりたいと願う養親希望者の数に比べて養子になる子どもが少なすぎ、発展途上国では養親を必要とする子どもが多いのにもかかわらず、自国内では十分な数の養親希望者を見つけることができないという事情」で行われてきた背景があったという。

早川はこの制度の問題についてこう続ける。

「国際養子として新しい国にやって来た子どものなかには、先進国の豊かな社会の中で養親の愛情に恵まれて幸福に育った子も多かっただろうが、アントニオのように悲惨な人生を送ることになった子も少なからずいたと考えられる。もともと国際養子縁組は、ひとつ間違えば、子どもの人身売買になりかねない危険な制度であった。1980年代には国際社会において、このような国際養子縁組の危険性が強く自覚され、これに対処する取り組みがなされ、その結果、1993年にハーグ国際私法会議という組織によって『国際養子縁組に関する条約』が作成された。この条約は、国際養子として他国に養子として送られる子どもたちが、危険に巻き込まれることなく、安心して安全に暮らすことができるように、様々なルールを定めている。この条約の加盟国は、厳格な手続きを経て国際養子縁組を実施しなければならないことになっている」

「もし仮に、アントニオが韓国からアメリカに国際養子として渡ったときにこの条約が存在していて、韓国とアメリカの両国共にその加盟国であったならば、アントニオの悲劇はおそらく回避されていたのではないか……」と早川。鑑賞後は当時の“国際養子縁組”の問題について考えてみるのも良いかもしれない。

『ブルー・バイユー』は、211日より全国公開される。

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