ソ連解体から30年、不穏な世界情勢と地続きにある重いメッセージ
第77回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、第93回米アカデミー賞国際長編映画賞・ロシア代表に選定された『親愛なる同志たちへ』が、4月8日より劇場公開される。今回、ソ連軍がストライキ参加者に対して銃撃する劇中映像が解禁された。
・今こそ見るべき! ウクライナ国境近くで起きた虐殺事件を描いた衝撃作
1962年6月1日、ソ連南部ノボチェルカッスクの機関車工場でストライキが勃発した。「雪どけ」とも称されたフルシチョフが目指した豊かな共産主義統治にも陰りが見え始め、困窮にあえぐ労働者たちが物価の高騰や給与カットに抗議の意思を示したのだ。社会主義国家で大規模なストライキが起こったことに危機感を覚えた政権は、スト鎮静化と情報遮断のために最高幹部を現地に派遣、翌日には約5000人の市民への銃撃を開始した。
熱心な共産党員で市政委員も務めるリューダは、18歳の愛娘スヴェッカの身を案じ、凄まじい群衆パニックが巻き起こった広場を駆けずり回る。三つ編みに青いリボン…スヴェッカはどこにいるのか、すでに銃撃の犠牲者となって“処分”されてしまったのか。
長らく忠誠を誓ってきた共産党への疑念に揺れるリューダが、必死の捜索の果てにたどり着いた真実とは? スターリン後の社会に希望を見出し、その世界に疑いを持たなかった一人の女性が知る残酷な事実。真実の瓦解が起きたとき、人はどう生きるのか、あるいは生き抜くのか、84歳の巨匠アンドレイ・コンチャロフスキーの答えがここにある。
『暴走機関車』(85年)や『映写技師は見ていた』(91年)、タルコフスキー作品の共同脚本などで知られるコンチャロフスキー監督は、事件を再現するため徹底して細部にまでこだわり、サスペンスとアクション、そして心理表現を巧みに織り交ぜ、リューダがたどる激動の3日間をスリリングに描出した。
事件から60年が経つ現在も、ロシアによるウクライナ侵攻、香港やミャンマー、ウイグル地区など事件は絶えない。この不穏な世界情勢と地続きにあり、決して遠い過去の話と言えない重いメッセージをはらんだ本作。ソ連解体から30年、まさに「今」見るべき作品が誕生した。
『親愛なる同志たちへ』は4月8日より劇場公開される。
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