2019年に閉場を迎えた浦安魚市場。カメラが捉えた“まち”のアイデンティティが危機に瀕するとき

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映像作家・歌川達人が魚屋たちの日常を追ったドキュメンタリー映画

映像作家・歌川達人が人情色濃い“まち”の魚屋たちの日常を追ったドキュメンタリー映画『浦安魚市場のこと』。本作より予告編を紹介する。

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魚屋の活きのよいかけ声。貝を剥き続ける年老いた女性。年末のお客たちとお店の賑わい。古くから漁師町だった浦安には魚市場があった。工場汚染水の影響で漁業権を放棄し埋立地となった浦安にとって、魚市場は漁村だった町のシンボルでもある。

そんな魚市場には、昼は町の魚屋、夜はロックバンド「漁港」のボーカルとして活動する森田釣竿がいた。時代の流れと共に変わっていく魚の流通と消費の形。脈々とつながってきた暮らしを謳歌する浦安の人々。しかし、その瞬間は、緩やかに、そして突然訪れる…。

監督は映像作家の歌川達人。これまで主にカンボジアで短編中編のドキュメンタリーを制作してきたが、本作が初の長編となる。撮影期間中、歌川は浦安魚市場近くへ移り住み、緻密な撮影を重ねた。本プロジェクトでは、映画製作に限らず、写真集作成や魚市場内での映像インスタレーション展示など、多角的なアウトプットを行ってきた。カメラを持った1人のアーティストとして、滅びゆく場や営みに対し何ができるのかを見つめた軌跡である。

歌川は「日本の浦安という、ローカルな場で記録された時が、映画として、遠くへ旅立ち、誰かに届く。そこで、顔も知らない誰かと共鳴する、あるいは議論される。コロナ禍で、場のあり様や働くことを再考せざるを得ない時期に、そういった営みがどこかで生まれることを願う」と映画に込めた想いを語っている。

予告編は、鮭を鮮やかにさばく魚屋の手つきとともに「魚屋さんは魚を売っているだけじゃない。私たちは物だけを買っているわけじゃない」という映画監督・纐纈あやの言葉が映し出され、2019年に閉場を迎えた浦安魚市場の最後の日の活気あふれる様子と名残惜しそうな人々の姿が目に入ってくる。

後半では、映画にも登場する魚屋店主でロックバンド漁港のボーカルを務める森田釣竿の歌声が流れる中、魚市場を巡るありのままの記憶と記録が映し出されていく。しみじみとしながらも人々の逞しさや力強さを感じることのできる予告編となっている。

『浦安魚市場のこと』は12月17日より全国順次公開。

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