三浦友和が語るケイコという人物「特別な人でもないし、サクセスストーリーでもない」
ゴングの音もセコンドの指示も聞こえないなか、じっと“目を澄ませて”闘うケイコ
岸井ゆきの主演、三宅唱監督の最新作『ケイコ 目を澄ませて』。公開中の本作より、耳の聞こえないボクサー・ケイコを演じた岸井と、ケイコが通うジムの会長を演じた三浦友和のインタビューと本編を織り交ぜた特別映像、ケイコのと会長の絆を感じさせる場面写真を紹介する。
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本作は、聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子をモデルに、彼女の生き方に着想を得て、『きみの鳥はうたえる』(18年)の三宅唱監督が新たに生み出した物語だ。
ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえないなか、じっと“目を澄ませて”闘うケイコの姿を、秀でた才能を持つ主人公としてではなく、不安や迷い、喜びや情熱など様々な感情の間で揺れ動きながらも一歩ずつ確実に歩みを進める等身大の一人の女性として描き、彼女の心のざわめきを16mmフィルムに焼き付けた。
主人公・ケイコを演じた岸井ゆきのは、厳しいトレーニングを重ねて撮影に臨み、新境地を切り開く。そして、ケイコの実直さを誰よりも認め見守るジムの会長に、日本映画界を牽引する三浦友和。その他、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子など実力派キャストが脇を固める。
紹介するのは、耳の聞こえないボクサー・ケイコを演じた岸井と、ケイコが通うジムの会長を演じた三浦のインタビューと本編を織り交ぜた特別映像。映像は目元に大きな絆創膏を貼ったケイコの横顔から始まる。痛々しくもあるがどこか美しい彼女のその傷は、勝利を収めた試合で負った勲章だ。
そんなケイコに「いつまでボクシングを続けるの? もう十分じゃないの?」とたどたどしい手話で伝える母親の表情には、娘を心配する不安な気持ちが滲み出ている。この母親からの言葉を皮切りに、ケイコは自分が夢中になれることを周りに反対されながら、これからも続けて良いのか今後の自分の人生について思いを巡らせるようになる。
岸井はそんなケイコとの共通点について、「ケイコがボクシングに向ける情熱や想い、執着は、私が映画に賭ける想いだったり執着に似ていると思いました」と明かす。また、性格の部分では口下手なところに共感するそうで、「ケイコは手話言語を使ったとしてもお喋りでは無いんです。でも思うことは沢山あるじゃないですか。けれど喋ることで消化するというような性格ではないので、想いだけが募っていく。それを書き留めることを私はよくします。ケイコも書き留めるという作業をするんです」と語る。
会長を演じた三浦は、「ケイコは特別な人でもないし、これはサクセスストーリーでもない。ボクサーは選手寿命も短い。でも、そこにものすごく賭けている人、そこから何かを得ようとしている人。何かを見つけ出して生きる糧にしたいと思っている人」と語る。ケイコに寄り添う会長を演じた三浦ならではのケイコ論であるが、本編ではケイコと会長の2ショットが何とも微笑ましい。
本作は12月第3週公開映画の初日満足度ランキングで第1位を獲得。映画レビューサイトcocoでもTwitter上の映画ファンの注目作品ランキング第1位を獲得し、同日公開の大作を抑える結果となった。SNSにも熱のある感想が溢れ、芸能界にも鑑賞者が広がっている。オードリーの若林正恭は「エンドロールでこんな映画を何年もずっとずっと観たかったんだと心が震えていました。一生忘れない映画の一本になりました」、俳優の西田尚美は「岸井さん、素晴らしかった…。映画館で観るべき映画だと思った。すごく集中した。目も耳も研ぎ澄まして、じーっと観ていた。聞こえる音が鮮明に残る。表情も」とコメント。
また、ミュージシャンの小沢健二は「その感覚に入りこみ、僕の毎日と地続きの、誰かの毎日を感じた99分間。濃密。すばらしいです」、ドラマ『エルピス -希望、あるいは災い-』等のプロデューサー・佐野亜裕美も「連続ドラマでも小説でも漫画でもできない、映画でしかできないことというのがなんなのか、今まではわかっているようでわかっていなかったのかもしれない、と思わされる素晴らしい映画だった」と絶賛している。
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